エホバの証人 - Wikipedia
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エホバの証人(エホバのしょうにん、英: Jehovah's Witnesses)は、キリスト教系の宗教組織である。ものみの塔聖書冊子協会などの法人が各国にあり、ほぼ全世界で活動している。
世界本部はニューヨーク市ブルックリン区に置かれている。2016年秋までには同州ウォーウィックへ本部機能の移転を完了させる予定である。聖書は主に新世界訳聖書を使用する。基本信条を否定する立場を取っているため正統教会などからは異端とみなされている。日本においては、キリスト教系の新宗教に分類される。
沿革
- 1879年
- 「シオンのものみの塔およびキリストの臨在の告知者」(現・ものみの塔誌)を創刊。
- 1884年
- シオンのものみの塔冊子協会(現「ペンシルバニア州のものみの塔聖書冊子協会」)がペンシルベニア州で宗教法人として認可。初代会長、ラッセル。
- 1909年
- 本部、ニューヨークのブルックリン区へ移転。
- 1919年
- 「黄金時代」誌(現・目ざめよ!誌)を創刊。
- 1924年
- WBBR(ものみの塔協会所有の最初のラジオ局)が放送を開始。
- 1931年
- コロンバス (オハイオ州)での大会で、「エホバの証人」という名称が採択される。(当時の訳はエホバの證者)
- 1933年
- ドイツのナチス政権下で布教活動が禁止され、多くの信者が強制収容所に収監される。(第二次世界大戦終結まで)
- 1950年
- 新世界訳聖書英語版「クリスチャン・ギリシャ語聖書」(新約聖書)が完成。
- 1961年
- 新世界訳聖書英語版が全巻完成。
- 2013年
- 新世界訳聖書英語版が改訂される。
- 2014年
- JW Broadcastingが開始される。
- 2015年
- 公式ウェブサイトの言語数が700に達する。
組織
統治体、地帯区、支部、巡回区、各会衆という構造になっており、各々に監督や長老といった管理監督責任を担う信者が存在する。
施設については、前述の世界本部のほか、ものみの塔教育センターをニュージャージー州パターソンに、ものみの塔農場をニューヨーク州オレンジ郡ウォールキルに有する。
また、世界96ヶ所に支部事務所が、239の国や地域に約11万の会衆が存在する。
聖書
歴代会長3名を含む統治体成員5名からなる「新世界訳聖書翻訳委員会」により翻訳された新世界訳聖書を使用する。かつてはキリスト教会と同様、一般に入手可能な聖書を使用していた。例えば、英語圏ではジェイムズ王欽定訳 (KJV) とアメリカ標準訳 (ASV) を、日本では舊新約聖書(日本聖書協会文語訳)を使用していた。
統計
2014年の公表値によると、エホバの証人の全世界での伝道者数は約820万人である[2]。日本においては2014年度時点で平均21万5,292人、最高21万5,703人であるという。
教義
神の名
旧約聖書にみられる唯一神エホバを崇拝の対象とする。原文に近い聖書写本には、神の固有の名として神聖四文字語יהוהと記述されており、YHWHもしくはJHVHに相当する。しかしながら、子音字のみで母音がないため古代イスラエル人がどのように発音していたか定かではない。「エホバ」という発音は、欽定訳聖書(1611年)やアメリカ標準訳(1901年)などでJehovah(発音記号:dʒɪhóʊvə)、また日本でかつて広く使用されていた舊新約聖書文語訳(日本聖書協会)でヱホバ(旧仮名遣い)として使用されてきた。これに対し、学術的にはヤハウェ、ヤーウェなどの表記・読みがなされ、学説ではヤハウェであろうとする説[要出典]が有力である。
神の王国
- 1914年を起点に、天でイエス・キリストを王として設立した。
- キリストの再臨は「しるし」であり、目には見えない。
- エホバの証人が全面的に支持し到来を期待している新しい社会、またそれを実現する政府。
- 現在、地上は統治していないが、近い将来にハルマゲドンでのあらゆる宗教組織、あらゆる政治組織などの排除絶滅をもって開始される。
- ハルマゲドン後、地上は千年の時を経てかつて創世記に記述されているような楽園に回復される。
- 楽園を回復する作業を行うのは、ハルマゲドンを生き残った者、復活された者たちである。
主な聖書解釈
- 神の名はエホバである。(読みはヤハウェの可能性も含め定かではないとしている)
