昨日の記述、読み返すに無神経な部分があり、少々訂正した。ミュージシャンの容姿にまつわる描写だったが、『ライヴエイド』出演者には既に故人となっている人も少なくない。時期的に闘病中だった可能性もあると思い至った。ショウマンシップを賛美する以外の意図は無かったのだが、もし御不快に感じた方がおられましたら陳謝致します。
さてWikipediaをあたったところ、このイヴェントのクイーンに関しては以下のような記述であった。「全出演陣中、最多の6曲を披露した。パフォーマンスは他を圧倒し、ボブ・ゲルドフも彼らを絶賛した。この出演が解散目前と言われていたバンドを再浮上させる大きな転機となった」――なるほど。
熱心なファンの間ではとうに常識だったのもしれないが、じじつ僕がこれまで試聴してきたクイーンの音源や映像中、出色なので、ぜひ御覧になりマーキュリィという不世出の芸術家を偲んでほしい。なおDVDに以下の人々の演奏は収められていない。無念。パワー・ステーション(ボーカルはマイケル・デ・バレス)、フォー・トップス、フーターズ、ビリー・オーシャン、ヒューイ・ルイス&ザ・ニュース、リック・スプリングフィールド、サンタナ、パット・メセニィ、レッド・ツェッペリン(ドラムはフィル・コリンズとトニー・トンプソン)。
イヴェントの成功によりボブ・ゲルドフはナイトの爵位を授かり、アイルランド人であるにも拘わらず「サー・ボブ」の綽名が定着する。U2のボノが同様にナイトとなった時、日本に於いてさえしきりに「サーは付きません」と報道されたのは、この経緯ゆえだろう。
チャリティ、爵位、ノーベル平和賞候補――。ロックミュージシャンの「音楽以外での」成功の雛型が築かれたイヴェントでもあったが、アフリカの飢餓には焼石に水。しかしというか、故にというか、一昨年は同じシステムを流用したLIVE 8が開催された。
ボノはプロダクトREDという「民間企業から世界基金(世界エイズ・結核・マラリア対策基金)への持続的な資金の流れをつくる寄付の仕組み」を提唱している。GAPのTシャツ、アルマーニの衣料や眼鏡、iPod nanoなどの売上金の一部が、自動的に世界基金に寄付されるという。
ニュー・インターナショナリストのウェブサイト(http://www.ni-japan.com/index.htm)に、プロダクトREDのトップに対する興味深いインタビュー記事が載っている。
シェイラ・ロッシュ:REDは三者が得をする仕組みになっています。企業には大きなメリットとなり利益を上げることもできます。消費者はとても素晴らしい商品を手にすることができ、それによって新たな負担なしに非常に効果的なことが行えるのです。そして、最終的に恩恵を受けるのはアフリカにいる人々です。彼らは抗レトロウイルス薬の投与を受けられるようになり、自らの命を「延ばす」ことができます。
シェイラ・ロッシュ:私たちは企業に対して、アフリカとの貿易を行うよう実際に働きかけています。ギャップは、多大な努力を払ってREDプロダクトの一部をレソトで生産するようになりました。そして、服を作っている工場で、労働者に対してHIV/エイズの検査と治療をするという新たなプログラムも始めました。アルマーニは、アフリカ人のデザイナーを起用しています。
タムジン・スミス:モトローラの梱包材はサハラ以南のアフリカから来ています。また、そこに生産拠点を作ることも検討中です。レソトの工場でギャップのTシャツを作っている労働者が受ける恩恵は、抗レトロウイルス薬投与のプログラムだけではありません。その人たちが仕事をしているからこそ支援の対象にもなるのです。これは非常に勇気づけられるコンセプトです。消費者がこのような事情を知るようになれば、どこでどのようにして商品が作られているのかということをもっと気にかけるようになるでしょう。人々により良い選択肢を提供すれば、衝動買いのようなことをやめるだけでなく、買う量についても恐らくもっと慎重になるでしょう。
語るに落ちている。これはプランテーションだ。じっさいボノも、チャリティではなくビジネスだ、と開き直っている。
経済学を少しでも囓った人間ならば、恒常的な飢餓や貧困が、寄付によって是正されるなんて夢にも思わない筈だ。アフリカという大陸をまるで一つの穏やかな村のように捉え、先進国に都合のいい場所に工場を造ったって、いたずらに格差を拡げるだけである。農村や未開地では短命、アルマーニやモトローラと契約している工場で働いたり彼らとコミットすれば延命できるなんてシステムは、新しい地獄をつくる。僕がプロダクトREDを支援する気になれないのは、アフリカ諸国の自立プログラム、先進国に搾取されない構造のモデルから、現実を遠ざけようとしているかに見えるからだ。
アフリカ大陸では連日、いわゆるエイズによって六千五百人が亡くなっているという。悲惨な話ではあるが、ところであまり報道されない内戦や一揆によっては、どのくらいが亡くなっているのだろう? リベリア、スーダン、エチオピア・エリトリア国境、ソマリア、ルワンダ、ブルンジ、コンゴ、シエラレオネ、コートジボワール、アンゴラ――。
先進国が最初にやるべき事は武器輸出の全面停止だろう。プロダクトREDから流れた金が、きょう延命するための弾丸に変わっていないとは限らない。
