尾崎 慎 の 彫刻ライフ

石彫刻家尾崎慎の作品の紹介や、展覧会情報、これまでに起こってきたエピソードや日記など様々な事を綴って行きます。

スウェーデン滞在記   その.5

2009-09-16 04:44:58 | 彫刻家の書く小説(スウェーデン滞在記)
当時私が借りていた車はスウェーデンを代表する車の一つサーブだったのだが、型が古かったのかハンドルはとても重く、小回りを利かせるのも一苦労という感じだった。
この車で工場まで10分と掛からない距離に有ったのだが、この道中様々な動物に出くわした。
楢葉氏の家は大自然の中といった感じで、隣りの家などただの一件も見えない環境の中にあったので、当然動物達の楽園でも有ったのだ。
この道中毎日のように出会うのがキャニーンと言う地本の人が言っていた野兎だった。日本に住んでいる野兎と殆ど同じ種類のようだった。また名前を忘れてしまったのだが、1m近い大きさの兎もいて、これには驚かされた。
シカも普通によく見掛けたが、この中でもムースという大ヘラジカは凄い迫力が有って、大きさは馬にデッカイ角をのっけた感じで、道に悠然と立ち塞がり、一行に動こうとせず、こちらをゆっくりと睨みつけ、また草を食む。

これらの動物達はしばしば食卓に上る事が有ったのだが、大抵は煮込んだ物だった。
キャニーンは鶏肉のようでとても食べ易く、良かったのだが、デッカイ兎は臭みが強くちょっと食べ難かった。
シカもよく食卓に上がったのだが、これらは近所に住む猟師さんから廻って来たようだ。
この近所でもシカがドーロに出て来て撥ねられるといち早く猟師が駆け付け、内臓から順番に無くなるらしい。この中でもレバーはパティにするには最適らしく、これらもパンなどに付けて食べる。
スウェーデン人の食材は主食がジャガイモで、一見ヘルシーなように感じたのだが、このジャガイモのせいで、スウェーデン人は二十歳を過ぎるとブクブクと肥ってしまうらしい。女の子も二十歳前の子はとても綺麗な子が多い感じがしたが、それ以後の子は皆肥っていたような印象を持ったのはそれを聞いていたせいだろうか?
ここの近くには湖も多くあり、夏になると湖畔で日光浴をして過ごす光景がよく見られたのだが、ここでは女の子も皆トップレスで過ごす。
普段からヌードデッサンなどで、女の体なんて見慣れているはずなのに、ここでは全く自然の中で過ごす日常の光景に置かれた女達の体を見るのは、とても新鮮で、しばしば湖畔に行き見ていた。彼等にとっては日常でも私にとっては全て非日常の日々だった。

私が作った作品も少しずつ溜ってきた或る日、楢葉氏は「君もここで暫らく過ごすのなら作品を発表出来る場所も必要だろう。僕が何所か紹介してあげるよ。」
とても嬉しい一言だった。
それから、氏が行く画廊や美術館には、一緒に私の小品も持ち歩き、画廊主や、美術館の館長さんに作品を見せる機会を与えて頂いた。
楢葉氏はスウェーデンでは名が通った人で、氏の紹介という事も有ってか、どの画廊も美術館も直ぐに私の作品を受け入れてくれて、私の個展の企画まで話しが進んでいってしまう。
ある画廊では私の作品をとても気に入ってくださり、常設してくれる事になり2点ほど置く事になった。
楢葉氏も最初のうちはこうなることを喜んでくれていたのだが、或る日突然「僕はここスウェーデンに来てから発表出来るまで3年も掛かったのに、君はまだ発表出来る段階じゃない!もっとここを知ってから発表しなければならないだろ!」と凄い剣幕で怒り始めた。
とんとん拍子で話しが進んで行く私の個展の話しと、自分がここで苦労して今の地位を築き上げた事のギャップを感じたのだと思う。
僕から見たらこうなって行くのも貴方の力有ってからこそなのに、そこで目くじら立てる事では無いではないか!
この一件が有ってから、一切画廊や美術館への紹介は無くなってしまった。




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