- イエスは神の子であり、神ではない。
- 聖霊は、神の活動力を指す。
- エホバの証人は1世紀のクリスチャンの復興である。
- 最初のエホバの証人はアベルであり、古代イスラエル人も一国民として神に献身しておりエホバの証人である。
- キリストの使徒が死に絶えた後、初期キリスト教で背教が起こり、後にカトリックを始め多くの教派が生じた。
- 血を避けるべきという聖書の記述は、故意に血液を食するだけでなく、体内に取り入れる行為輸血を避けることも含まれる。
- 人は死ぬと存在しなくなる。
- 復活は「天への復活」(14万4千人)と「地上への復活」の2種類がある。
行動様式
- 政治への参加(立候補及び投票など)は行わない。(政治的に中立)
- 戦争に参加せず、兵役につかない。(良心的兵役拒否)
- 格闘技に参加しない。
- 信者間を称号で呼ぶことはなく、互いを兄弟または姉妹と呼ぶ。
- 他の宗教の冠婚葬祭に出席するか否かは「個人の良心」として各信者に委ねられているが、宗教的な事柄が関係する場合、事実上出席できない(ものみの塔2014年11月15日号)。焼香などは、宗教合同や偶像崇拝とみなし避ける。
- 教会や寺院などの宗教施設で開かれる葬儀や結婚式への参列は、参加できない。(ものみの塔2014年11月15日号)
- 反聖書的・異教由来とみなす行事は祝わない。七夕、節分、ひな祭り、キリストの誕生日といった宗教的背景のある行事を祝わない。
- 宗教系の保育所や福祉施設・病院などを利用については、信者個々の良心上の問題とされている。
- 国旗敬礼(旗に対する専心)や国歌斉唱(国家の賛美)などは、国家崇拝つまり偶像崇拝にあたるとしている。
- 淫行、姦淫、マスターベーションなどを汚れた行為と見なしている。
- 喫煙、医療目的外の麻薬・薬物使用は汚れとして禁じられている。
- 飲酒に関しては、適量であれば禁じていない。
- 原則、離婚及びそれに伴う再婚は禁止である。ただし、配偶者の不倫による離婚、配偶者との死別による再婚は認められている。
- 教義に著しく反した場合、当事者に対し審理委員会(聴聞会)が開かれ、一定期間の活動の制限や資格の剥奪などペナルティーが科せられる。なお、悔い改めが認められない場合は排斥措置(いわゆる共同絶交)が執られる。なお、排斥措置後に悔い改めたことが認められた場合は復帰を認められる。
年間行事
- キリストの死の記念を祝う。(主の晩餐に相当)
- 週に2回、集会を行う。(公開聖書講演会・「ものみの塔」研究、クリスチャンとしての生活と奉仕の集会)
- 上記以外に地区大会(年1回)、巡回大会(年2回)が催される。
- 毎回の大会において、当事者に対しバプテスマとして浸礼が行われる。
主流派キリスト教会からの批判
教義には共通する点もあるものの、基本信条など中核をなす部分で相容れない。エホバの証人は聖書に基づいた教義であるとする一方、他のキリスト教会などからは「異端」もしくは「キリスト教ではない」「輸血拒否により命を軽視している」「聖書を改ざんしている」などと批判もある。
社会的側面
国旗・国歌
エホバの証人は国旗敬礼、国歌斉唱を行わない。国旗への敬礼、国歌斉唱は、国家崇拝に該当すると判断している。また国旗・国歌は偶像であり、これへの敬礼は偶像崇拝であるとする。
兵役拒否
「戦いを学ばない」「剣を取るものは剣によって滅びる」という聖書の記述を理由に兵役を拒否する。兵役が義務化されている国々で問題視されることがある。国家はそれに対してエホバの証人を投獄するのが一般的である。近年では、良心的兵役拒否が人権の一つとして認識されるようになってきたことから、社会奉仕活動への参加を義務付けることによって、兵役の義務の代わりとする事例も増えている。場合によっては投獄ではなく、「兵役」か「処刑」かのどちらかの選択を迫られることもあったが、その場合にも処刑されることを選んだという(エホバの証人とホロコースト参照)。
政治
政治的中立を主張している。王国政府のみに対する全面的支持の表明などを根拠とし、この世の政治活動に直接関与すべきではないという姿勢をとっている。
輸血拒否
血を避けるべきとするいくつかの記述が聖書中にある。エホバの証人は、これらを輸血禁止の意味に解釈している。(キリスト教からは教派を問わず異論がある)
- 使徒15章20節
- 「絞め殺した動物の肉と、血とを避けるよう」(新共同訳)
