シリコンバレー育ちの娘には七五三のお祝いをしなかった。母と姉がわざわざ日本から晴れ着を贈ってくれたことを思い、今でも申し訳ない気持ちになるのだが、シリコンバレーには、子どもの来し方の無事を感謝し、行く末を祈願すべき「神社」がなかったからだ。
七五三のような行事はないけれど、こちらでは、子どもが「ひとり立ち」する節目の年齢の誕生日をBig Birthdayと呼んで、ちょっと派手にお祝いする。
親と子という関係からみて大きい変化は13歳と16歳。13歳になると子どもは初めて「一人で」行動することを法律で認められ、16歳になると運転免許が取得できる。
日本の方は驚かれるのだが、こちらでは満13歳になるまでの子どもは、文字通り24時間365日誰かのリアルな監督下に置かれていなければならないと法律で決まっている。一緒にいられないときには、親は誰かベビシッタ―を手配しなければならない義務があるのだ。だから、13歳未満の子どもには「ひとりでお留守番」なんて概念はない。もちろん学校も親が送り迎えするのがあたりまえ。子どもがひとりで歩いて学校から帰ってくる、なんてことは、「法律的にありえない」のである。
さて、13歳を過ぎたら一人で行動してもよいとはいえ、文字通り車社会のアメリカでは、車がなければほとんどどこにも行かれない。ティーンエイジャーが一人で留守番できたってしょうがない。たとえば、映画館でデートすることはできるのだけれども、その映画館までは親に送ってもらうしかない。やれやれ。
・・・というわけで、子どもも親も運転免許のとれる16歳が待ち遠しい。免許証のとれる16歳が、まさに一人立ちのBig Birthdayなのは、そういう事情である。
そんなBig Birthdayをアメリカのマーケットが放っておくはずはなく、あの手この手でパーティ・プランの売り込みがある。
思いだすと、娘の同級生の誕生会にも「さすがシリコンバレー!」という派手な会があった。
お父さんの自家用ジェットに同級生を乗せてアナハイムのディズニーランドに飛び、そこで16歳の誕生日をお祝いした子。この日帰りパーティに招待された12人の女の子の親たちは「万一飛行中に事故があってもかまいません」という承認書に複雑な思いでサイン。もちろん子どもたちはものすごく楽しんだのだけれど。
赤い大きなリボンのかかった真っ赤なスポーツカーが、誕生日のちょうど下校時刻に学校に配達された子もいた。もちろんサプライズ・ギフト。これには、本人も友達も大興奮!そりゃそうだよね。
もちろん、皆が皆こんな風に派手なわけはない。娘の親友に私が上げたプレゼントはスパのギフトカード。その名もスイート・シックスティーン・パッケージといい、ヘアカットでも、ネイルでも、マッサージでも、お好きなメニューを友達と二人でおしゃべりしながら楽しんで!というもの。
このあたりが平均的なところ。それでも、16歳の女の子二人は、日曜日の日がな一日、近所のスパで思う存分おしゃべりに興じて満足だったらしい。
今日はgooトラバ練習板のために書きました。今週のお題は「七五三の思い出」です。