薬は高い。なぜ高い? その理由を考えてみようじゃないか。
ちなみにこの小さな島国では、一日八十人以上が自殺している。
さてWikipediaをあたったところ、このイヴェントのクイーンに関しては以下のような記述であった。「全出演陣中、最多の6曲を披露した。パフォーマンスは他を圧倒し、ボブ・ゲルドフも彼らを絶賛した。この出演が解散目前と言われていたバンドを再浮上させる大きな転機となった」――なるほど。
熱心なファンの間ではとうに常識だったのもしれないが、じじつ僕がこれまで試聴してきたクイーンの音源や映像中、出色なので、ぜひ御覧になりマーキュリィという不世出の芸術家を偲んでほしい。なおDVDに以下の人々の演奏は収められていない。無念。パワー・ステーション(ボーカルはマイケル・デ・バレス)、フォー・トップス、フーターズ、ビリー・オーシャン、ヒューイ・ルイス&ザ・ニュース、リック・スプリングフィールド、サンタナ、パット・メセニィ、レッド・ツェッペリン(ドラムはフィル・コリンズとトニー・トンプソン)。
イヴェントの成功によりボブ・ゲルドフはナイトの爵位を授かり、アイルランド人であるにも拘わらず「サー・ボブ」の綽名が定着する。U2のボノが同様にナイトとなった時、日本に於いてさえしきりに「サーは付きません」と報道されたのは、この経緯ゆえだろう。
チャリティ、爵位、ノーベル平和賞候補――。ロックミュージシャンの「音楽以外での」成功の雛型が築かれたイヴェントでもあったが、アフリカの飢餓には焼石に水。しかしというか、故にというか、一昨年は同じシステムを流用したLIVE 8が開催された。
ボノはプロダクトREDという「民間企業から世界基金(世界エイズ・結核・マラリア対策基金)への持続的な資金の流れをつくる寄付の仕組み」を提唱している。GAPのTシャツ、アルマーニの衣料や眼鏡、iPod nanoなどの売上金の一部が、自動的に世界基金に寄付されるという。
ニュー・インターナショナリストのウェブサイト(http://www.ni-japan.com/index.htm)に、プロダクトREDのトップに対する興味深いインタビュー記事が載っている。
シェイラ・ロッシュ:REDは三者が得をする仕組みになっています。企業には大きなメリットとなり利益を上げることもできます。消費者はとても素晴らしい商品を手にすることができ、それによって新たな負担なしに非常に効果的なことが行えるのです。そして、最終的に恩恵を受けるのはアフリカにいる人々です。彼らは抗レトロウイルス薬の投与を受けられるようになり、自らの命を「延ばす」ことができます。
シェイラ・ロッシュ:私たちは企業に対して、アフリカとの貿易を行うよう実際に働きかけています。ギャップは、多大な努力を払ってREDプロダクトの一部をレソトで生産するようになりました。そして、服を作っている工場で、労働者に対してHIV/エイズの検査と治療をするという新たなプログラムも始めました。アルマーニは、アフリカ人のデザイナーを起用しています。
タムジン・スミス:モトローラの梱包材はサハラ以南のアフリカから来ています。また、そこに生産拠点を作ることも検討中です。レソトの工場でギャップのTシャツを作っている労働者が受ける恩恵は、抗レトロウイルス薬投与のプログラムだけではありません。その人たちが仕事をしているからこそ支援の対象にもなるのです。これは非常に勇気づけられるコンセプトです。消費者がこのような事情を知るようになれば、どこでどのようにして商品が作られているのかということをもっと気にかけるようになるでしょう。人々により良い選択肢を提供すれば、衝動買いのようなことをやめるだけでなく、買う量についても恐らくもっと慎重になるでしょう。
語るに落ちている。これはプランテーションだ。じっさいボノも、チャリティではなくビジネスだ、と開き直っている。
経済学を少しでも囓った人間ならば、恒常的な飢餓や貧困が、寄付によって是正されるなんて夢にも思わない筈だ。アフリカという大陸をまるで一つの穏やかな村のように捉え、先進国に都合のいい場所に工場を造ったって、いたずらに格差を拡げるだけである。農村や未開地では短命、アルマーニやモトローラと契約している工場で働いたり彼らとコミットすれば延命できるなんてシステムは、新しい地獄をつくる。僕がプロダクトREDを支援する気になれないのは、アフリカ諸国の自立プログラム、先進国に搾取されない構造のモデルから、現実を遠ざけようとしているかに見えるからだ。
アフリカ大陸では連日、いわゆるエイズによって六千五百人が亡くなっているという。悲惨な話ではあるが、ところであまり報道されない内戦や一揆によっては、どのくらいが亡くなっているのだろう? リベリア、スーダン、エチオピア・エリトリア国境、ソマリア、ルワンダ、ブルンジ、コンゴ、シエラレオネ、コートジボワール、アンゴラ――。
先進国が最初にやるべき事は武器輸出の全面停止だろう。プロダクトREDから流れた金が、きょう延命するための弾丸に変わっていないとは限らない。
薬は高い。なぜ高い? その理由を考えてみようじゃないか。
ちなみにこの小さな島国では、一日八十人以上が自殺している。
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