ヲノサトル責任編集・渋東ジャーナル 改

音楽家 ヲノサトル のブログ

[恐縮ですが育児中 18]

1900年01月18日 | [特集] コラム「恐縮ですが育児中」
ヲノサトルの
恐縮ですが育児中!

18. 映画







皆さんは生まれて初めて映画館に行った時のこと、おぼえてます?

当方は小学校低学年の頃。『東映まんが祭り』とか、そういった子ども向けアニメです。

それからバスター・キートンの『セブン・チャンス』とチャップリンの『独裁者』というクラシックな喜劇2本立てを観て、すっかり「洋画」が好きになったと記憶しています。

今思えば、田舎の子どもにとって外国映画は、世界中に空想旅行できる「夢の時間」だったんですね。日曜の朝、パンと牛乳を買って映画館に入り、2本立て3本立てを眺めて、一日を過ごしたものです。

とはいえ当時のおこづかいでは、映画館に行けるのは月に一度かそこらの贅沢。

当時はレンタルビデオどころか家庭用ビデオ機すらなかったから、映画と言えばむしろTVの洋画劇場で鑑賞するのがメインでした。

『大脱走』だの『ベン・ハー』だの『ゴッドファーザー』といった長尺モノだと、前篇・後編と2週に分けて放映されたりして。続きが観られる1週間後が、待ち遠しくてしょうがなかったものです。

しかし時代は変わり、いま自分の息子を観ていると、映画ないし「映像」全般に対して、飢餓感というものが全くない。

セルでもレンタルでもDVDはすぐ手に入るし、録画すればいつでも観られるわけです。

というか、そもそもコンテンツ自体が昔と比べれば膨大にある。動画サイトにもアクセスできるし、観るために「待つ」必要がない。良い悪いは別として、そういう時代なんですよね。

けれども、やはり変わらないと感じるのは、映画館という「空間」のパワーです。

日曜日。

「公園でパーッとカラダ動かして遊ぶか!」と、ことさら明るく誘ってはみるものの、内心では面倒くさいなーと思ってる父の本心を見透かしたかのように、「映画でも行く?」と言い出す息子。

こちらとしても、暗闇に座ってるだけの映画鑑賞ほどラクな休日の過ごし方はないので、即決で出かける。

日頃は家で飲食できないコーラやポテトやホットドッグを買い込み、売店で映画キャラの商品に目をキラキラさせ、予告編が始まると食い入るようにスクリーンを見つめる息子。

どんなに映像が溢れる時代になっても、体感アトラクションとしての映画館の楽しさは変わらないんだな。と、自分の子ども時代を思い出し、ちょっとノスタルジックな気分に浸ったりします。

そのせいか、映画の後には心も財布の紐も弛緩しきって、どう考えても不要なストラップとか、ゴミ箱行き確実の不細工なキャラ人形とか、気がつけば買わされちゃってるわけですが。

そういった散財も含め、映画館という場所にワクワクしちゃってるのって、実は父の方かもしれないんですけどね。たとえ、どんなにお子ちゃま向けな内容の戦隊モノだろうとアニメだろうと。

いやはや、まったく恐縮です。



明和電機ジャーナル 第19期 第6号 (2012年3月15日発行) 所収, に加筆訂正

17. 年中行事 < 恐縮ですが育児中!


最新の画像もっと見る

コメントを投稿