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【 2021年4月9日 】
西川美和監督と言えば、以前『ゆれる』と『ディア・ドクター』を観た。いずれも悪くはなく、いい映画だったが、
今回のものほど衝撃は受けなかった。(注目の女性監督と言えば、もう一人河瀨直美がいるが、個人的には西川監督の方が私の好みに合っている)
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【 西川美和監督 】
原作は佐木隆三の「身分帳」という小説だそうだ。もちろん読んだことはない。
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【 出所 】
13年の刑期をおえて三上が出所する場面。刑務所で仕込まれた規則正しい姿勢がすっかり身に浸み込んで、社会に出てもそもクセは抜けない。
しかし、本人が更生しようと思っても、一定の職業訓練を受けても、それを生かした仕事を得て社会で自立していくのは並大抵のことではない。社会の偏見というものが大きく立ちはだかる。
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住む家を確保するのも大変だ。一応、身元引受人となる弁護士が付いた。身元引受人とて万能ではない。限界も出てくる。
そんな三上の経歴を追って、ドキュメンタリー調のテレビドラマを作ろうと若い二人がコンビを組んで、三上の経歴を追う。
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結局生活保護に頼らざるを得ないが、福士事務所のケースワーカーは「受給者を如何にはねるか」の指導を上から徹底されているから、担当者の対応もそっけない。行き場がなくなり再び犯罪を犯し刑務所に逆戻りするケースが半分ほどあるという。さもなくば、昔のつてをたよって裏の世界に逆戻りするかである。
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庄司夫妻も、丁寧な演技でいい味を出していた。(梶芽衣子なんて、はじめ誰かと思ってしまったが)
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【 焼き肉屋で 】
三上の性格は、「曲がったことは許す訳にはいかない」という実直さである。それと抑えられない感情が結びついてトラブルに巻き込まれる。この世、自分に正直に生きるといことがいかに難しいか思い知らされる。
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【 決闘 】
結局何度か同じようなことがあって、昔の知り合いのつてをたどる。義理と人情の世界である。一般世間と違って、自分を温かく迎えてくれる。そんな事が今の世界にどうして成り立つんだろうとみていると、監督はしっかりと「落としどころ」を描いてくれる。組長とその奥さん(キムラ緑子)の対比が絶妙である。
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その後、三上はあれこれあって、ようやくまともな職に就くことができる。介護の仕事である。現代のきびしい就職事情と介護現場の厳しさを垣間見る。
しかし、幸せは長くは続かなかった。
最後の終わり方も、考え抜かれた印象的なシーンだ。
〇 〇 〇
あえて注文をつければ、福祉事務所のケースワーカーの井口(北村有起哉)にしても、スーパーの店長の松本(六角精児)もそうだが、三上から見れば、”自分の社会復帰を妨害する人”、”無理解者”がある時突然、”良き人”、”援助者”に変容しまうところが、ちょっとしっくりこなかった。(人の偏見や思い込みは、三木の性格が最後まで簡単には変わらなかったように、そう簡単に変わらないと思うのだが、2時間ドラマでは仕方ないかとも思う)
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やはり圧倒的なのは役所広司の演技だ。やはりこの役回りは彼しかできない。(彼が、今いる俳優で一番ふさわしい!)
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スクリーンに映し出される映像で、働きあえぐ人々の生活の上を大きく覆う大空の広さと、それとは対照的な夜の街・ビルの灯りが映し出される夜景の映像が印象的だ。
「すばらしき世界」ーなんと意味深長なタイトルなんだろう。
今、ルイ・アームストロングの「What A Wonderful World」(「この素晴らしき世界」)を聴きながら、余韻に浸り、2日間にわたってこれを書いている。
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映画『すばらしき世界』-公式サイト(監督と六角精児との対談に注目です!)