尾崎 慎 の 彫刻ライフ

石彫刻家尾崎慎の作品の紹介や、展覧会情報、これまでに起こってきたエピソードや日記など様々な事を綴って行きます。

中井延也先生との事

2009-09-28 18:01:17 | 日記
1999年、この年私は初めて東京日本橋本店での個展を開催するする事になった。
東京での個展は1992年の愛宕山画廊での個展以来だ。
個展会場には学生時代の同級生や先輩、後輩など様々な友達が来てくれて、何時誰が来るのかとても楽しみでも有った。

個展も中盤に差し掛かった時、食事を済ませ、会場に戻る途中画廊の方が「先生がお見えになって居られますよ。」と知らせて下さった。
どの先生が来られているのか緊張の一瞬でしたが会場に戻るとその緊張とは裏腹に中井先生のお姿を確認すると、安心感に戻っている自分に気付いた。
先生は若い頃からお酒をよく飲まれ、私が学生の頃から肝臓に病気を患い入退院を繰り返され、今回はさらにお痩せになられたご様子だった。
会場ではゆっくりと話しも出来ないので、奥に有るラウンジで御茶をしながら、久し振りに先生と生徒の関係に戻って話しをした。
暫くお会いしない間に喉頭癌も患い、手術をされ、ほとんど声も出ないようだったのだが、その声ともかすれた息とも言えないような発生音で「頑張ってやっているな。」と言って下さった。私にとってはこれ以上無い褒め言葉だった。
これまで頑張ってきた証明をしてもらえたようで、本当に嬉しい再会だった。
個展の結果も良くて、次ぎのここでの個展の約束もされた。

一週間後そんな束の間の安堵を引き裂くようなとても悲しい報せが届いた。
先日まで三越の個展会場でお話しをした中井先生が逝かれたとの報せだった。

私の個展会場に来るのにも、病に侵された重い体を引きづりながら会いに来て下さったのかと思うと胸が痛みます。
併し学生時代からずっと気に留めていて下さった先生の最後の言葉を胸に抱き制作に対する気持ちを新たに引き締めました。
中井延也先生の御冥福をお祈りします。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