『日経おとなのOFF』といい、『東京人』といい、美術館にスポットが当てられている。
『BRUTUS CASA』や『美術手帖』では世界の美術館を紹介されることはあったけど、日本の美術館にスポットを当てられることはほとんどなかったと思う。こんなに美術館にスポットが当てられるようになったのは、安藤忠雄氏の功績によるものが大きいのかもしれない。
安藤忠雄氏は積極的にマスメディアを使い、自分の考えや自分の建築、自分の好きな建築を積極的に紹介している。私の拙い記憶によると彼は建築学会に所属していない一匹狼な建築家だ。それまで建築家は専門誌に作品や専門の批評家対象の小難しい論文を載せているだけだった。わかる人がわかる建築であればいい。そんな風潮があったように思う。彼はそんな風潮を打破した。そのおかげで公的な空間にありながら閉ざされた建築は、少し風通しのいいものになった。一般の人々が建築に興味を持ち始めたために、集客の要素のひとつとして美術館建築を有名な建築家に依頼するようになってきた。建築家側も美術館の仕事は、住宅建築をするよりクレームは少ないし、より多くの人に外観と内部空間を体験してもらえるし、評価も上がりやすい。美術館を運営する方にとっても建築家にとってもこれはメリットが大きい。
建築が少し風通しのよいものになったことは、歓迎されることだけど、美術館建築に偏る傾向はどうも素直に喜べない。建築史家 藤森照信氏の『特選美術館三昧』によると、日本の美術館は世界に比べると圧倒的に多いらしい。美術好きとしてはうれしいことだけど、本当にそこまで必要なのか疑問に思う。ここ10年でデパート系の美術館をはじめとする美術館が閉館している。私立の美術館が閉館していく中で公立の美術館は増えている。公立だから安全というわけではない。現に芦屋の美術館は経営難で今後どういった形で経営していくか問題になっている。こういった問題が今後増えていくような気がしている。美術館バブルの時代と言われてもおかしくない時代だ。ブームは去っていくものである。その中の一部は定着していくかもしれないけど、このブームは定着しないような気がしている。ちょっと杞憂すぎるかな。