作家と美大・芸大。

私の両親は画家であったのだが、独学でこの世界に入って来た。
私が実際にこの世界を志した時に、「絶対に美大・芸大に進んでおきなさい。」と言われたのだ。両親は個展一つするのでも、画廊に門前払いされた事が何度も有り、夢は銀座での個展をする事であった。
同じ道を選んだ子供には同じ思いをさせたくないと思ったのだろう。私が多摩美に合格した時の両親の喜びようは今でも脳裏に焼き付いている。
おそらく私は彫刻家として活動を始め、多摩美大学院というだけで、どの画廊からも門前払いをされた事はまずない。どんな事が有っても、とりあえずは作品を見てもらえる。私の両親はこんな事が無く過ごし、苦労も並大抵では無かったのだと思う。それを絵の力だけで丸栄の全室を使い個展をしたり、ついには銀座のサエグサ画廊で個展を出来るまでになったのだ。
私の努力など足元にも及ばないと思っている。独学で掴んだ力は本物だ。いくら良い大学を出ようと努力しなければそれまで。そんな事を身を持って教えてくれたように思う。
今はその親は無い。
まだまだ私の努力などハナたれ程なのだろう。



日記彫　ＮＯ，１１０

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