それからは運転手の独壇場に・・・ 2015-09-19 22:48:32 | 小説 それからは運転手の独壇場にさせておいた。幸男は、とにかく、無事に理恵を岬ホテルへ送り届ければ、と固く思った。タクシーは国道を行き、岬への一本道にでていた。ちらちら見え始めた岬の桜を、理恵も目にしているのだろうか・・・・・・もうすぐつかの間のなつかしい出会いも終わる、がそれでいいのだろう? (つづく)
西の岬へ向く道のフロントガラスに、・・・ 2015-09-16 20:54:50 | 小説 西の岬へ向く道のフロントガラスに、熱っぽい初夏の風な陽射しがきていた。桜の季節に似合わない陽射しと、後部席の理恵とに挟まれて、ぞっとするじゃないですかとつい言い添えたのだ、幸男は。 「宇礼市の発展に異存はないが、物騒な世の中はお断り。私らも何か危険な商売ですからね。商売と言えば、中山理恵みたいな有名人ならね、それは気前がいいし、第一気分が違いますよ。観光地で売りこむのならば有名人をどしどし呼びこまないことにはいけません」 (つづく)
聞いた風な口になる運転手だが、幸男は・・・ 2015-09-14 20:38:37 | 小説 聞いた風な口になる運転手だが、幸男はテレビのニュースの画面を思いだしながら、 「画像と現実が頭の中でごちゃごちゃまぜになってしまった。ぞっとするじゃないですか」 と言ってやった。 (つづく)
幸男は意識的に彼の話に乗ろうとして、・・・ 2015-09-12 07:18:39 | 小説 幸男は意識的に彼の話に乗ろうとして、 「いいお話だなあ」 「まあ、それはいいことづくめじゃありませんか、先月にも嫌な事が起きた」 「例の」 「誘拐殺人。子供を殺すなんて。それに犯人が若すぎますわ。ビデオに浸りっ切りだったとか」 (つづく)
それから押し黙ってばかりも・・・ 2015-09-10 05:41:23 | 小説 それから押し黙ってばかりもいかないだろう、幸男が彼の相手になった。そんな話なら、聞く耳を持ちあわせている。思えば理恵が、大きなマスクにタータンチェックのワンピースで、風邪をこじらせた、幸男の身内の旅行者と運転手の目には映っていたのに違いない。 (つづく)