プラムフィールズ27番地。

本・映画・美術・仙台89ers・フィギュアスケートについての四方山話。

◇ 筒井康隆「旅のラゴス」

2023年08月15日 | ◇読んだ本の感想。
ネット上の個人記事でおすすめされていたので(←約8年前)読んでみた。

筒井康隆は何十年か前に読んでいる。家にあったから。
でも癖がある作風だし、手あたり次第に読んだという感じではないな。
好きそうなものを読んでみた程度。20冊は読んでない。
面白いけれども好きではない作家。
逆かもしれない。若干親しみは感じるんだけれども、何でも好きだとは言えない作家。

今回のこれは、わたしが今まで読んで来た筒井康隆とは違ったね。
かなり普通の話だった。いい意味で普通。面白く読んだ。
こういうのをたくさん書いていればもっと多くの人が読んでたかもしれないなー。

筒井康隆といえば、ひと頃のSF小説界では三巨人の一人だったけど、
(それはそれですごいが)誰もが読んでる作家ではなかった。
それもそれで良かったかもしれないけど。狂気をエンタメの道具に出来る
作家は不世出だと思うし。

今回は設定もおとなしかったよね。
設定はかなりシンプルで、ある目的をもって旅をする、ラゴスという名前の男。
彼が遭遇する数々の冒険譚。短編集に近い長編。

読んでる時はさほどではなかったが、読後に振り返るとどこか「オデュッセイア」とか
「古事記」「アラビアンナイト」とかの流離譚の系譜を感じる。
どこが、というとわからないが。

基本的にはファンタジー。
たまーに「転移」などのSF的な設定も出て来るが、そんなに活用されてなかったかな。
短編(?)2つくらいに出て来ただけ。
もう少し活用しても良かったと思うけど。

面白かったのは設定だね。ありそうであんまりない「旅の目的」。
無理めな部分もあるので、冷静に考えればそこまでではないが面白く読んだ。
……こういう「設定が面白い」系は、昨今「設定だけが面白い(あるいは面白くない)」
に変化していると思うから、あまり設定を褒めたくはないが。

でもわたしは実は、最後の終わり方がわからないのよね。
最後のあの人があの人じゃないの?と思って読んだんだけど、
あの人だというはっきりした書き方になっていなくて。
あの人だとしたら、さすがにもう少し書かないとねえ。

わたしが読んだのは1986年の徳間書店版だが、この表紙は話に合わないと感じた。
装丁家はずいぶんさっくり読んだだけで仕事をしたんじゃないかね?
表紙と中身の乖離は作家にとっても読者にとっても不幸だから、
こういう仕事は残念だ。


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