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『財政危機と現代資本主義』-日本経済の行く末を考える

2011-07-29 23:26:53 | 雑感

     【2011年7月10日】

 例年より10日ほど早い梅雨明け宣言が一昨日あって、この日も朝からカンカン照りである。その日曜日に、こともあろうに冷房のあまり効かない狭い部屋で経済学の講義を聴くことになるとは。10日ほど前に申し込んだときには、「まだ梅雨は明けないと」とにらんでの判断だったが、こんな天気ならプールサイドで本を読んでいたほうがどんなに良かったことか悔やまれる。
 おまけに、今回の講師のセンセイ、話がほとんど上手でなく、やたらに間投詞と意味不明の発語が多く、その間にちりばめられた言葉をつなぎ合わせても新鮮な内容はあまりなく、前半は辟易していたが、やはり大学教授をするだけのことはあって、後半それなりに、得るところがあった。

 講義のタイトルは『財政危機と現代資本主義』である。ここで言う「財政危機」とは政府の財政危機である。《歳入》(主には税金)より《歳出》(政府の支出)が多いため赤字が積み重なっているということである。足りない部分はどうするかといえば、赤字国債(国がお金を持っている人(機関)から金を借りた証の債券)を発行して埋め合わせをすることになる。その金額が積もり積もって累積の発行残高がGDP(国民総生産)の3倍よりも多くなっている。
 借金の大きさを、GDPの大きさと比較するのがいいか、年間予算の歳入額(その中の税金による収入)との比較がいいか、良くわからないが、いずれにしてもとてつもなく大きい金額である。家計と単純比較は出来ないが、家計ならとっくの昔に破産しているし、国民一人当たり(赤ちゃんや老人を含めて)の負担額が500万円とも、計算によっては1千万円になるともいわれ、そういうことになってくると、もう異常というしかない。


  註:2010年の日本の人口はおよそ1億2800万人で、財政赤字の数字は下記の『リアルタイム財政赤字カウンター』によると、約1140兆円だから
  1140兆 ÷ 1億2800万人 = 約890万円 という計算になる。これの分母を世帯数や就労人口に置き換えると、更に負担は大きな金額になる。


 リアルタイム財政赤字カウンター


 この財政赤字をどう考えたらいいのだろうか。

 太古の昔や、生産力の極端に低い国だったらいざ知らず、高い生産技術を持ち、しかも勤勉な国民性を有するこの日本で、どうしてこんなことが起こるのか。

 ポイントは、この財政危機が、《日本の国全体》の財政赤字でなく《政府》の財政赤字ということである。

 EU加盟のギリシャで、いま問題になっている財政危機と根本的に違う点はここにある。

 今回の講義で、収穫といえばこの点が明確になったということである。講義で配布された下の資料を見るとよくわかる。

   

         資料1
        


           
 資料1にはギリシャの数字が載っていないが、ギリシャの場合、[海外]分は60~70%になるという。また、日本の場合の[金融機関]は20%が『カンポ』等の郵便貯金で、残りの40%ほどが銀行等の一般の金融機関だそうである。[政府等]とあるのは大部分が年金等の資金だそうである

 資料2はそうした国民の将来に備えた大切な年金積立金や郵便貯金、あるいは銀行に預けた[蓄え]と政府の借金の金額を比で表したものだが、4:1が3:1になり、2003年には2:1までになってしまった。国民の大切な財産の半分が借金のカタに取られてしまっていることを意味する。


        資料2
        





 このことから分かるように、ギリシャの場合、赤字を補填しているのが対外債務であるのに対し、日本の場合、それが少く、国内の金融機関やそれを介して一般の企業が国債の大半を買い、それを支えているのだ。

 そして、郵便貯金や年金などの将来の国民のための積立金が、借金にあてがわれているのだ。


 その一方で、逆に多くの対外債権を保有している。その多くがアメリカ国債で、大量のドルを抱えている。

([資料1]でのアメリカの欄の[海外]分は日本と中国が大量のドルを買い支えている。)

 政府が財政赤字でも、国内には金のあるところにはあるのである。

 その最大の資金源はどこかといえば、大企業であり、一部の大資産家である。大企業はこの不況下でも空前の黒字を計上している。それらを従業員に還元して、国内消費を活性化させればいいのだが、けっしてそのようなことはしない。それどころか、従業員の非正規化をすすめ、さらには労働力の安い海外に生産拠点を移すことさえする。

 企業に待遇改善や賃金アップを求めると、『国際競争力』が弱くなる、世界との競争に勝ち残れなくなるだのという《理由》を持ち出し、これを拒否する。

 また、法人税についても、[資料3]のとおり、空前の利益をあげ、それを内部保留として溜め込んでいるのに、利益が上がっていないという理由で、税金逃れをし、その額は年々減っている。

 更に法人税率を下げるという話まであるのだから、いい加減にしろといいたい。

 それと、所得税も減っている。貧困層が増えて所得税を払えない人が増えた分、減少していると思いきや、そうではない。累進課税が大幅に緩和され、大金持ちの税金が大幅に《減税》されているのだ。その分の減少を『消費税』が補っていて、社会保障費などには当てられていない現実がある。

 消費税は、ご存じのように、所得1億円の人も、年収150万円の人も、同じ1万円の物を消費をしたら、5%という同じ金額の税金を払うという、逆進性の高い税金である。それを10%あるいはそれ以上にする話など、とんでもないことである。  


       資料3
       


 社員は会社のためにまじめに一生懸命働くが、会社は従業員に何をしてくれるのだろうか。

 企業は、ことあるたびに『国際競争力』を口にするが、『国際競争力』は何のために必要なのか。日本にあって、国民の利益のために企業があるなら意味をなすが、一部資本家のために会社を存続されだけの『国際競争力』なら、国民にとって何の意味もない。労働者を使い捨てにし、従業員を路頭に放り出すようなことをしておきながら、会社存続のため海外に移転してしまうような企業は、くそくらえだ。


 半分わかったような、またもっと知りたいことができたような、中途半端な気持ちでエアコンの効かない教室を出る。バス停に行く道はまだ太陽が照りつけ、更にうだるように暑い。

 通い付けのスポーツクラブに寄り、風呂だけ入り汗を流し、家に戻る。

 明日からまた仕事が待っている。










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