3月1日の夜に放映された、「Mr.サンデー」を見て驚いた。
日本の地球の裏側の南米ウルグアイでの出来事が紹介されていた。
ジェラルド・アコストさんは、職場でトラブルがあったために帰りが遅くなり、ヒッチハイクをすることに。しかし、30台ほどの車が通り過ぎなかな止まってくれず落胆していたところ、1台の車がやっと止まってくれた。
1987年製のフォルクスワーゲン・ビートルだった。
車に乗り込んでからびっくり。
女性は上院議員のルシア・トセポランスキー氏であり、そして車を運転しているのは彼女の夫、ホセ・ムヒカ大統領だった。

大統領は、アコストさんが、なぜヒッチハイクをしなければならなくなったのか、仕事はどうなのか、などを心配して聞いてくれたという。
アコストさんは、大統領夫婦の写真を撮らせてもらい、フェイスブックで画像を発信、それが世界で話題となった。
http://spotlight-media.jp/article/112699070269858445

この大統領のことが、2月末から3月にかけて、「世界一貧しい大統領」として、いくつかのテレビ番組でとりあげられた。
2010年3月に大統領となってから5年の任期となる3月1日を迎え、多くの国民に惜しまれながら退任となったからである。(ウルグアイでは連続再選は禁止されている)

ムヒカ大統領は、1905年生まれの79歳。ペペの愛称で呼ばれ国民から親しまれている。
大統領という地位にありながら、実に質素で謙虚な生活をしている。国会にノーネクタイでサンダル履きで登場。大衆食堂にも頻繁に現れ、常連客からも人気を誇る。
「大統領官邸に住んで42人の職員を雇うくらいなら、学校のために経費を使いたいので住まない」と、大統領公邸には住まず、首都のモンテビデオ郊外の小さな農場のボロ家に、妻と3本足の愛犬マニュエラと質素に暮らしている。そこでは、水道も通っておらず、井戸水を使用しているという。
警備は、警官2人だけ。それも政府からの強い要請によるもの。
愛犬マニュエラも警備要員の1人とか?

3本足の愛犬マニュエラは、公務以外はいつも大統領のそばにいる
ちなみに、ムヒカ大統領は、大統領専用機(飛行機)を持っていないために、国際会議などに行くときはエコノミークラスで行くか、他の周辺国の大統領に便乗させてもらうことが多いという。(それが理由でヒッチハイカーを見過ごせなかったのではないかというジョークもある)
さらに、今もなお内戦が続く中東・シリアでは、200万人を超える紛争孤児の受け入れ先が大きな問題となっているが、そんな中で、ムヒカ大統領が、昨年、100人のシリア内戦の孤児のために、ウルグアイの自身の家を解放したとし、「一国のトップが自らのプライベートの家を受け入れ先として解放した例はこれが初めてだろう」と報道している。
http://eedu.jp/blog/2014/05/26/the-world-poorest-mujica-president-open-house-syria-orphans-uruguay/
そんなムヒカ大統領の給料は、月額25万ウルグアイペソ(日本円で約115万円)であるが、大統領が受け取るのは、そのうちの平均的なウクライナ人がもらっている分を除いて10万円ほど。月給の90%を慈善事業に寄付しているのだ。

クレジットカードや銀行口座も持たず、個人資産は、約18万円のフォルクスワーゲン・ビートルズ1台のみ。2014年現在の価値は約32万円で、アラブの富豪が約1億1600万円で買い取ると申し出たが「友人から貰った物だから、売れば友達を傷つけることになる」と断わったという。
公務の合間にトラクターで畑仕事と養鶏をしている。
まるで、やさしい村長さんか、隣のおじいちゃんという感じの大統領らしからぬ大統領。

