拍手ありがとうございます。
<前書き>
今回はなんと初書き孔明です。
リクエストもあったことだし、書きたい感じでもあったのが書いてみました。
私の中では、孔明のスタンスがまだ定まってなくて(笑)
でも孔明ルートはやたら切ないので、やっぱり本館ですね。
「一睡の夢の如く」(孔明×花)孔明ED後
花は書簡を抱えて孔明の執務室に戻ると、キョロキョロと部屋を見回した。
いるはずの孔明の姿がない。
「師匠?」
試しに執務机の下や屏風の後ろも捜して見るけれど、やっぱり姿はない。
何でそんなところまで捜すのかと言えば、前にそれらの場所で寝ていたことがあるからだ。
以前放浪していたときけっこう野宿に近いこともしていたから、僕はどこでも眠れるんだと自慢していた。
「どこにいったんだろう?」
もちろん答える声はない。
急ぎの用事はないけれど、絶対いると思っていたのに会えないとなると気になる。
漠然とした不安。
神出鬼没の孔明のことだから、さっきまでここにいたのに次に会おうと思ったらもう見つからない、そんな怖さがあった。
気にし過ぎだとは思っても、何だかいても立ってもいられない気分になる。
捜しに行こうかと花が思っていると、ふわりと視界の隅に白い小さな蝶が横切った。
「あ、モンシロチョウ?」
そのまま何かに誘われるように蝶が飛んでいる窓辺へ行くと、窓のすぐ横の大きな木の下に孔明がいるのが見えた。
陽射しが優しい昼下がり、どうやらお昼寝を決め込んでいるらしく、孔明は安らかな顔で背を木の幹にあずけて眠っている。
花は声をかけようと思って、そのままためらう。
たぶんすごく疲れているんだろう。
誰かに見つかった眉をひそめられることは間違いないけれど、えいっとばかりに裾をたくし上げて窓を越えた。
そのまま足音を忍ばせて孔明のそばまで行くと、そっと顔を覗き込んだ。
つい小さな笑い声がもれる。
「眠ってると亮くんの昔のままの寝顔だ」
花は孔明の隣に腰を下ろして、遠く流れる雲を眺める。
ゆるやかな風がさわさわと頭上の梢を鳴らし、木漏れ日がちらちらと踊っている。
どこか遠くから、兵士たちの訓練する声が小さく聞こえていた。
さっきのモンシロチョウがふわふわとつかず離れずに飛んでいる。
久しぶりにゆっくりした時間だなぁとしみじみしていると、だんだんと瞼が重くなって来て小さなあくびが出た。
「う……ん」
孔明は肩に暖かさと重みを感じて眠りから引き戻された。
そして、その原因に気付いて思わず少しばかりうろたえる。
まさかいつの間にか花が隣で寝てるなんて、さすがに孔明にも予想出来ていなかった。
「幸せな顔しちゃって」
あどけない顔を見て、ふと悪戯心が起こる。
やわらかで滑らかな頬にそっと触れてみるけれど、起きる気配は全くない。
「困ったこだね。こんなに警戒心なくていいのかなぁ」
それでもふとわきあがる幸せを噛みしめる。
時々これは夢の続きなんじゃないかと、夜中に目覚めた時埒もなく考えたりする。
彼女はもとの自分の世界に帰ってしまって、ここにいると思っているのは自分の見ている都合のいい夢。
でもどうしてそうじゃないと言えるだろう。
実際孔明は一度それを体験しているのだ。
夢の如く消えてしまった少女。
彼女は知らない。
あの後、幼い亮がどれほど花を求めたか。
「今、君はほんとにここにいるのかな?」
自分の言葉に苦笑して、身体の左側にかかる花の重みと心地いい温もりに安堵する。
たまにはこんな時間もいいと思う。
孔明は微笑むと、少しだけ身を起こして花の瞼に上に口付けを落とした。
「んん」
花がかすかに身じろいで、瞼が細かく震えた。
とっさに前のように木の幹に身体をあずけて、今度は自分の頭を花の肩にのせた。
「ん?ねちゃったんだ」
半分寝惚けたような気分で目を開けて、花は隣に自分に寄りかかっている孔明に気付いて思わず顔に血が上った。
顔が近すぎる。
不用意に動いたら唇が触れそうなほどに近い。
「師匠?」
呼びかけてまだ起きる気配がないのを確かめて、顔を覗き込んで少し迷う。
いつもは飄々とした感じだけれど、眠っているとどこか幼く見える。
あの全てを見通すような深く静かで底のない瞳が見えないせいかもしれない。
あの子供が師匠になるなんて、真実を知った今でも不思議な気持ちだ。
すると、今度は黄色い小さな蝶が飛んできて、花を促すように孔明の頭の上に止まった。
それで、ためらっていた気持ちが後押しされる。
起きてればなかなか本人の前で言えない言葉も、眠っていれば別だ。
「孔明さん。好きです」
思わず声に出し、思い切ってそっと触れるだけの口付けをした。
