BF＃３／感想５（ネタバレあり！）

５．『※夜、一人では読まない方がいいかもヴァージョン』
『※仕事中は読まない方がいいかもヴァージョン』　　しゅぱ！


『※夜、一人では読まない方がいいかもヴァージョン』は怪談集です。怖すぎのあまり、トイレに立つ回数がつい減るからご用心。という筆者は、じつはホラーはだめなんですぅ。本屋で図書館で何度もみかけては「ああ、読まなきゃ！」と思いながら、スティーヴン・キングは『小説作法』しか手にしなかったという読書歴もうなずけるってもんですね。ウンウン。

『※仕事中は読まない方がいいかもヴァージョン』のほうは、いってみれば文章で描く四コマ漫画！　タイトルを『※食事中は読まない方がいいかもヴァージョン』と改名したいって感じ。面白すぎのあまり、つい口から食いものが飛びだすからご用心。　

「しゅぱ！」さんの作品から、あふれて零れ落ちてくるユーモアってなんだろう？　と、本気で考えさせられた秀逸な作品です。まわりに存在するモノや人という他者。その他者と自分（の世界）に差異をみつけだし描くという点では、アイロニーと変わりがない。しかし作者が投げてくる笑いは、違和感を生む他者を眺め下ろして批判し排除するための手段じゃないんです。全然そうじゃない。

たとえば煙草を「吸ってもいいけど、吐かないでくださいねっ！」というMちゃんを作者の世界は排除せず、自分を取りかこむ世界の豊かな彩りとして取り込んでしまうのでした。その取り込みに必要なイニシエーションが、作者の笑い、ユーモアなんだな。きっとそうだ。この異和に満ちた世界を笑うんですが、笑うごとに世界と作者は和解して、作者の世界観が広がっていく。ここに偏狭なアイロニーとは違う大きな才能が露呈していると見ました。

作者の強い「現実肯定」は、今後ますます輝いてくると思われます。荒々しさだけが支配するような世界では、なおさらです。BFは、なくてはならない貴重な作者の賛同を得たんですね。「jump」さんや「テド」さんとのコラボレーションなんかどうでしょうか？　《続》


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