しかし、これまでの生涯は、壮絶だ。
ムヒカ大統領は、1935年に首都モンテビデオに貧しい移民の子として生まれ、5歳で父親が亡くなり、家畜の世話や花売りなどで生計を支えてきた。
1960年代に極左ゲリラ組織ツパマロスの一員となり、ゲリラ活動にも参加し、4回に渡り逮捕・投獄された。1972年には警官から6発の銃弾を受け、逮捕されてから、軍事政権が崩壊するまでの14年間獄中に収監され、軍事政権側の人質として扱われていた。そのうち2年以上は、井戸の底に閉じ込められていたという。
1985年に立憲君主制が復活した後は、左派政党を結成し、1995年の下院議員選挙に初当選し、2005年に農牧水産相として初入閣し、2009年11月には大統領選挙に立候補して当選し、2010年3月から第40代大統領となった。
一昨年12月の「共同通信」のインタビューでムヒカ大統領は、「生きていられるだけで人生は素晴らしいじゃないか」と述べ「刑務所で人生を学んだ。耐えることを覚えた」と満面の笑みで語ったという。
ムヒカ大統領の存在が、世界に知られるようになったきっかけが、2012年6月の国連持続可能な開発会議(「リオ+20」)でのスピーチだ。「リオ+20」とは、環境が悪化した地球の未来について話し合う国連主催の会議である。

国連加盟193カ国の最後に登壇したムヒカ大統領。すでに、少なくない国の代表は帰ってしまった中での演説だった。
最初は小国の演説だと、まじめに聞いている人が少なかったが、最後には、大きな拍手がわきおこったという。
そして、世界に、この「世界で一番貧しい大統領」のスピーチがひろがり、日本でも、絵本にまでなり、ベストセラーになっている。

(汐文社刊・税別1600円)
ムヒカ大統領は、スピーチで最初に、リオ会議に参加した政府代表と主催国者への感謝、それまでの発言者への感謝を述べたあと、「しかしながら、声を大にしていくつかの質問をすることをお許し下さい」としたうえで次のように述べている。
(絵本では子ども向けに意訳しており、別の表現となっている)
「わたしにみなさんに質問をさせてください。ドイツ人が一世帯で持つ車と同じ数の車をインド人が持てばこの惑星はどうなるのでしょうか?
呼吸をするための十分な酸素は残るでしょうか?。同じことを別の質問で言うならば、西洋の富裕社会が持つ“傲慢な”消費を世界の70億から80億人もの人々がおこなうための資源が、この地球に存在するのでしょうか?それは本当に可能でしょうか?あるいは、別の異なる議論をしなければならないのでしょうか?
なぜ私たちは、このような社会をつくってしまったのでしょうか?
市場経済の子どもたち、資本主義の子どもたち、すなわち私たちが間違いなくこの無限ともいえる消費と発展を求める社会をつくり出してきたのです。市場経済が市場社会を造り、このグローバリゼーションが世界の果てまで資源を探し求める社会にしたのではないでしょうか。
私たちがグローバリゼーションをコントロールしていますか?あるいはグローバリゼーションが、私たちをコントロールしているのではないでしょうか?」
「現代においては、人類がつくりだしたこの大きな勢力をコントロールしきれていません。逆に、人類がこの消費社会によってコントロールされているのです。
私たちは発展するために生まれてきたわけではありません。幸せになるために、この地球にやってきたのです。人生は短いし、すぐ目の前を過ぎてしまいます。命よりも高価なものは存在しません。
常軌を逸した消費は世界を破壊しており、高価な商品やライフスタイルが人々の人生を破滅させているのです。」
「この常軌を逸した消費を続けるには、商品の寿命を縮めて出来るかぎり多く売る必要があります。つまり、10万時間持つ電球をつくれるのに、1000時間しか持たない電球しか売ってはいけない社会にいるのです。それほど長く持つ電球は、市場社会に良くないのでつくることはできないのです。人々がより働くため、そしてより販売するために『使い捨ての社会』を続ける必要があるのです。
石器時代に戻れとは言っていません。マーケットをまたコントロールしなければならないと言っているのです。私の謙虚な考え方では、これは政治問題です。
昔の賢明な方々、エピクロス、セネカやアイマラ民族までこんなことを言っています。
『貧乏なひととは、少ししかものを持っていない人ではなく、無限の欲があり、いくらあっても満足しない人のことだ』
この言葉は、私たちの議論にとって文化的なキーポイントだと思います。」

