お母さんと読む英語の絵本

読み聞かせにぴったりな英語絵本から、米国の子どもたちの世界をご紹介
子どもをバイリンガルに…とお考えのお母さんに

うさぎといえば‥‥

2009-05-05 | about 英語の絵本

The Tale of Peter Rabbit

「ピーター・ラビットのお話 - The Tale of Peter Rabbit」は、1902年に刊行されて以来、世界中で4000万部以上も売られ、なお現在も売れ続けているベアトリクス・ポッターのベストセラー絵本です。

お話を読む機会がなかった人も、ピーターの名前や、いかにも”英国少年”風のブルーのジャケットを着たピーターのイラストにはきっと親しみがあると思います。ピーター・ラビットの絵本の根強い人気は、こまやかなタッチとやさしい色づかいの、このイラストにあると言っても過言ではないと思います。作者のベアトリクスは小さいころから水彩画を習っていて、たくさん飼っていた自分のペットたちをモデルにして描いたイラスト付きの絵本を何冊も書いていますが、中でも、このピータ―・ラビットは出色。このお話の一節と挿絵を焼き付けたウェッジウッド社のお皿やカップは、出産や赤ちゃんの1歳のお誕生日のギフトに、世界中で人気のロングセラーです。

子ウサギのピーターは4人きょうだいのうちのたったひとりの男の子。女の子たちはそれぞれフロプシー、モプシー、コットンテールという名前でした。4人はお母さんと一緒に木の根っこのおうちに住んでいます。ある日、お母さんがお買い物に出かけます。「おとなしくお留守番しているのよ」と言いきかされたのに、ピーターは言いつけを守らずにマグレガーさんの農場に行き、畑の野菜を食べてしまいます。お母さんから、いつも「お父さんは、マグレガーさんの農場で”不慮の災難”にあって、ウサギのパイにされてしまったのよ。だから、マグレガーさんの農場に行ってはいけませんよ」と聞かされていたのに・・・。

おなかいっぱいになったピーターは「最後にパセリで口直し・・・」と欲を出し、ついにマグレガーさんに見つかってしまいます。怒ったマグレガーさんは鋤をもってピーターを追いかけてきます。さぁ大変!ピーターは必死で逃げます。

逃げる途中、ピーターは、野菜畑では靴をなくし、スグリ畑では網に引っ掛かって抜け出せなくなってしまいます。マグレガーさんはどんどん迫ってきます。あぁ、どうしよう!ピーターは上着を脱ぎ捨てて、やっと網から脱出。今度は納屋に隠れますが、今度はくしゃみを我慢できずに見つかってしまい・・・その後も、さんざん怖い目に遭っては、そのつどやっとの思いで窮地を脱し、ようやくおうちにたどり着いて、床に倒れ込む・・・というハラハラドキドキの冒険譚。

その晩、3人の女の子はパンとバターとブラックベリーのおいしい夕ご飯を食べましたが、ピーターはご飯抜きでベッドに入り、薬湯のカモミールのお茶を飲まなければなりませんでした。

一方、怒ったマグレガーさんは、見せしめと脅しのために、ピーターの靴とチョッキを着せた案山子を畑に立てました。でも、そんなものなくても、ピーターはもう二度とマグレガーさんの所にはいきませんでしたけれども・・・。

「ピーター・ラビットのお話」は、そもそもは、知り合いの小さな男の子が病気になった時に、その男の子をなぐさめるためにベアトリクスがお見舞いの手紙に添えて贈った手作りの「お話」でした。全編がやさしい語り口の文章になっているのはそのため。のちに友人の薦めで出版されることになって、世界中に愛されるベストセラーになりました。

貴族の娘だったベアトリクスは、当時のならいで学校には通わず、両親やきょうだいとも親しい交流のないまま、自宅で家庭教師や乳母によって育てられました。「ピーター・ラビットのお話」を贈った男の子は彼女を育てたガヴァナーのひとりの息子でした。

ベアトリクスは生涯に23冊の児童書を書いていますが、いずれも動物が主人公。登場するひとや動物たちには、みな実在の、時には同名のモデルがいたようです。動物たちはベアトリクスが飼っていたペットたち。ちなみにピーター・ラビットはベアトリクスが子ども時代に飼っていたウサギの名前。そして、怖い農夫のマグレガーさんのモデルはベアトリクスの一家が夏を過ごす別荘があった村の実在の人物、といわれています。

実は、ベアトリクスその人も、彼女の人生も、実に素晴らしいのです。これは稿をあらためてご紹介します。


コメント
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