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音楽家 ヲノサトル のブログ

世界初の電子楽器

2005年02月01日 | 音楽

世界初の電子楽器、それはアメリカ人のケーヒル氏がつくった「テルハーモニウム」と言われる。

しかし、この楽器(というより巨大な『装置』なのだが)何せ100年以上前のモノなので、諸説入り乱れて正確な年がなかなか特定できない。苦労したあげくアメリカ合衆国特許庁の特許出願資料で、この楽器の図面を発見した。1897年4月6日と明記されている。

それにしても、テルハーモニウムの奇天烈さには圧倒される。



重さ200トン。ビル1軒ほどの大きさ。ダイナモ(自転車のタイヤにつけるあの発電機ね)の巨大なヤツを大量につなげて電波を発生させ、それを合成して音色をつくる…という大掛かりな仕組み。これは楽器というより何だろう「施設」? 発電所みたいなものか?

さてここで問題。そうやって作った電子音をケーヒルさん、どうやって鳴らしたと思います?「電気の音ならスピーカーから出したんだろ」だって? ブー(はずれ)

1897年ですぜ。真空管が1906年に発明されるまで、電気ってのは増幅する事ができなかった。つまり「アンプ」ってものがなかった。そしてスピーカーってのは、アンプ無しでは鳴らないのです。

スピーカ-の原理自体は1877年に特許がとられているけれど、そういうわけで当時はまだ机上の空論だった。ちなみに現在、僕らの使っているダイナミック型スピーカーが発明されたのは1925年。これの発明者がケロッグ博士だって知ってた?(そう、あのコーンフレークを発明した人)

ではスピーカーの無い時代、この楽器の音を聴かせるためにケーヒル氏が何を使ったかというと、答は「電話」。

1876年に発明された電話は当時、最先端の音響テクノロジーだった。これを使わない手はない。結局、テルハーモニウムの演奏は各家庭の電話で鑑賞されたというわけです。

なんだか今日で言うストリーミング放送のようなイメージだけど。なにしろ電話、それも100年前の電話だから、音は相当貧弱なものだったのではないかと推察するけれど。

しかしまあ、皆さんのほとんどは、この記事を読むまでテルハーモニウムなんて楽器、知りませんでしたよね? その事が証明している通り、莫大な費用や手間のかかるこの「楽器」、数年後にはあっさりと歴史の闇に消えていったんですなあ…。 合掌。


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