ヲノサトル責任編集・渋東ジャーナル 改

音楽家 ヲノサトル のブログ

プラネット・テラー

2007年10月10日 | 映画/映像

グラインド・ハウス第2弾=完結編の『プラネット・テラー』観てまいりました。1人でレイトショーに行くという、この映画の鑑賞法として最もふさわしいパターンで。

『プラネット・テラー』
(2007 ロバート・ロドリゲス監督)





これを観たらタランティーノの作風が知的に思えてきた。というぐらいだから、どれほど馬鹿度の高い映画か、推して知るべし!

まあロドリゲス映画に関しては、『デスペラード』冒頭でカウンターを歌い歩きながら悪党を蹴散らすバンデラスの映像一つとっても国宝級の馬鹿度だと既にわかっていたわけだが。

それにしても。最低1分に1回はポップコーンを口から吹き出しながら「おいおい!」とツッコミを入れたくなるこの展開力。言葉の真の意味で「スクリューボール・コメディ」と呼びたい。

その点では、『デス・プルーフ』のように、ダラダラと退屈な会話シーンが続き(そしてそれはストーリーの伏線でも何でもなかったりする)、登場人物が主役の背後で意味ありげな目配せを交わし合ったりする(これもストーリーの伏線でも何でもなく単に意味ありげなだけ)ヌルい展開の方が、グラインド・ハウス本来の「低予算で適当に撮った映画」っぽさには忠実なのかもしれないが。

以下、観賞後しばらくたった今も記憶している馬鹿ポイントを思いつくままに記しておく。記憶違いがあるかもしれないが、そんな事はどうでも良い!

(以下ネタバレ)

・「軍隊の細菌兵器がどうたらこうたらして、街にゾンビがあふれる状態になった…」という、これまで映画史において100万回以上も使われてきた本当にどうでも良い言い訳をわざわざ用意する律儀さ。

・音楽に乗ってこれ見よがしに踊るストリッパー(主人公)を、舐めるようなスケベ視線で撮るカメラや撮影クルーの姿が、そのまま背後のミラーに写りこんでしまっているオープニング・シーンの、計算し尽くされた詰めの甘さ。

・タフな軍人という「いかにもブルース・ウィリスっぽい役」で出てくるブルース・ウィリスが、ゾンビ菌に冒される役でほとんど何も演技しないうちに顔面崩壊して終わるという、贅沢なキャスティング。

・観客の気分を悪くするためだけに、ゾンビ菌にヤラれた患者の舌にできた膿をわざわざブチュッと潰して自分の顔面に汚汁を浴びる不用心な医者。

・主人公の元恋人エル・レイは一見フツーの若者だが、何の説明もなく戦闘能力がむやみに高い。後ろから飛びかかってきたゾンビを、バシッ!バシッ!と全く動じず殺戮していく。その軽やかな挙動と大げさな効果音はほとんどコントのように軽快。

・しかし周りの人間は「お前があの“エル・レイ”か…」などと驚愕したりするので、彼はどうやら伝説の人物であるらしい。だが、その理由は映画の中ではもちろん全く明かされない。何者なんだお前は?エル・レイ。

・誤認逮捕されたエル・レイ。逮捕した保安官が最初は彼を全く信用しないが、やがてゾンビに対して共に立ち向かう(ほのかな友情の芽ばえ)という、望月三起也のマンガのような男のロマン展開。

・その保安官と弟の料理人JTが仲間を守るために死を覚悟して残留。これまでの登場シーンで必ずバーベキューソースの味について言及してきたJTと、しつこいほどそのレシピについて尋ね続けた保安官。このシーンで血だらけになりながらJTが「レシピは墓場に持っていくぜ」とうそぶくと、保安官が「それもいいさ… お前は弟だからな」とニヤリと笑う。といった心底うんざりさせられるやりとり。

・ちなみに、前のシーンで死体の血をペロリとなめたJTが、平幹二郎のように深刻な顔で『そうか!俺のソースに足りなかったものは”塩”だ…!』とつぶやくシーンの馬鹿馬鹿しさも特筆したい。

・女医が子供を車に残していく時、護身のために銃を持たせて「自分に向けてはダメよ!」と言うが、子供は観客の想像通りあっさり自分を誤射して死んでしまう。もちろん観客を嫌な気分にさせるためだけに。

・足をゾンビに食われた主人公が、すかさず義足代わりに棒をつけてみたりマシンガンをつけてみたりして、ただちに歩行してみせる。お前は痛覚が無いのか?そしてそのマシンガンは、引き金を引かずとも気合いを入れると撃つ事ができる仕様。『スペースコブラ』の“サイコガン”へのオマージュか。

・そんな主人公がしばしば口にする「無駄な特技」が、意外にも伏線としてきちんと回収される。たとえば「無駄な特技その33 “体が柔らかい”」のおかげで、主人公は砲弾が飛んできてもクニャッとありえないぐらい背中をそり返らせて、簡単に避けられるのであった。ズルい!

・顔面と金玉を腐らせて死ぬだけの役でタランティーノがカメオ出演。本人、実に嬉しそう。


…といった数々の美点はさておき、つまりは『デス・プルーフ』同様、汚くて野蛮な男どもを女性が蹴散らして勝つ!というストーリーなので、女性客が最後にスカッとできる映画である事は間違いない。途中のグチャグチャニチャニチャした血みどろ描写を所詮は作りものと笑い飛ばせる方に限定されるが…

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