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◇ 津本陽「新釈 水滸伝 上下」

2024年01月11日 | ◇読んだ本の感想。
全19巻?20巻?の北方謙三小説は読める気がしなかったし、
全10巻の岩波文庫版の全訳も読めるとは思わなかったので、
無理があると知りつつ、上下巻の津本陽小説。
本来は長い長い話の筈なので、この短さで何かわかるのだろうか。

しかしまあ短いのを読んで正解。……なんだろうね、多分。
そこまでツラくはなかったけど、読んで面白みは感じなかった。
まあ古典なんてそういうもんですよ。よほど幸運じゃないと面白くはならない。
上下巻、しかも話が途中で終わる。それで水滸伝を語るわけにはいかないだろう。



それを重々承知で言わせてもらうが、こういう民俗的な発生の話って、
どういうところが魅力なんだろうね?
その破天荒さ。……それはそうなんだろうけど、ちょっとわたしには理解しがたいんよなー。
「西遊記」なんかと同じで語り物派生だと思うんだけど、
こういうのは耳で聞いてると盛り上がって面白いんだろうか。

読書だとどうしても気になりますよね。
「これはむしろこっちの方が悪人なのでは……」と。
酒を飲んで大暴れする人がいたり、そもそも生業が追いはぎだったり山賊だったり、
密貿易商人だったり、別に全然義賊らしいところも出てこないしねえ。

ひたすら「好漢」「好漢」と連呼しているけど、どこらへんが好漢なのか教えて欲しい。
ほぼ悪者ですよね。皆殺しにしちゃうし、人肉を喰ってしまうし。
真面目に務めているお役人さんの方がよっぽどいい人たちである気がする……。

まあ元々は、「腐敗した世の中に対して、36人の同志とともに蜂起した宋江という人がいた」
という史実(これだけが史実)から始まった話らしいけど。
そこにあることないこと肉付けされまくって水滸伝になったようだ。
だから史実ではないとも言い切れないけど、内容はほぼ伝奇。99%伝奇。

こういう話を喜ぶ心性とは、と考える。

民衆が好きなのは勧善懲悪なんじゃないかと思うんだけど。
その場合、お上が悪どいことをして、それに対する反抗として立ち上がれば
まあ勧善懲悪、義賊として成立するのよ。
でも水滸伝はたしかにお上に対する反抗という側面はあるんだろうけど、
お上よりも、本人たちの方がよっぽどしっちゃかめっちゃかで迷惑な気がするんだよなあ。

水滸伝に対応するものとして、本朝においてはわたしは「里見八犬伝」くらいしか
思いつかないのだが、あれも相当に極彩色だとはいえ、誰が善なのかははっきりしてる。
だが水滸伝の「好漢」たちは、本当に好漢なのだろうか……


……とはいえ、何しろ20巻とか10巻とかのボリュームの話を上下巻で書いてるんだからね。
しかも途中までしかないし。
ちゃんと真髄を描けているのかは、全訳を読まないと判断できないだろう。
しかし申し訳ないが、全訳を読む気にはなれません。
これで読んだ気になられては水滸伝さんもご不満だろうが、これで終了とさせていただきます。



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