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プラムフィールズ27番地。

本・映画・美術・仙台89ers・フィギュアスケートについての四方山話。

◇ 高野史緒「アイオーン」

2007年09月17日 | ◇読んだ本の感想。
以前「ムジカ・マキーナ」を読んだ時はパラレルと書いたけれども、この本の裏表紙に
歴史改変小説とあって、この方がピンと来た。今回のこれも、舞台は中世で
しかし最終戦争後という設定。ありがちではあるけれど、技術文明が遺物になっている世界の話。

薀蓄の皮を厚く被ったエンタメ。(これは一応いい意味で。)
何しろ最後の方は、何となくナウシカを彷彿とさせるような巨人たちとの戦いまで行ってしまうし。
結構無茶ですね、話はね。時代ぐちゃぐちゃだし。
でも今回はわりあいに話のなかに入って読めた。高野史緒3作目だけど、目下これが一番かな。

かなりのごった煮だから、基本的には嫌いな系統な気がするんだけどね。
何しろキリスト教、東ローマ帝国、パルミラ、アーサー王、その他色々に加えて
技術文明云々のパラレル部分が入ってくる。キャラクターも登場のバランスが実は悪い。
……1から始まって10で収束するお行儀のいい小説を是とするわたしにとっては、
どこが好きなんだか我ながらよくわからない。
嫌いなものはここがイヤと言えるけれども、好きなものをここが好きというのはなかなか難しいよ。



読後考えると、コノヒトはなんでこんな話を書きたいのかわからないなー、と思う。
まあ書きたいものは理由なく書きたいものでしょうが。しかし何か非常に執着を感じますよね。
史実とフィクションの融合に。というより歴史と現代技術の融合に。
この組み合わせに執着するのはごくごく少数だと思うのだが……
それにしてもアーサー王を少女に設定するとかは。わたしはイヤだね、この類は。

そう思うのに、読んでいる分にはすらっと読めるんだから、やっぱりどこか良いところがあるんだよ。
それはじっくり描きこまれた薀蓄そのものなのか。それともその書き込みを支える作者の熱意なのか。
うーん。熱意がありゃいいってもんでもないけどね。
どこに惹かれているかは正直わかりません。道具立てが好みなのは確かだけれども。


プロローグは、実はやばいと思った。あまりにもとっつきにくくて……。一体読み終わるまで何時間かかるんだ?
この人の作品は、前2作もそうだけれども、冒頭がけっこう読みにくいんだなあ。
もう少し導入部を何とかした方がいいと思う。3作品共通の弱点だもん。
ここで残念ながら不器用さを感じる。惜しい。本文は普通の速度で読めたけど。

でもこういったところが今後劇的に改善されることはなさそうだ。作者は、そういう方向を
目指してないと思うんだよね。彼女がしたいのは……愛しいあれやこれやを、自分の好きな色を
存分にまとわせながら(歴史改変小説という免罪符によって)書き綴っていくことのみだと思うよ。
うん。やっぱりある種のフェチですな。



アイオーン
アイオーン
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高野 史緒
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