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亀山亮写真展 『AFRIKA WAR JOURNAL』

2013-05-03 22:57:28 | 日記


銀座ニコンサロンの亀山亮写真展 『AFRIKA WAR JOURNAL』。
第32回土門拳賞受賞作品展として開催されている。
5月7日まで。
(5月16日から29日までは、大阪ニコンサロンでも開かれるとのこと)
http://www.nikon-image.com/activity/salon/

「久々に土門拳賞らしい写真が受賞した」と喜ぶ声を、複数聞いた。門外漢なりに(最近の他の受賞者への評価は別として)、言わんとされていることは分かる。
なにより審査委員のひとり、内藤正敏(第2回受賞者でもある)が審査の場を離れても激賞らしい。最近、neoneo編集長・伏屋が内藤氏と電話で話したところ、用件そっちのけで『AFRIKA』の凄さについて聞かされ、絶対に見に行けと言われたそうだ。「ひとの写真には辛い内藤さんが、そんなことを言うのは珍しい」とのこと。
実際、内藤正敏の多彩な面のひとつである、モノクロでガツンと人間を剥き出しに捉え、プリミティブな力を1枚に宿す写真は、亀山亮の『AFRIKA WAR JOURNAL』とよく共通していると思う。かの有名な「婆バクハツ!」と同じような緊張と迫力で、コンゴやブルンジ、スーダンの民兵、避難民、拷問されたひと、精神病院に入っているひとの沈黙の一瞬を掴まえている。

僕は今回、取材させてもらうこともあって、ニコンサロンで2度見た。
作品そのものはもう、僕があれこれ言う必要はない。まずもって、技術的なことやプリントの質などへの指摘が出来ない。そこまで気が及ぶほど写真をよく知らないので。
しかし、突き詰めれば、ここにも人間がいる、死と暴力に今まさに向き合っている人間はこんな目をしている、という事実そのものを見てしまうことに価値は尽きる気がする。

『AFRIKA WAR JOURNAL』は、僕たちの暮らしと直接の関係がない。関係なくて良かった、とホッとしてしまう写真ばかりで構成されている。平穏な気分で毎日を暮らしたければ見ないほうがいい、という気さえする。亀山亮の写真を称揚して、アフリカの内戦と混乱の実相を「若い人にぜひ知ってほしい」などと啓蒙的に書きつけるキモチのよい振る舞いは、とても僕にはできない。
見ることそのものに責任が生じる、生じるような気持ちになるような衝迫力を持つ写真群だと言えばよいか。見なくても済むものを見てしまうこと、世界の広さや底の深さは想像以上であると知るのは怖いことでもある。だから「ぜひオススメします」とはパッとは書けないのだが、ただ、この何年かで見た幾つかの写真展のなかでは、ケタが違う。これだけは事実として書ける。

しかし、ニコンサロンの展示自体は、実はけっこう冷静に見た。
ここが初めてだったら、もっと興奮した文章を書いただろうが、あいにく僕は去年の11月、墨田区にオープンしたギャラリー「REMINDERS PHOTOGRAPHY STRONGHOLD」(RPS)の第一回企画展で、『AFRIKA WAR JOURNAL』をすでに見ているのだ。
 http://reminders-project.org/rps/ja/

その時もすごく良くて興奮し、写真集も買ったのだが、RPSというギャラリーの展示がいかに素晴らしかったかは、ニコンサロンと見比べることで初めて分かった。
ニコンサロンの展示がつまらないわけではない。「プリントがとても綺麗」と感心する写真関係者の感想を聞いたし、とても丁寧で正統だと思う。むしろそのおかげで、RPSのありかたが飛び抜けていたのに気づけたのだ。壁一面を覆うような巨大なプリントをしたり、額に入れず天井から吊り下げたり、床に置いたり。空間をフルに活かすというより、写真のための空間にしていた。思い出すと、あれはかなり、贅沢な経験だった。
「REMINDERS PHOTOGRAPHY STRONGHOLD」が、まだ写真愛好家だけに知られている施設にとどまっているとしたら、もったいないことだと、半年経って今更のように思う。お見知りおきを。

そうは言いつつ、RPSと現在開催中のニコンサロンとでは選ばれた写真はけっこう変わっている。
端的に、女性が撮られた写真の割合が増えた気がする。それに、ブルンジの精神病院で撮られたもの。無法集団化した民兵精神に拷問を受けて精神をいため、ずっとベッドにいる人たち。「おんなじ写真だと両方見に来てくれた人に悪いから」と、亀山さんの話す構成変化の理由はシンプルなものだったが、半年で少し深まったものがあるのでは、とも想像している。こういう逃れ方しかできない恐怖と苦痛があると、たまらなく雄弁に訴えながら、しかし息をひそめるような写真が、ニコンサロンではハイライトになっている。


写真展を見られないひとへ。くりかえしになりますが、写真集があります。ここまでずっと展示について書いたけれど、『AFRIKA WAR JOURNAL』はなんだかだ言って、去年の9月にリトルモアから発売された写真集が発表のスタートであり、おおもと。
写真史に残るだろう1冊です。
 http://www.littlemore.co.jp/store/products/detail.php?product_id=843


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