goo blog サービス終了のお知らせ 

ヲノサトル責任編集・渋東ジャーナル 改

音楽家 ヲノサトル のブログ

バウンス ko GALS

2009年06月11日 | 映画/映像


1週間が早すぎる…毎週の映画、下調べの自転車操業で日々が過ぎて行く。『お買い物中毒』など観ている場合ではなかったか(しかし記事への反響は大きかったです笑)

さて毎週木曜の『映像論B』いよいよ90年代後半まで来ました。渋谷がロケ地の映画なので、スクランブル交差点や公園通り、息子とよく行く恵比寿のタコ公園といったご近所が舞台で、ちょっと親近感。

バウンス ko GALS
1997年 原田眞人 監督



土曜の午後。新幹線で上京した女子高生リサは渋谷に向かう。ブルセラショップで下着を売り、明朝の飛行機で留学に向かうNYでの、生活費に足すつもりなのだ。そんな彼女を、街で出会って一目惚れした若者ザップが追いかけ回す。

同じ頃。「援交」に明け暮れるコギャルのマルは、伝言ダイヤルで知り合った大島とホテルに入るが、彼は実はヤクザ。渋谷で荒稼ぎするコギャルを苦々しく思っていて、マルの携帯と学生証を取りあげてしまう。マルの仲間で姉御肌のジョンコが、それらを取り返すため大島と直談判に行く。はっきりものを言う彼女と大島の間には不思議な信頼関係が生まれるが、渋谷での「商売」はやめろ、と警告する大島であった。

リサはさらにお金を得ようとビデオ撮影のアルバイトに向かうが、乱入してきたヤクザに旅行資金を奪われてしまう。あとをつけていたザップの機転でその場からは逃げ出せたが、これでは旅行も留学も不可能だ。絶望するリサだが、一緒に逃げた女子高生ラクちゃんは「援交なら一晩で稼げる」とアドバイス。旧友ジョンコに電話する。ジョンコはリサを助けるため、大島に禁じられた「商売」を再開するのだった。

果たして朝までにお金は集められるのか… そして警告を無視された大島はどう出るのか…



といったストーリー。いわゆる「ワン・ナイトもの」の定石通り、土曜の午後から日曜の朝にかけての時間の経過が、テロップで時おり示される。

偶然出会った少女たちが一晩の冒険を経て親友になっていく…という一種のおとぎ話を、手際よく構成して最後には感動させてくれる映画術はなかなかのものだ。主人公たちの溌剌とした存在感も良い。

大島を演じるのは役所広司。カラオケで「インターナショナル」を歌う、左翼くずれのインテリヤクザだ。おそらくは同じ学生運動仲間であろうブルセラショップ店長(桃井かおり)と、酒場で飲みながら「今どきのコギャルは…」と愚痴るくだりが傑作だ。

映画の中で、彼らヤクザやブルセラ店長といった本来「裏」の人間たちは、むしろ真っ当な意見を持った人間として描かれている。逆に、コギャルに寄ってくるサラリーマンや官僚、大学教授といった「表」の人間たちの方は、ネジの狂った存在として戯画的に描かれている。

大島はジョンコに「わからない。なんで一緒にメシ食うだけでオヤジから大金もらえるんだ?」と訊くが、ジョンコは「おかしいのはコギャルじゃなくて大人の方なんですよ」と答える。

狂った大人の欲望にさらされ続け「あっちがお金くれるっていうんだから、もらえば良いじゃん」とか「ハタチになったら悪いことなんて全部やめるもんね、ギャハハ」などとカフェやクラブでおしゃべりに興じても、彼女たちの心が満たされることはない。

そんな彼女たちにとって、「洋服買ったりしないの?」と聞かれ「貧しい国では何億人もの小さな子どもが工場でそういう製品をつくらされている…そういう事を考える方が大事だと思う」と答える帰国子女のリサは、まぶしい存在でもある。

リサは仕方なく「援交」をやってみるが、ジョンコの上客の教授が、戦争中の従軍慰安所での仕事を得意げに語り出したものだから、涙ながらに反論。大金を得るチャンスをみすみす棒にふってしまう。

大人たちすら今や全く持っていない彼女のそのような"真っ当さ"を、「クラい!」「そういうこと言うとクラスで浮かない?」などと揶揄しながらも、ジョンコはどこかうらやましそうだ。だからこそ彼女の資金かせぎに協力する気になった。だからこそ数時間のあいだに「親友」になれたんじゃないだろうか。

ほろにがい別れだけど、ハッピーエンド。
そんな幕切れもさわやかで、なんだか元気が出てくる映画であった。



うーん日本映画。奥が深い!


最新の画像もっと見る

コメントを投稿