「根本的な問題は私たちが実行した社会モデルなのです。そして、改めて見直さなければならないのは私たちの生活スタイルだということです。」
「私は自然の資源に恵まれている小さな国の代表です。私の国には300万人ほどの国民しかいません。でも、世界でもっとも美味しい1300万頭の牛が私の国にはいます。800万から1000万頭ほどのすばらしい羊もいます。私の国は食べ物の輸出国です。平地なので、こんな小さい国なのに国土の90%を農業に使えるのです。
私の同志である労働者たちは、8時間労働を成立させるために戦いました。そして今では、6時間労働を獲得した人もいます。しかしながら、6時間労働になった人たちは別の仕事もしており、結局は以前よりも長時間働いています。なぜか?バイク、車、などのリポ払いやローンを支払わないといけないのです。毎月2倍働き、ローンを払って行ったら、いつの間にか私のような老人になっているのです。私と同じく、幸福な人生が目の前を一瞬で過ぎてしまいます。」
「私の言っていることはとてもシンプルなものです。発展は幸福を阻害するものであってはいけないのです。発展は人類に幸福をもたらすものでなくてはなりません。愛情や人間関係、子どもを育てること、友達を持つこと、そして必要最低限のものを持つこと。これらをもたらすべきなのです。
幸福が私たちのもっとも大切なものだからです。環境のために戦うのであれば、人類の幸福こそが環境の一番大切な要素であるということを覚えておかなくてはなりません。」

このスピーチ以外にもムヒカ大統領は、世界に対して声をあげている。
スペイン語版CNNのインタビューに応えて次のように語っている。
「お金をたくさん持っている人は、政治の世界から追放されるべきだ」なぜなら、「私たちは、代表民主制と呼ばれるものを発明しました。これは多数派の人が決定権を持つ世界だと私たちは言います」「ならば、私たち(各国の指導者たち)は、少数派(富裕層)ではなく多数派のような暮らしをするべきだと私には思えるのです」
また、BBCのインタビューでは、ムヒカ大統領は、「お金持ちではない多数派の人々の利益を代表するという仕事を、裕福な人々がうまくできるとは考えていない」として、次のように述べている。
「政治の世界では、彼らを分け隔てる必要があります。お金があまりに好きな人たちには、政治の世界から出て行ってもらう必要があるのです。彼らは政治の世界では危険です。」
「お金が大好きな人は、ビジネスや商売のために身を捧げ、富を増やそうとするものです。しかし、政治とは、すべての人々の幸福を求める闘いなのです」
「彼ら(裕福な人々)は世界を、彼らの視点、つまりお金の視点から捉えます。たとえ善意に基づいて取り組んでいるときでも、彼らの世界観、生活観、それに何かを決定する観点を提供するものは、お金です。私たちの住む世界が多数派によって統治されなければならないとかるなら、私たちは自らの視点の拠り所を、少数派ではなく多数派の視点に置くよう努力する必要があります」
さすがに「世界一貧しい大統領」らしい言葉ではないだろうか。

ムヒカ大統領が指摘し、警鐘を鳴らすことは、経済の問題、格差と貧困の問題、環境・資源問題、そして政治家のあり方……どれも、今の日本に通じるものである。
世界でも最大の消費主義社会である日本。
しかし、安倍首相は「アベノミクス」と自らの名を冠して「経済成長」を最優先に掲げる。政権は、社会保障を削減する一方で、大企業のための減税や施策は熱心で、原発も再稼動し、世界にも輸出をすすめている。
「日本を世界で一番企業が活動しやすい国に」と、「労働者派遣法改正」や「残業代ゼロ」法案も国会に提案している。
また、自分たちの身を削ることはせず、企業献金も政党助成金もガッポリ受け取っていながら閣僚たちの違法献金問題は後をたたない。
おまけに、安倍首相は会食好きで、マスコミ幹部と毎日のように豪華なおいしいものを食べている。
ムヒカ大統領とは、考えていることも政策も、行動もまったく真逆である。
──私たちは発展するために生まれてきたわけではありません。幸せになるために、この地球にやってきたのです。人生は短いし、すぐ目の前を過ぎてしまいます。命よりも高価なものは存在しません。──
このムヒカ大統領の言葉をあらためてもう一度噛み締め、私たちは、日本で当たり前のように長年続けてきた、政治や経済のあり方の根本を見直すべきときに来ているのではないだろうか。


