「地面師 他人の土地を売り飛ばす詐欺集団(著:森功)」を読みました。
積水ハウスが地面師から約50億円もの金銭を騙し取られた事件は記憶に新しいところです。
「地面師」とは、不動産の所有者になりすまし、勝手に他人の不動産を売り飛ばし大儲けするという詐欺集団のことです。
この本は積水ハウス事件の他、東京都内で起きたいくつかの地面師事件について書かれれており、犯行の手口などとても興味深い内容でした。司法書士としては、やはり本人確認のところが一番気になるところでしょう。
この本を読む限りでは、取引に関わった司法書士の本人確認は杜撰なものではなく、むしろきちんとされていたように思いました。例えば積水ハウス事件の本人確認は、司法書士が干支の確認をした際に一致していなかったため不審に思ったものの、パスポートの旅券番号などが記載されているページを赤外線ペンライトで照射して調べたところ、添付されている写真と同じ顔が浮かび上がってきたことが確認できたので、パスポートは本物ではないかということになり、パスポートが本物ならば所有者を名乗る人物は本人ではないかということになり、取引を進めたようです。ここまでしたら、多少の不信感を抱きつつも誰もがそのまま取引を進めてしまう可能性は十分あり得るのではないかと思ってしまいました。ちなみに周辺では、他にも色々怪しいことが起きていたのですが。
積水ハウスの事件は最終的に法務局側で偽造が発覚し登記申請は却下されたのですが、一番最初に所有者から積水ハウスとの窓口になったという中間業者への所有権移転仮登記の際には、法務局側で書類の偽造に気が付かなかったのでしょうか。仮登記の際は権利証は不要で印鑑証明書が偽造されたと思ったのですが、この本を読むと、地面師集団は先ず本人になりすまし、役所で実印の改印を勝手にしてしまうのだそう。その手を使うとなると、法務局に提出された印鑑証明書は本物だったということになります。
ところで積水ハウス事件の被害にあった不動産は、本物の所有者の相続人が積水ハウスから不動産を取り戻し、正当な取引で他の業者に売却し、タワマンが建設される予定なんだとか。事件から既に6年の月日が経過したようですが、時が過ぎるのは本当に早いですね。
本の回し者ではありませんが、司法書士であれば一度は読んで損はないと思います。
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