goo blog サービス終了のお知らせ 

プラムフィールズ27番地。

本・映画・美術・仙台89ers・フィギュアスケートについての四方山話。

◇ ジェレミー・マーサー「シェイクスピア&カンパニー書店の優しき日々」

2020年07月02日 | ◇読んだ本の感想。
これはカナダ人の元ジャーナリストが失職して自分探しの旅(……)に出て、
パリで出会った不思議な、というか、変でとっちらかった書店兼聖域の話。

パリにシェイクスピア書店?と若干不思議なんだけど。
でもパリにある英語書籍専門店だというから納得。店主もイギリス人。
乱雑でアメーバのように増殖した店で、階上には人が泊まれる隙間と
居候たちが書く隙間、キッチンなどもあるが全体的に超汚い。

来る人は拒まず、泊まりたい人は(店主のジョージの気に入れば)誰でも泊まれる。
長い人は何ヶ月か何年かいたり……その間に文学的な成功をつかむ人もいれば、
母国へ帰ったり、他の国へ行ったり、出て行ったり、帰って来たり……
文学的ボヘミアンたちのアジールとして存在している。

「書店という名を借りたシェルター」という存在。
ヘンリー・ミラーやヘミングウェイも常連だったという店。


何に驚いたかって、この本を書いたジェレミー・マーサーは2000年くらいに
数か月この書店に滞在して、その経験を基にして書いたらしいんだけど、
……これがとても2000年の話とは思えない。

1950年代とかその辺の話かと思うよ。
2000年だって今からすれば20年前の話だけど、20年前といえば、
パソコンだってそろそろどこにでもあった時代だよね?

会計システムの確立もしてなければ、近所の店の利用法もゆるく、
2000年の世間はこんなに緩かったかねえ。
別な世界のことだとしか思えない。


驚くべきは、2010年に日本語版が出版された時点ではまだこの店は現役で、
……実は今もあるそうです。
2000年の段階でも(その内容にも関わらず)有名な観光地だったらしいけど、
現在も立派な観光地。

現在は娘が(最後、本にもちょっと出て来る)店主として切り盛りしているらしい。
娘の代になってからはさすがに破天荒さはなりを潜めて、
最近は本屋のとなりにイマドキのカフェをオープンしたそうだ。
もう詩人たちを泊めたりはしていないんだろうな。そんな時代じゃないもんね。


破天荒だった時代の店を覗いて見たかった気がする。
天下のおのぼりさんとしてね。

面白い本だった。面白い店だった。





コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« < 今期のつまらなかったア... | トップ | 89ers、2020-21シーズン、始動! »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

◇読んだ本の感想。」カテゴリの最新記事