最後の退任の際に、国民とともに世界のメディアが殺到した
日本の地球の裏側の南米ウルグアイでの出来事が紹介されていた。
ジェラルド・アコストさんは、職場でトラブルがあったために帰りが遅くなり、ヒッチハイクをすることに。しかし、30台ほどの車が通り過ぎなかな止まってくれず落胆していたところ、1台の車がやっと止まってくれた。
1987年製のフォルクスワーゲン・ビートルだった。
車に乗り込んでからびっくり。
女性は上院議員のルシア・トセポランスキー氏であり、そして車を運転しているのは彼女の夫、ホセ・ムヒカ大統領だった。
大統領は、アコストさんが、なぜヒッチハイクをしなければならなくなったのか、仕事はどうなのか、などを心配して聞いてくれたという。
アコストさんは、大統領夫婦の写真を撮らせてもらい、フェイスブックで画像を発信、それが世界で話題となった。
http://spotlight-media.jp/article/112699070269858445
この大統領のことが、2月末から3月にかけて、「世界一貧しい大統領」として、いくつかのテレビ番組でとりあげられた。
2010年3月に大統領となってから5年の任期となる3月1日を迎え、多くの国民に惜しまれながら退任となったからである。(ウルグアイでは連続再選は禁止されている)
ムヒカ大統領は、1905年生まれの79歳。ペペの愛称で呼ばれ国民から親しまれている。
大統領という地位にありながら、実に質素で謙虚な生活をしている。国会にノーネクタイでサンダル履きで登場。大衆食堂にも頻繁に現れ、常連客からも人気を誇る。
「大統領官邸に住んで42人の職員を雇うくらいなら、学校のために経費を使いたいので住まない」と、大統領公邸には住まず、首都のモンテビデオ郊外の小さな農場のボロ家に、妻と3本足の愛犬マニュエラと質素に暮らしている。そこでは、水道も通っておらず、井戸水を使用しているという。
警備は、警官2人だけ。それも政府からの強い要請によるもの。
愛犬マニュエラも警備要員の1人とか?
3本足の愛犬マニュエラは、公務以外はいつも大統領のそばにいる
ちなみに、ムヒカ大統領は、大統領専用機(飛行機)を持っていないために、国際会議などに行くときはエコノミークラスで行くか、他の周辺国の大統領に便乗させてもらうことが多いという。(それが理由でヒッチハイカーを見過ごせなかったのではないかというジョークもある)
さらに、今もなお内戦が続く中東・シリアでは、200万人を超える紛争孤児の受け入れ先が大きな問題となっているが、そんな中で、ムヒカ大統領が、昨年、100人のシリア内戦の孤児のために、ウルグアイの自身の家を解放したとし、「一国のトップが自らのプライベートの家を受け入れ先として解放した例はこれが初めてだろう」と報道している。
http://eedu.jp/blog/2014/05/26/the-world-poorest-mujica-president-open-house-syria-orphans-uruguay/
そんなムヒカ大統領の給料は、月額25万ウルグアイペソ(日本円で約115万円)であるが、大統領が受け取るのは、そのうちの平均的なウクライナ人がもらっている分を除いて10万円ほど。月給の90%を慈善事業に寄付しているのだ。
クレジットカードや銀行口座も持たず、個人資産は、約18万円のフォルクスワーゲン・ビートルズ1台のみ。2014年現在の価値は約32万円で、アラブの富豪が約1億1600万円で買い取ると申し出たが「友人から貰った物だから、売れば友達を傷つけることになる」と断わったという。
公務の合間にトラクターで畑仕事と養鶏をしている。
まるで、やさしい村長さんか、隣のおじいちゃんという感じの大統領らしからぬ大統領。
しかし、これまでの生涯は、壮絶だ。
ムヒカ大統領は、1935年に首都モンテビデオに貧しい移民の子として生まれ、5歳で父親が亡くなり、家畜の世話や花売りなどで生計を支えてきた。
