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音楽家 ヲノサトル のブログ

[恐縮ですが育児中 14]

1900年01月14日 | [特集] コラム「恐縮ですが育児中」

ヲノサトルの
恐縮ですが育児中!

14. 時間






ミヒャエル・エンデの『モモ』という小説に「時間貯蓄銀行」なる組織が出てきます。

人々がこの銀行に時間を奪われ、多忙になりすぎて心の余裕を失う…という物語でした。

しかし今の当方は、そんな銀行があったらむしろ契約したい。

時間を預けて利息を稼ぎたいわけではありません。逆に、老後の自分から時間を借りまくりたいのです。

経験者なら同意して下さると思いますが、なにしろ子どもが小さいと、自由時間など親には皆無。

子どもは究極の自己チュー。正真正銘のかまってちゃん。

常に自分が注目の的でないと気が済まない生き物ですから、「こっち来て!」「見て!見て!」と、親の視線を独占する事に命を賭けている。

実際、それぐらい気をひいてもらわないと、当方のようにウカツな親は食事の支度すら忘れかねません。

「ぼく、ひとりになりたいの…」なんて言い出すクールな性格だったら、うちなど数日以内に餓死確実。

そう考えると、あの独占欲も、子どもなりの生存戦略と思えてきます。

そうはわかっていても、徹夜明けで意識が混濁している時に「お絵描きするから見てて♡」と隣りに座らされ、ウトウトと瞼が閉じそうになるたびに「パパ起きて!ちゃんと見てよ!」とカン高い声で恫喝されると、さすがにキレそうになりますけどね。

一体これは何の罰ゲーム? 俺に何の罪が? いや生まれつき原罪を背負っているのが人間か?アダムとイヴくぁwせdrftgyふじこlp……(←寝落ち)「パパ!起きて!」以下くりかえし。

時間と言えば、約束の時刻をタイトに守るのも難しいのが、子連れ。

外出前の時間がない時に限って「オモチャ持って行く!」などと言い出し、 大人の目には積み上げられた瓦礫にしか見えない玩具の山をひっくり返して、じっくりと検分を始める。

「トイレは大丈夫?」と訊くたび「だいじょぶ!」と答えていたくせに、電車のドアが閉まった直後「おしっこ!」と言い出す。そんな時に限って次の駅までやたら間隔の長い 通勤快速だったりする。

絶対に外せない大事な仕事の日「こんな日に限って熱を出したりするんだよなー」と思えば、当然のように発熱。実は予知能力でも備わっているのか? と己の力を過信する瞬間です。

と、まあ、本人に責任は無いにせよ、親が描いた計画をことごとく妨害してくれるのが子どもというもの。

だからこそ、と言うべきか。

同じように子どもがいる人って、時間に対して比較的寛容なんですよね。

連絡なく待ち合わせに30分遅れても「出がけに何かあったんだろ」「メールも打てないぐらいバタバタしてるのね」と解釈し、気にせず待っていてくれる。なるほどこれが大人の余裕というやつか。

しかし、そんな寛容さに味をしめてしまい、子どもに関係なく親自身のルーズさがエスカレートしているのも事実。

「うちは子どもがいるし、3時間ぐらい遅れたって仕方ないよね?テヘペロ」などと、最近では親……つまり当方自身が、どんどん非常識な人間になってきているではありませんか!!

まったくもって恐縮です。

明和電機ジャーナル 第19期 第2号 (2012年7月15日発行) 所収, に加筆訂正

13. 読み聞かせ < 恐縮ですが育児中!>15. ヴァカンス


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