急いで顔を離した瞬間、ぱちっと音がしそうなほどの勢いで孔明の目が開いた。
「あれ?おはよ。僕、寝ちゃってたんだ」
「はい。すっごく気持ちよさそうでしたよ」
花は、さも今来たかのように取り繕う。
「うん。さすがにちょっと疲れたかな。うとうとしてた」
そう言うと、孔明は大きく伸びをして、花の顔を不思議そうに覗き込んだ。
「君こそ熱でもあるの?顔赤いよ」
「え!ありませんよ」
ぶんぶんと首と一緒に手も振る。
「ほら、こっち」
孔明は花に何も言う間も与えず、花の頭の後ろに手をやって逃げないようにすると自分の額とこつんと合わせた。
「し、師匠!」
焦る花にはお構いなしで、熱はないねと真面目な顔で頷く。
「熱がないのわかったら、離してください~」
「う~ん。どうしようかな?君、僕に何か隠し事してるでしょ」
「してません」
「師匠の僕に隠し事するなんて、十年早いよ。それに教えたよね。軍師たるもの、何があっても顔に出すな、涼しい顔してなくちゃいけないって」
うっ、と花は言葉に詰まる。
「さあ、何を隠しているのか当ててあげようか」
孔明はやっと花を額を合わせた状態から解放して、いつもの余裕のある笑みを浮かべる。
でもさすがの孔明だって、眠ってる間のことまではわかるわけないと思う。
「いくらお師匠さまでもわかりませんよ」
「ほんとにそう思う?なんなら賭けでもしようか?」
孔明に持ちかけられて、とたんに自信がなくなる。
なんと言っても孔明は天下の伏龍であり、はるか先まで見通すことが出来るのだ。
「やっぱり止めておきます」
「弱気だねぇ。そんなんじゃ、なめられちゃうよ。時には嘘もホントにしなきゃならないんだから」
「精進します」
「はい。がんばろうね」
そう言って、先に立ち上がった孔明が手を差し伸べてくれる。
戦場で闘う玄徳や雲長のような無骨さはないけれど、手を握ると自分より大きな手にああ男の人の手なんだなと妙に気恥ずかしくなる。
「花」
「はい?」
名前を呼ばれ手を握られたまま顔をあげると、啄ばむような口付けがふってきた。
二人にとって、もし今が一睡の夢でも、今この時が永遠だった。
<後書き>
ちゃんと孔明になってました・・・・よね?(半ば脅し)
ほのぼのちょっと甘く切ない・・・・いったいどれを目指したって?
全てを盛り込んで見ました。
すいません。私も精進します。
<前書き>
今回はなんと初書き孔明です。
リクエストもあったことだし、書きたい感じでもあったのが書いてみました。
私の中では、孔明のスタンスがまだ定まってなくて(笑)
でも孔明ルートはやたら切ないので、やっぱり本館ですね。
「一睡の夢の如く」(孔明×花)孔明ED後
花は書簡を抱えて孔明の執務室に戻ると、キョロキョロと部屋を見回した。
いるはずの孔明の姿がない。
「師匠?」
試しに執務机の下や屏風の後ろも捜して見るけれど、やっぱり姿はない。
何でそんなところまで捜すのかと言えば、前にそれらの場所で寝ていたことがあるからだ。
以前放浪していたときけっこう野宿に近いこともしていたから、僕はどこでも眠れるんだと自慢していた。
「どこにいったんだろう?」
もちろん答える声はない。
急ぎの用事はないけれど、絶対いると思っていたのに会えないとなると気になる。
漠然とした不安。
神出鬼没の孔明のことだから、さっきまでここにいたのに次に会おうと思ったらもう見つからない、そんな怖さがあった。
気にし過ぎだとは思っても、何だかいても立ってもいられない気分になる。
捜しに行こうかと花が思っていると、ふわりと視界の隅に白い小さな蝶が横切った。
「あ、モンシロチョウ?」
そのまま何かに誘われるように蝶が飛んでいる窓辺へ行くと、窓のすぐ横の大きな木の下に孔明がいるのが見えた。
陽射しが優しい昼下がり、どうやらお昼寝を決め込んでいるらしく、孔明は安らかな顔で背を木の幹にあずけて眠っている。
花は声をかけようと思って、そのままためらう。
たぶんすごく疲れているんだろう。
誰かに見つかった眉をひそめられることは間違いないけれど、えいっとばかりに裾をたくし上げて窓を越えた。
そのまま足音を忍ばせて孔明のそばまで行くと、そっと顔を覗き込んだ。
つい小さな笑い声がもれる。
「眠ってると亮くんの昔のままの寝顔だ」
花は孔明の隣に腰を下ろして、遠く流れる雲を眺める。
ゆるやかな風がさわさわと頭上の梢を鳴らし、木漏れ日がちらちらと踊っている。
どこか遠くから、兵士たちの訓練する声が小さく聞こえていた。
さっきのモンシロチョウがふわふわとつかず離れずに飛んでいる。
久しぶりにゆっくりした時間だなぁとしみじみしていると、だんだんと瞼が重くなって来て小さなあくびが出た。
