今、僕は宮城県仙台市に居住していますが、昨年は、愛媛県名産じゃこ天に対する東北某県知事による暴言騒動から、東北在住の僕個人として愛媛へのお詫びの意味で「愛媛風雑煮」を作りました。その際に「次回は焼きハゼが入手出来れば仙台雑煮を作りたい。」と思っていたので、今年はその仙台雑煮に挑戦です。
とは言っても、僕は今まで仙台雑煮の実物を食べた事がありません。なので、本物の仙台雑煮に敬意を表し、僕が作る今回の雑煮は「仙台『風』雑煮」とします。
さて、「仙台雑煮」と言えば「焼きハゼ」から出汁を取り、仕上げ飾りにも焼きハゼを乗せる独特の食文化ですね。ですがこの「焼きハゼ」、この一、二年、僕の知っている範囲ではありますが仙台市内では目にしておりません。
昨年末は僕の体調不良と全身疼痛で生活日用品の買い出し回数も少ない中とは言え、実は12月初旬から焼きハゼを探していたのです。数年前までは目にしていた商店でも店頭に出ておらず、年末には、正月用品ならば必ず購入出来る「仙台朝市」にも行きました。あ、「仙台朝市」は規模はそれ程大きくは無いのですが東京で言うところの「アメヤ横丁」ですね。
その「仙台朝市」でも、どの商店にも焼きハゼが出ていなかったので仙台朝市の中の或る商店に確認したところ、「今年は全く入荷出来ていない。売りたくても商品そのものが流通していない。」との事。耳を澄ませると、仙台朝市に来ている客の誰しもが焼きハゼを探している模様でもありました。
仙台の焼きハゼは本来、宮城県の松島湾で大量に漁獲されたハゼを干して焼き、わら縄で簾(すだれ)状にされた商品。しかし近年、松島湾でのハゼ漁獲量が激減。特に東日本大震災後はその漁獲量の減少に拍車が掛かったと聞いています。
更に焼きハゼは職人さんによる手作業での製作です。ハゼは季節的漁獲と言う事もあり、当然、「専業」の職人さんは居ませんし、そもそも少数しか居なかった焼きハゼの職人さんは高齢化によりその多くが引退。兼業による生産の為に後継者が育たない。と言う背景があります。
また、加工したくても漁獲が無い。生産数が減って価格は高騰する。価格高騰により仙台市内での需要が減る。この悪循環も存在するので、焼きハゼに関する事態は、かなり深刻であるのが実態です。
この一、二年で焼きハゼが仙台に於ける市場から姿を消してしまったので、もしかしたら、焼きハゼを使用した伝統的な仙台雑煮の食文化は絶えてしまうのかも知れません。。。
(因みに、この深刻な状況を、愛媛県庁水産課にメールで意見具申しました。愛媛県の八幡浜はハゼの漁獲量が日本一ですし、土地としても「宇和島伊達藩」と「仙台伊達藩」の歴史的な縁が在るのです。愛媛県の水産業振興の観点から八幡浜で焼きハゼを生産し、仙台の伝統的食文化を継続させる事が出来ないか。愛媛県水産課に対し、その点の研究を進めて戴きたい旨の意見具申です。)
この様に焼きハゼが入手出来ない為、今回僕が作る仙台「風」雑煮は、このブログではお馴染みの「なんちゃって」で作ります。そう、焼きハゼの代用品を使用する事にしたのです。それは「身欠き(みがき)にしん」。
仙台市内のスーパーマーケットで販売されている身欠きにしんは「ソフト身欠き」と言って、硬く熟成乾燥させたものでは無く、脂や水分がかなり残った状態。今回はこの「ソフト身欠きにしん」を使用します。「仙台朝市」では熟成乾燥させた本物の「身欠きにしん」が入手出来るのですが、ここは敢えて「ソフト身欠き」にします。
理由は、焼きハゼの様な「焼き」の入った香りと風味を出す為に、実際に焼くからです。とは言っても、僕の住んでいる仙台の会社の寮には、IHコンロがひと口だけ。グリルが無いのでフライパンで焼か去るを得ません。その場合、「油」を使いたく無いので弱火でじっくりニシンの「脂」を出して焼きたいのです。この為、本物の身欠きでは無く「ソフト身欠き」の方が僕にとっては好都合。お財布にも優しいですからね。
まぁ、フライパンでは無くて魚焼きグリルが有る場合は、熟成乾燥させた本物の身欠きにしんの方が、更に焼きハゼに近い、脂の無いすっきりした仕上がりに成るとは思いますけど。
はい。と、言う事で、焼きハゼの代用で身欠きにしんを焼いてから出汁を取り、仕上げ飾りにも、焼いた身欠きにしんを乗せますよ。(焼いた香りと風味が重要。)
なお、出汁は、焼きハゼが廃れて現代の仙台で主流に成った、鶏の出汁も使って「合わせ出汁」にします。また、仙台市西部では雑煮に干し椎茸も使用すると聞いた事があった為、干し椎茸の出汁も使いましょう。更に、どうせ「なんちゃって」「風」ですから、昆布出汁も使っちゃいます。
ですが、あくまでも「海洋動物」性蛋白質の出汁の主体は、今回はにしんです。鰹(鰹節類)は使いません。
【使用材料】
(1)出汁
焼いた身欠きにしん、鶏、干し椎茸、昆布の「合わせ出汁」で、澄まし汁。
それぞれ別に作った出汁を、6:2:1:1程度の割合で合わせました。
出汁を合わせた後に、塩を少々と、濃口醤油を微量足して、味と色合いを微調整。
(2)具材
仙台セリ、芋がら(ずいき)、大根と人参(ひきな)、ごぼう、凍り豆腐(高野豆腐)、
鶏肉、干し椎茸。これらは別々に水煮にしています。(味付煮でも良かったかな。)
そして、焼いた切り餅、紅白蒲鉾、いくら(はらこ)、柚子皮をあしらいました。
(仙台では一般は切り餅。「ずんだ餅」だけは丸餅。切り餅と丸餅の両方が流通。)
凍り豆腐は、近代製法の大量生産品で一般的な「高野豆腐」では無くて、伝統製法の宮城県大崎、岩出山凍り豆腐ですよ。但し、仙台雑煮に使用するいくらは本来、阿武隈川に遡上する鮭のはらこなのですが、入手出来ませんから、これは一般市販品。
それでも、(リハビリの一環とは言え、全身疼痛と体調不良の中、IHコンロひと口で)下処理を含めてかなりの時間を掛けた上に具材にもこだわって作った「なんちゃって仙台風お雑煮」です。
さて、お味はどうでしょうか??
うわぁ、とても深い風味で、香りが立ちます!!
食事は味だけでは無く香りも重要な要素ですが、この焼いた魚の鼻腔をくすぐる香りと深いコク!
仙台セリの風味も素晴らしい!
これが、焼き身欠きにしんでは無く「焼きハゼ」を使っていれば、本当の仙台雑煮なのでしょうね。
今回は「なんちゃって」(代用品使用)です。それでも全体として、仙台セリや芋がら(ずいき)を含めて、現代としてはかなり高価なお雑煮。
古くはもう少し手頃な価格であったと思いますが、仙台伊達藩の城下町からの歴史と文化を感じる逸品だと思います。
東京風お雑煮に慣れ親しんで来た僕が、初めて作る今回の仙台風お雑煮は「なんちゃって」ではありますが、昨年の愛媛風お雑煮と共に、本当に大満足です!