1960年代に極左ゲリラ組織ツパマロスの一員となり、ゲリラ活動にも参加し、4回に渡り逮捕・投獄された。1972年には警官から6発の銃弾を受け、逮捕されてから、軍事政権が崩壊するまでの14年間獄中に収監され、軍事政権側の人質として扱われていた。そのうち2年以上は、井戸の底に閉じ込められていたという。
1985年に立憲君主制が復活した後は、左派政党を結成し、1995年の下院議員選挙に初当選し、2005年に農牧水産相として初入閣し、2009年11月には大統領選挙に立候補して当選し、2010年3月から第40代大統領となった。
一昨年12月の「共同通信」のインタビューでムヒカ大統領は、「生きていられるだけで人生は素晴らしいじゃないか」と述べ「刑務所で人生を学んだ。耐えることを覚えた」と満面の笑みで語ったという。
ムヒカ大統領の存在が、世界に知られるようになったきっかけが、2012年6月の国連持続可能な開発会議(「リオ+20」)でのスピーチだ。「リオ+20」とは、環境が悪化した地球の未来について話し合う国連主催の会議である。
国連加盟193カ国の最後に登壇したムヒカ大統領。すでに、少なくない国の代表は帰ってしまった中での演説だった。
最初は小国の演説だと、まじめに聞いている人が少なかったが、最後には、大きな拍手がわきおこったという。
そして、世界に、この「世界で一番貧しい大統領」のスピーチがひろがり、日本でも、絵本にまでなり、ベストセラーになっている。
(汐文社刊・税別1600円)
ムヒカ大統領は、スピーチで最初に、リオ会議に参加した政府代表と主催国者への感謝、それまでの発言者への感謝を述べたあと、「しかしながら、声を大にしていくつかの質問をすることをお許し下さい」としたうえで次のように述べている。
(絵本では子ども向けに意訳しており、別の表現となっている)
呼吸をするための十分な酸素は残るでしょうか?。同じことを別の質問で言うならば、西洋の富裕社会が持つ“傲慢な”消費を世界の70億から80億人もの人々がおこなうための資源が、この地球に存在するのでしょうか?それは本当に可能でしょうか?あるいは、別の異なる議論をしなければならないのでしょうか?
なぜ私たちは、このような社会をつくってしまったのでしょうか?
市場経済の子どもたち、資本主義の子どもたち、すなわち私たちが間違いなくこの無限ともいえる消費と発展を求める社会をつくり出してきたのです。市場経済が市場社会を造り、このグローバリゼーションが世界の果てまで資源を探し求める社会にしたのではないでしょうか。
私たちがグローバリゼーションをコントロールしていますか?あるいはグローバリゼーションが、私たちをコントロールしているのではないでしょうか?」
「現代においては、人類がつくりだしたこの大きな勢力をコントロールしきれていません。逆に、人類がこの消費社会によってコントロールされているのです。
私たちは発展するために生まれてきたわけではありません。幸せになるために、この地球にやってきたのです。人生は短いし、すぐ目の前を過ぎてしまいます。命よりも高価なものは存在しません。
常軌を逸した消費は世界を破壊しており、高価な商品やライフスタイルが人々の人生を破滅させているのです。」
「この常軌を逸した消費を続けるには、商品の寿命を縮めて出来るかぎり多く売る必要があります。つまり、10万時間持つ電球をつくれるのに、1000時間しか持たない電球しか売ってはいけない社会にいるのです。それほど長く持つ電球は、市場社会に良くないのでつくることはできないのです。人々がより働くため、そしてより販売するために『使い捨ての社会』を続ける必要があるのです。
石器時代に戻れとは言っていません。マーケットをまたコントロールしなければならないと言っているのです。私の謙虚な考え方では、これは政治問題です。
昔の賢明な方々、エピクロス、セネカやアイマラ民族までこんなことを言っています。
『貧乏なひととは、少ししかものを持っていない人ではなく、無限の欲があり、いくらあっても満足しない人のことだ』