「う……ん」
孔明は肩に暖かさと重みを感じて眠りから引き戻された。
そして、その原因に気付いて思わず少しばかりうろたえる。
まさかいつの間にか花が隣で寝てるなんて、さすがに孔明にも予想出来ていなかった。
「幸せな顔しちゃって」
あどけない顔を見て、ふと悪戯心が起こる。
やわらかで滑らかな頬にそっと触れてみるけれど、起きる気配は全くない。
「困ったこだね。こんなに警戒心なくていいのかなぁ」
それでもふとわきあがる幸せを噛みしめる。
時々これは夢の続きなんじゃないかと、夜中に目覚めた時埒もなく考えたりする。
彼女はもとの自分の世界に帰ってしまって、ここにいると思っているのは自分の見ている都合のいい夢。
でもどうしてそうじゃないと言えるだろう。
実際孔明は一度それを体験しているのだ。
夢の如く消えてしまった少女。
彼女は知らない。
あの後、幼い亮がどれほど花を求めたか。
「今、君はほんとにここにいるのかな?」
自分の言葉に苦笑して、身体の左側にかかる花の重みと心地いい温もりに安堵する。
たまにはこんな時間もいいと思う。
孔明は微笑むと、少しだけ身を起こして花の瞼に上に口付けを落とした。
「んん」
花がかすかに身じろいで、瞼が細かく震えた。
とっさに前のように木の幹に身体をあずけて、今度は自分の頭を花の肩にのせた。
「ん?ねちゃったんだ」
半分寝惚けたような気分で目を開けて、花は隣に自分に寄りかかっている孔明に気付いて思わず顔に血が上った。
顔が近すぎる。
不用意に動いたら唇が触れそうなほどに近い。
「師匠?」
呼びかけてまだ起きる気配がないのを確かめて、顔を覗き込んで少し迷う。
いつもは飄々とした感じだけれど、眠っているとどこか幼く見える。
あの全てを見通すような深く静かで底のない瞳が見えないせいかもしれない。
あの子供が師匠になるなんて、真実を知った今でも不思議な気持ちだ。
すると、今度は黄色い小さな蝶が飛んできて、花を促すように孔明の頭の上に止まった。
それで、ためらっていた気持ちが後押しされる。
起きてればなかなか本人の前で言えない言葉も、眠っていれば別だ。
「孔明さん。好きです」
思わず声に出し、思い切ってそっと触れるだけの口付けをした。
急いで顔を離した瞬間、ぱちっと音がしそうなほどの勢いで孔明の目が開いた。
「あれ?おはよ。僕、寝ちゃってたんだ」
「はい。すっごく気持ちよさそうでしたよ」
花は、さも今来たかのように取り繕う。
「うん。さすがにちょっと疲れたかな。うとうとしてた」
そう言うと、孔明は大きく伸びをして、花の顔を不思議そうに覗き込んだ。
「君こそ熱でもあるの?顔赤いよ」
「え!ありませんよ」
ぶんぶんと首と一緒に手も振る。
「ほら、こっち」
孔明は花に何も言う間も与えず、花の頭の後ろに手をやって逃げないようにすると自分の額とこつんと合わせた。
「し、師匠!」
焦る花にはお構いなしで、熱はないねと真面目な顔で頷く。
「熱がないのわかったら、離してください~」
「う~ん。どうしようかな?君、僕に何か隠し事してるでしょ」
「してません」
「師匠の僕に隠し事するなんて、十年早いよ。それに教えたよね。軍師たるもの、何があっても顔に出すな、涼しい顔してなくちゃいけないって」
うっ、と花は言葉に詰まる。
「さあ、何を隠しているのか当ててあげようか」
孔明はやっと花を額を合わせた状態から解放して、いつもの余裕のある笑みを浮かべる。
でもさすがの孔明だって、眠ってる間のことまではわかるわけないと思う。
「いくらお師匠さまでもわかりませんよ」
「ほんとにそう思う?なんなら賭けでもしようか?」
孔明に持ちかけられて、とたんに自信がなくなる。
なんと言っても孔明は天下の伏龍であり、はるか先まで見通すことが出来るのだ。
「やっぱり止めておきます」
「弱気だねぇ。そんなんじゃ、なめられちゃうよ。時には嘘もホントにしなきゃならないんだから」
「精進します」
「はい。がんばろうね」
そう言って、先に立ち上がった孔明が手を差し伸べてくれる。
戦場で闘う玄徳や雲長のような無骨さはないけれど、手を握ると自分より大きな手にああ男の人の手なんだなと妙に気恥ずかしくなる。
「花」
「はい?」
名前を呼ばれ手を握られたまま顔をあげると、啄ばむような口付けがふってきた。
二人にとって、もし今が一睡の夢でも、今この時が永遠だった。
<後書き>
ちゃんと孔明になってました・・・・よね?(半ば脅し)
ほのぼのちょっと甘く切ない・・・・いったいどれを目指したって?
全てを盛り込んで見ました。
すいません。私も精進します。