わくさき日記

千葉県習志野市の司法書士事務所の日常です。

意外!?遺言の必要性の高い人→自宅購入者

2022-02-12 00:00:00 | 司法書士
遺言とは自分が亡くなった後、財産をどのように分配してほしいかなどを書面に残しておく手続きです。
まれに「遺書(いしょ)」と混同される方もいますが、遺言(ゆいごん・いごん)は、法律で要件が
定められている書類です。
法律の要件に沿って遺言を残すことで、基本的に亡くなった後の財産をそのとおりに分配・承継することができます。

一方、遺言が無い場合は、相続人に承継され、相続人のうちの特定の人に承継させたいような場合は、
相続人全員で遺産分割協議をしなければなりません。

この相続人とは次の通りです。
例えば、父・母・子の家族で、父が亡くなった場合、相続人は母と子です。
また、夫・妻のみで子がいない家庭で、夫が亡くなった場合、夫の両親が健在であれば、相続人は妻と夫の両親です。
ちなみに、夫の両親が他界しており、夫に兄弟がいれば、相続人は妻と夫の兄弟です。

父・母・子の家族:父死亡→母・子
夫・妻の家庭:夫死亡→妻・夫の両親/妻・夫の兄弟

次に遺産分割協議を行う場合、その協議の参加者は原則として判断能力のある成人である必要があります。
成人である必要があるので、未成年は相続人であっても未成年だけで遺産分割協議に参加することはできません。
この場合、相続関係によりますが、多くは家庭裁判所の手続きによる特別代理人を選任する必要があります。
なお、成人であっても判断能力が不足している方、例えば認知症が進んでしまっている方などは、成年後見制度などを利用する必要があります。

以上を踏まえて次のような事例を考えてみます。

家族構成:父(30歳)・母(28歳)・子(3歳)
今般、父名義でマイホームを購入しました。
しかし、その1年後、父は不慮の事故で他界しました。
父の財産はわずかな現預金とマイホームです。
そこで父名義となっているマイホームを母名義にしたいと思っている。


さて、希望どおり母名義に変更することはできるでしょうか。
まずは遺言が無い場合を考えます。

父が亡くなり、相続人は母と子です。
相続人のうち特定の相続人に財産を承継させる場合は、遺産分割協議が必要となります。
今回の事例では、特定の相続人である母名義にしたいので、遺産分割協議が必要ですが
子は未成年です。
そのため、特別代理人を選任しなければなりません。
特別代理人は親族でもなることができます。
これは家庭裁判所の手続きですが、手間と時間はかかりますが選任されないということはありません。
問題は選任後です。

特別代理人は子のために選任されます。
子は、法定相続分を持っているので、特別代理人はその法定相続分を確保できるように活動します。
これは親族であっても同様です。

具体的には、基本的にマイホームの持分2分の1が子の名義になるような遺産分割協議内容でなければハンコは押せません。
親族であれば事情を察して母名義になるような遺産分割協議内容でも認めてしまうかもしれませんが、
特別代理人の職務は家庭裁判所が監督しています。
そのため、子の持分がゼロになるような遺産分割協議内容では家庭裁判所が認めてくれない可能性が極めて高いです。

つまり、相続人に未成年者がいる場合、特別代理人を選任することで遺産分割協議をすることができますが、
その他の相続人が考えているとおりの協議内容にできるとは限らないので、その点は注意する必要があります。

では、次に遺言があった場合です。
父は30歳と若かったのですが、マイホームの購入を機に公正証書にて遺言を作成していました。
内容としては、不動産を妻に相続させるといったものです。

公正証書遺言の詳細は省略しますが、公証人によって作成された遺言です。
この公正証書遺言があると相続人は妻と子ですが、妻単独の名義へ変更ができます。
相続人のうちに未成年の子がいても妻の単独名義が実現できます。
(なお、遺留分の問題がありますがここでは省略します。)

このように、遺言は高齢の方が作成すると思われがちですが、
場合によっては、若い方でも作成しておいた方がいい場面もあります。
マイホームを購入される方は若い世代が多いかと思います。
子が幼い場合などは、いわば保険として遺言をされておかれてもいいかもしれません。