この言葉は、私たちの議論にとって文化的なキーポイントだと思います。」
「根本的な問題は私たちが実行した社会モデルなのです。そして、改めて見直さなければならないのは私たちの生活スタイルだということです。」
私の同志である労働者たちは、8時間労働を成立させるために戦いました。そして今では、6時間労働を獲得した人もいます。しかしながら、6時間労働になった人たちは別の仕事もしており、結局は以前よりも長時間働いています。なぜか?バイク、車、などのリポ払いやローンを支払わないといけないのです。毎月2倍働き、ローンを払って行ったら、いつの間にか私のような老人になっているのです。私と同じく、幸福な人生が目の前を一瞬で過ぎてしまいます。」
「私の言っていることはとてもシンプルなものです。発展は幸福を阻害するものであってはいけないのです。発展は人類に幸福をもたらすものでなくてはなりません。愛情や人間関係、子どもを育てること、友達を持つこと、そして必要最低限のものを持つこと。これらをもたらすべきなのです。
幸福が私たちのもっとも大切なものだからです。環境のために戦うのであれば、人類の幸福こそが環境の一番大切な要素であるということを覚えておかなくてはなりません。」
このスピーチ以外にもムヒカ大統領は、世界に対して声をあげている。
スペイン語版CNNのインタビューに応えて次のように語っている。
「お金をたくさん持っている人は、政治の世界から追放されるべきだ」なぜなら、「私たちは、代表民主制と呼ばれるものを発明しました。これは多数派の人が決定権を持つ世界だと私たちは言います」「ならば、私たち(各国の指導者たち)は、少数派(富裕層)ではなく多数派のような暮らしをするべきだと私には思えるのです」
また、BBCのインタビューでは、ムヒカ大統領は、「お金持ちではない多数派の人々の利益を代表するという仕事を、裕福な人々がうまくできるとは考えていない」として、次のように述べている。
「政治の世界では、彼らを分け隔てる必要があります。お金があまりに好きな人たちには、政治の世界から出て行ってもらう必要があるのです。彼らは政治の世界では危険です。」
「お金が大好きな人は、ビジネスや商売のために身を捧げ、富を増やそうとするものです。しかし、政治とは、すべての人々の幸福を求める闘いなのです」
さすがに「世界一貧しい大統領」らしい言葉ではないだろうか。
ムヒカ大統領が指摘し、警鐘を鳴らすことは、経済の問題、格差と貧困の問題、環境・資源問題、そして政治家のあり方……どれも、今の日本に通じるものである。
世界でも最大の消費主義社会である日本。
しかし、安倍首相は「アベノミクス」と自らの名を冠して「経済成長」を最優先に掲げる。政権は、社会保障を削減する一方で、大企業のための減税や施策は熱心で、原発も再稼動し、世界にも輸出をすすめている。
「日本を世界で一番企業が活動しやすい国に」と、「労働者派遣法改正」や「残業代ゼロ」法案も国会に提案している。
また、自分たちの身を削ることはせず、企業献金も政党助成金もガッポリ受け取っていながら閣僚たちの違法献金問題は後をたたない。
おまけに、安倍首相は会食好きで、マスコミ幹部と毎日のように豪華なおいしいものを食べている。
ムヒカ大統領とは、考えていることも政策も、行動もまったく真逆である。
──私たちは発展するために生まれてきたわけではありません。幸せになるために、この地球にやってきたのです。人生は短いし、すぐ目の前を過ぎてしまいます。命よりも高価なものは存在しません。──
このムヒカ大統領の言葉をあらためてもう一度噛み締め、私たちは、日本で当たり前のように長年続けてきた、政治や経済のあり方の根本を見直すべきときに来ているのではないだろうか。
最後の退任の際に、国民とともに世界のメディアが殺到した
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