Yummy Yucky
さわやかな5月。今月は赤ちゃん向きの絵本を選んでとりあげます。
レスリー・パトリセリ作の"Yummy Yucky"(おいし~い!まずいっ!)は、おそらくアメリカの赤ちゃんが生まれて初めて読む絵本のひとつ。アメリカではBoard Bookと呼ばれている、赤ちゃん向きの厚紙の絵本です。
アメリカでは出産のお祝いを、"ベイビーシャワー”というパーティ形式のお祝いの会にして、赤ちゃんが生まれる前にする習慣があります。出産予定の女性を囲んで女友達がプレゼントを持ち寄って集まります。"Yummy Yucky"は、そんなとき、たいてい誰かしらがプレゼントに添えて持ってくる絵本の一冊です。
「おいしい」という言葉はたいていの赤ちゃんが人生で最初におぼえる単語の一つではないでしょうか。だって、ほとんどのお母さんは、生まれたその日から、赤ちゃんにおっぱいやミルクを上げながら、きっと「おいしい?おいしいわねぇ!」と話しかけているに違いありませんものね。このおいしい!を英語でいうとYummy!です。
英語のYummyはいわゆる子ども言葉ですが、大人になっても日常の砕けた会話ではよく使う単語です。子どもの言葉ですから、大人がわざわざYummy!と言うときには、ただ淡々とおいしいというだけではなく「わぁ、おいし~い!」という感じがこめられています。
一方、YuckyはYummyとは対極的な表現で、「うわっ、まずいっ!(ぺっぺっ!と吐き出したいくらいの感じ)」というときに使います。日本語で言うと「やだ~!気持ち悪~い!(最近は『きもい』って言うそうですけど)」というような時にも使います。
さて、"Yummy Yucky"の絵本は、食べておいしいものと、気持ち悪くて食べられないようなものを見開きページに対比的に並べて、見開きごとにYummy! Yucky!と楽しく大声で叫ばせるデザインの絵本です。
「スープはおいしい!」「ソープ(石鹸)はまずい!」という言葉遊び風の対比もあれば、「スパゲティはおいしい!」「ミミズはまずい!」というようなよく似たもの同士の視覚的な対比もあり、「ブルーベリーはおいしい!」「ブルーのクレヨンはまずい!」という色での対比もあるというような、大人にはちょっと意外な組み合わせ。
可愛いイラストとシンプルな文章の繰り返しで、赤ちゃんも幼い子も十分楽しめますし、言葉が出るようになると、きっと暗唱して一人で読めてしまうこと請け合いの絵本です。
ところで、最近のアメリカの育児熱心な親たちのトレンドは菜食の推奨。食べ物をめぐる絵本の読者評には、たいてい「もっと野菜を食べるところが出てくるとよい」という書評が寄せられています。案の定、この"Yummy Yucky"のAmazon.comの読者レビューにも「Yummy!の例に野菜が出てくればよいのに!」と言うコメントが寄せられています。