市役所のトイレに下水処理場がまだじゅうぶん稼動していないので、という貼り紙があった。
流域下水道というのがある。大きな川の河口に下水処理場を作り、河川にそって作られた下水網で汚水を一括処理するものだ。
私自身はこの流域下水道一辺倒の流れに抗して、合併処理浄化槽による下水処理の設計のお手伝いをしてきた。 一言で言えば汚水は発生源のすぐ近くで、飲める程度になるまで処理をして河川や土壌に返せば合理的だ。大規模なものを集中して作るより、小規模分散をという思想だ。
小規模分散であれば街全部の汚水処理ができなくなるような事態はないはずだ。
が、まだ気仙沼市の下水処理場は稼動していない。
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仮設住宅の話も続けよう。
浦島小学校の仮設住宅、阪神の時と同じタイプだ。冬は寒いだろう、なにか考えないといけない。
阪神大震災のときに西宮市では湿気でナメクジの大量発生ということもあった。
行政は津波についてなんの準備、教育や広報もしてこなかったのかというとそんなことはない。
道路の「これより津波浸水想定区域」の看板は4年前の設置だ。写真のような警告看板などもあちこちで見られる。
備えはあった。備えはあったのに、気仙沼市だけで10月18日現在
死者数: 1,027人
行方不明者数: 372人
住宅被災棟数: 14,437棟(8月31日現在)
被災世帯数: 9,500世帯(4月27日現在・推計)
の被害だ。気仙沼市は人口約7万人、西宮市が48万人だから7分の1ほどか。その西宮市で阪神大震災の死者が1146名。比較すると上の数値の重みが伝わってくる。
「想定外」などという妙な言葉が幅を利かしているが、誰かがある想定をして線を引いている。想定ラインというのが存在するのだ。
建築の構造設計でも、限界耐力計算などという計算をするとこの「想定ライン」、たとえばごくまれに起きる地震により建物に作用する水平力、これを決めるのは設計者の仕事だ。
自分である想定をするのだから「想定外の地震で・・・」などという言い訳は通用しない。
では津波対策の想定は誰がどのようにしたのか? これを調べるのもこれからの課題だ。
各地で道路の嵩上げ、流された橋の仮設橋による架替がおこなわれていた。 建築屋としては土木屋がうらやましい。 橋を架ける、土地を嵩上げする、高台に宅地を作る、目の前に仕事の結果が示される。建築屋とはスケールが違う。
(気仙沼漁港のほとんどの道路は嵩上げがおこなわれていて、車で通行できる)
いったい建築設計者に何ができるのか?
この思いがどうしても頭から離れない。人に会っても、カバンの中の老人のためのグループハウスの図面は出せずじまいだった。
建物について相談していただきたいが、地元の方の仕事のじゃまになってもいけないなどとも思う。
これもまた私の宿題とするしかない。
まだまだもっと深く調べて書かなければいけないこともあるだろう。 いや私自身がもっと考えなければいけないことがある。
が今日はこのへんでカンニンを。
(終わり)