ラヂオデパートと私

ロックバンド“ラヂオデパート”におけるギタリストとしての津原泰水、その幾何学的な幻視と空耳。

スペックという亡霊

2006-11-04 18:08:56 | マルジナリア
 機材やその操作をここで語らんとしている理由の一つは、情報収集。みずから発信した情報が、分裂し増殖して戻ってくるようなところがウェブにはある。目から鱗が落ちるような事実を教えてくれる人がいる。
 もともと、絃のゲージも記憶できないくらいのスペック音痴だ。機械音痴でもあり、未だに録音するときパンチインが出来ない。失敗したら仕方なく最初から弾き直している。
 そういう自分のやり方に、とうぜん自信など持ちようもない。四半世紀も人前で演奏してきたからには、音色はあるていど操作できるつもりでいるのだが、ひょっとして自分は毎度、物凄い遠回りをしているんじゃないかという疑念も拭い去れない。

 あまり金が無いから、なるべく安くて長く使える機材を、慎重に選んで買おうとする。実用一点張りも味気ないので、すこしファニーな物。どこか風変わりで人目を引く物。遠目にも、自分の持ち物だとはっきりわかる物。

 ウェブは自信満々の弁に満ちている。いわく「これを弾いたら他は弾けない」、いわく「こんなスペックの製品を買うのは金をどぶに捨てるようなもの」。いわく「コンデンサは**、配線材は**で、半田は**が一番」。
 僕にその種の確信はない。ライヴハウスではたぶん、お客の混みぶりが最も出音を左右する。同じスピーカーの付いた真空管アンプとトランジスタアンプ、自分以外のギタリストが弾いているのを目をつむって聴いて、どっちがどれとはきっと当てられない。
 好きな音色はある。その場その場で、なるべく理想に近づけるほかない。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