この映画・本、よかったす-旅行記も!

最近上映されて良かった映画、以前見て心に残った映画、感銘をうけた本の自分流感想を。たまには旅行・山行記や愚痴も。

「上意討ち-拝領妻始末」-BSで再び見る

2007-12-18 23:12:03 | 以前見た映画
2007年12月12日 NHKBS

 「上意」とは御上の意志、つまり絶対服従の命令である。「拝領」とは御上や目上の人からものをいただくことである。

 つまりこの映画は、御上から不本意ながら譲り受けた嫁を巡って、おのれの信条を貫くために御上にたてつくという内容のものである。
 こう言ってしまったら、味も素っ気もないが、今の自分の心境に通じるものがあって、真剣に共感しながら見いってしまった。

      ○       ○       ○

 主演の会津藩馬廻り役の藩士・笹原伊三郎には、言わずと知れた三船敏郎。その長男・与五郎には加藤剛。藩主松平正容の側室・お市の方には司葉子。こんな映画には欠かせない仲代達也も出演している。みんな若い。配役を見ているだけでわくわくする。

 伊三郎は、笹原家に婿養子として入った身で、勝気で身勝手な妻(大塚道子)の振る舞いのもと、30年もの長きにわたり堪え忍んで生活してきた。

 そんな折、城から主君の側室・お市の方を与五郎の嫁に拝領せよとの使いが来る。

 与五郎には自分の気に入った嫁をめとり、幸せな結婚生活を願い、決して自分と同じ惨めな生活、二の舞を演じさせまいと努力するが、親戚の圧力もあり、結局藩命に逆らうことが出来ず受け入れる。

 しかし、嫁を受け入れてみると予想とは反し、お市は、第二の世継ぎを生んだものとは思えない初々しさがあり、しかも気だてが良く舅にも従順に仕えた。主君はなぜこのような出来たお市を手放したか父子でいぶかしがったが、幸せな日が過ぎていった。

 突然、第一の世継ぎが急死したという知らせが入る。城はあわて、世継ぎの母となったお市の方を大奥に呼び戻す算段をする。
 与五郎との間に、子までもうけたお市を、自分らのかってな都合で、再び城に返せとは!
  
 伊三郎はお家断絶を覚悟で、親戚一同のしがらみ、圧力に抗して、「上意」にたてつく。


 あらすじは、こんなところであるが、あえて筋を明かしても、面白さというか、緊迫感はあせな、いい脚本だと思う。名作とはそんなものだ。共感する限り、何度見ても新鮮だ。

 はじめてこの映画を見たときは黒沢明だと思った。小林正樹監督である。こんないい監督がほかにもいたんだ。

 黒沢といえば、今「椿三十朗」が公開されている。世の中の不正・腐敗を暴き退治するという痛快時代劇だ。黒沢の作品の中では「生きる」や「七人の侍」・「天国と地獄」と並んで、今まで何回も見てきたお気に入りの作品だ。

 予告編を見る限り、脚本はそのままで、配役だけが置き換わったような出来に思った。見ないで言うのは無責任かも知れないが、「やっぱり本物を見ないと!」と思ってしまう。森田芳光監督や織田裕二にはわるいけど、やっぱり黒沢・三船でないと。
 
   ○      ○       ○

 見終わった後、なにか気持ちが安らんだ感じがした。


  「上意討ち-拝領妻始末」-参照サイト(Goo映画)


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2 コメント

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Unknown (wasure-yuki)
2008-02-26 23:38:36
この映画は見たことがないのですが・・・・

 武士道精神を貫けるなんて素晴らしいと思います。
自らの信念を貫いて闘えるあるじの存在があるのは幸せとも。
 例えば・・・・統治半ばにして不在になった当主をめぐり、お局様に仕切られて正義感ある志士達も次第に疲れ果て萎えていき、城下では様々な問題が沸き起こっても応急策としかする手立てもなく、人々の心はますますすさんでいく。お上は一体どんな対応をされるのか。そんなところに救世主は現れるのかと思います。

 過去の歴史をたどり、社会情勢に目を向けることはとても大切なことなのですね。
でも現実問題として、身近な部分で見え隠れしている人と人の争いの火種を鎮めていくには、一体どうしたらいいのかと思います。

今まで観た映画の中では「蝉しぐれ」が一番好きです。またいい映画を教えてください。

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コメント、ありがとう (y-inosan66)
2008-03-02 22:20:49
wasure-yukiさん、コメントありがとうございます。
 返答が遅くなりました。「上意討ち」は武士道をたたえる映画ではありません。その逆で、従来のお家中心の封建的主従関係の束縛から逃れるため、己の信念を貫く映画です。言ってみれば、近代の「自由恋愛」の先駆けです。
 かなり前の映画で「武士道残酷物語」というのがありました。現代の「企業戦士」-妻子、家庭もかえりみず、すべてを会社に捧げる、あるいは戦前の「特攻」-天皇のために命を捧げることもいとわぬ「忠節を尽くすことを本分」とする心-これらはすべて「武士道精神」に原点があることを物語で示したものでした。
 私は、自己の信念を貫くことは良しとしても、支配する側が意図的に形成した「武士道」はよしとしません。
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