- 創世記9章4節
- 「ただし、肉は命である血を含んだまま食べてはならない」(同上)
また、代替治療として無輸血治療を望み、自己輸血や血液分画の使用については各人の良心に基づいて決定するとしている。
裁判・法的規制
バーネット事件
米国ウェストバージニア州で、星条旗への忠誠の誓いを拒んだ女性信者の姓にちなむ行政訴訟。1943年6月14日、米最高裁判所はエホバの証人の子弟を放校する権利は教育委員会にはないという判断を下し、勝訴が確定した。
川崎学童輸血拒否事件
1985年6月6日、小学生の男児(当時10歳)が神奈川県川崎市高津区で交通事故に遭い、両親が輸血拒否したことにより死亡したとされる事件。 裁判所から略式命令が下され、児童の両親は無罪、運転手が業務上過失致死罪で起訴され罰金15 万円の有罪となった(川崎簡略式 昭和63.8.20)。 この事件で、法曹、宗教、医療の各界で大きな論争を引き起こした。
神戸高専剣道実技拒否事件
必須科目であった剣道の科目を履行しなかったことで退学または留年処分になったことの是非が争われたケースで、1996年3月8日、日本の最高裁判所は、学校側が主張する剣道の必須性を退け、格闘技を拒否された場合の代替措置を用意しなかったことは、学校側の落ち度であると指摘し、退学または留年処分は不当であるとの判決を下し、勝訴が確定した。
性的児童虐待
2012年6月13日、カリフォルニア州のアラメダ上級裁判所(一審裁判所)で行われた裁判で、当協会は約800億円相当の協会の資産の凍結を命じられ、賠償金280万ドル(22億円)の40%を支払うように命じられた。判決によると、エホバの証人の男性信者が当時9才だった少女に1年の間性的虐待を加えているという通報を知りながら、罪を立証するには2人ないし3人の証人が必要との教理(コリントの信徒二13:1)が結果的に警察へ通報を妨げることになり、長老たちが決定した組織的な隠蔽であり違法との判決に至った。その後、エホバの証人側は同州控訴裁判所(二審裁判所)に控訴の後、原告側と和解した[1]。なお同様の事件が、イギリスや、オーストラリアでは1600人以上の被害の隠蔽など、多数報告され、国による調査や告訴がなされている。
過去の法的規制
兵役や国家に対する忠誠の拒否などで処罰されたものある。エホバの証人は「彼らはその剣をすきの刃に、その槍を刈り込みばさみに打ち変えなければならなくなる。国民は国民に向かって剣を上げず、彼らはもはや戦いを学ばない」(イザヤ書2章4節)という聖書の記述に従ってであるが、当該国の軍事当局から見れば従軍拒否などはあくまでも法令違反とされる場合がある。代表的な事例として、ナチス・ドイツにおいて兵役を拒否したためにより強制収容所に送致され多くが処刑された出来事などが挙げられる(エホバの証人とホロコースト)。現代でも一部の国々で同様の事例が存在する。
カルト・セクト指定
日本においては指定されていないが、いくつかの政府はカルトまたはセクトと分類しているケースがある。例として以下の政府・議会報告が挙げられる。
- ベルギー議会調査委員会(1997)
- フランス国民議会委員会報告(1995)(フランス国家警察の情報機関総合情報局が、複数のカルト監視グループと編集)
- フランス国民議会委員会報告(1999)(カルトと金銭に関するフランス議会報告、30数団体にし注意を集中させ調査した)
詳細は「政府の文書によってセクトと分類された団体一覧」を参照
題材作品
ドラマ
小説
- 『羊飼のいない羊たち』 - 1984年、津山千恵。第二次大戦中の灯台社と良心的兵役拒否を貫いた明石順三の生涯。明石は戦後、教団に対して出した公開質問状の内容が「反逆」と見なされ、排斥されている。
- 『説得―エホバの証人と輸血拒否事件』 - 1988年、大泉実成。1985年6月に神奈川県で実際にあった小学生の輸血拒否事件を基に、ある信者家族の信仰と生命の尊さを巡る葛藤を一人のルポライターが刻銘に綴ったノンフィクション小説。1993年にTBSでドラマ化され話題になった。
映画
・『あかぼし』朴璐美主演。ものみの塔をモデルにしたカルト宗教にハマっていく母子を描いた作品。
エホバの証人の出版物など
- ^ ものみの塔聖書冊子協会(エホバの証人) JW Broadcasting
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