わくさき日記

千葉県習志野市の司法書士事務所の日常です。

法定相続分の誤解

2022-02-06 00:00:00 | 司法書士
父・母・子ども二人・父の両親(祖父母)の家族で、もし父が亡くなった場合、相続人とその人の相続分はわかりますか?

相続人は、母と子ども二人です。
父の両親(子からすれば祖父母)は相続人にはなりません。

父が自宅などの財産を残した場合、父が生前に遺言を作成していなければ、財産は相続人に相続されます。
つまり、自宅は母と子ども二人に相続されます。

さて、相続人は母と子ども二人なので、計3人です。
では、相続した自宅はどのような割合で相続されるのでしょうか。
次の①~③だとすれば、どれだとおもいますか?

①父と母で築き上げたものなので、母が100%相続する。
②相続人が3人なので、各3分の1ずつ相続する。
③知らないの?法律には、母2分の1・子は各4分の1と定められている。

③は法律を持ち出してきましたのでなんだか正しいような気がしますね。
ちなみに冒頭で相続人について触れましたが、それは法律に定められています。

正解としては、ある意味①~③はどれも正しいと言えます。

まず③の法律について。
これが法定相続分と呼ばれる割合です。
法律には、母2分の1、子2分の1(子が複数なら平等に分ける)と規定されています。
したがって、今回の場合、母2分の1、子は各4分の1となり、③は法定相続分のことを言っています。

しかも、「法定」相続分と呼ばれていて「法律で定められた相続分」との解釈もできそうです。
そうだとすれば法定割合以外の割合で相続したら法律違反になってしまうんじゃないの?
そのような心配をされる方もいます。

でもご安心ください。
相続人のみなさんで話し合いをしてもらえれば、法定相続分以外の割合を定めてもその話し合いの結果が優先されます。
この話し合いのことを「遺産分割協議」などといいます。

ポイントは「相続人全員」ということです。
今回の事例では、母・子二人が遺産分割協議をして①や②のように相続分を定めることもできます。

では、相続人全員で遺産分割協議がまとまらない場合は、どうなってしまうのでしょうか。
その場合は、最終的には裁判所の力を借りることになります。
すなわち、調停や審判(裁判)といったもので、その時に登場してくるのが法定相続分です。

このように、相続分については、法定相続分より相続人全員での話し合いの結果が優先されます。
少なくとも、法律に相続分が定めてあるからその割合で相続をしなければならないというのは誤解と言えます。