ヲノサトル責任編集・渋東ジャーナル 改

音楽家 ヲノサトル のブログ

2012年カンヌ祭の広告映像

2012年07月31日 | 映画/映像


今年も「カンヌ・ライオン国際クリエイティヴィティ・フェスティバル」略してカンヌ祭が終わってしばらくたちます。

カンヌ…それは年間のベスト広告が集結する世界広告界の一大行事。というよりも今なにがキてるか、広告やマーケティングのみならず映像・メディア・文化のトレンドを探る上で、もはや目が離せないイベント。というわけで例年、当方も外野からワッチし続けているわけです。

一昨年も受賞作をレポートしてみましたが、今年も受賞作の中で面白かったものを、賞にこだわらず「ジャンルごと」に勝手に分類して、ご紹介しましょう。

映像がらみの賞は「フィルム(映像作品としての質)」と「フィルム・クラフト(映像制作技術への賞)」の2部門に分かれていますが、まずはフィルム部門の最優秀賞から。(ちなみにこのフェスでは、グランプリの事を「ライオン」と呼ぶならわしです)


【2012年 フィルム・ライオン】

CHIPOTLE "Back to the Start"
フィルム部門最優秀賞 フィルム・クラフト部門 金賞(アニメーション) 銀賞(音楽)


CHIPOTLEはメキシコ料理のファストフード・チェーンですね。工場的な食肉処理から有機農法に帰っていく牧場主のストーリー。

このエコロジー的な内容、スクロールしていくアニメ画面、そしてギター&男性ボーカルの楽曲のムードに、2005年にグランプリを受賞したHONDAの作品を連想しました。

Honda "Grrr" (2005)


っていうか、こうして並べると色味もそっくりだな…


【ナンセンス笑わせ系】

お次は、受賞作品の中でも思わず笑ってしまったものをいくつか。

DIRECTV "Don't Have Your House Explode"
フィルム部門 金賞


もしケーブルTVの画面がフリーズしてイライラさせられると…いろいろあって…最終的には大変な事になってしまいますよ!(だから、うちの会社と契約した方が良いですよ!)というパターンの連作。「風が吹けば桶屋が儲かる」みたいな話だが、どれもあまりに展開が強引、編集がスピーディ、最悪な結末が待っていて笑っちゃう。

他にも数パターンあります。

DIRECTV "Don't Wake Up in a Roadside Ditch"
フィルム部門 金賞


DIRECTV "Don't Sell Your Hair to a Wig Shop"
フィルム部門 金賞




【奇妙な出来事、その理由は?】

海外CMに非常に多いパターンですが、なんとも不可解な出来事が続く。これは一体どういう…と思いながら観てると、最後にその理由が明かされてニヤリとする。そんな作品です。

Zonajobs "Grandma"
フィルム部門 銀賞


これはヒドすぎる(褒め言葉)何度も何度もドギツく殺されては墓場から復活してくる、不死身のおばあちゃん。なんとも幸薄そうな風貌がまた…。

しかしどこの国でも、言い訳には親戚が使われるんですねー。個人的には今回ワッチした作品群の中でいちばん好きです(笑)


Canal+ "The Bear"
フィルム・クラフト部門 最優秀賞


これは今年のフィルム・クラフト・ライオン。冒頭、息を飲むような迫力で視聴者をツカみ、そこから「なんで熊が…?」と謎のシチュエーションをたたみかける流れ、上手いなあ。「なぜ熊が監督に?」そりゃあ長年これだけ映画を(Canal+のチャンネルで)見続けてきたんだから、監督になれないはずがないだろ? というオチで納得。

ちなみに、Canal+はフランスの有料TV局ですが、2010年にもこんな作品でフィルム部門金賞を獲ってますね。

Canal+ "the closet" (2010)


こちらもやっぱり冒頭の映画的なツカミから、あれよあれよという展開が凄まじい。もちろん最後には「なぜこの男がこんな目に?」の理由が明かされ、観てる方は爆笑。しかもちゃんと訴求ポイント(シナリオの上手さ=番組の面白さ)をアピールしているという。「次々に展開する荒唐無稽な話 → それがある人物の語る内容だった事が最後にわかる」というシナリオの構造は、先に挙げた"Grandma"と同じです。



【一発ネタ】

Old Spice "Motorcycle"
フィルム部門 銅賞


なんじゃそりゃ!としか言いようがない一発芸(笑)。イケてないアナタも、このフレグランスさえあればイケメンに生まれ変わり、美女を横に乗せて颯爽とバイクを飛ばしてるような気分になれます、というメッセージか。

シームレスに場面が変わっていくビジュアル展開は、2010年にグランプリを獲得したこちらにも通じるものがあります。同じクライアントの作品。

Old Spice "The Man Your Man Could Smell Like" (2010)



次も、ナンセンスな一発ネタ。

Krispy Kernels "Couch"
フィルム部門 銅賞


日頃、家の中でボールペンだの爪切りだのを頻繁に紛失しては「家のどこかが亜空間とつながっていて、なくしたものがその"ボールペン墓場"にゴッソリ溜まっているのではないか?」と妄想しがちな当方としては、「ユーレカ!そこにあったとはな!」と膝を叩きたくなります。


【モキュメンタリー】

Doritos "Dip Desperado"
フィルム部門 金賞 フィルム・クラフト部門 銅賞(演出)


タコチップを武器にしたらかなう者がいない孤高の男…エステバン・オルテガ!!!…って心底、馬鹿馬鹿しい話をマジメにこしらえてます。挿入されるフィルム調の回想シーンなんかは、この手の嘘ドキュメンタリーの定石ですね。女性コーラスとか必要以上に泣きが入ったB級ウェスタン調の音楽も笑える。


というわけで流石はカンヌ、他にもまだまだ興味深い作品があります。

続きは後篇で!



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