"On" the Africa? (E-410)

最近は７月から始まった三ヶ月間の雨季休み真っ只中。
朝起きて、近くのシャイベット（喫茶店）へコーヒーとドーナッツを食べに行くのが日課だ。
一日おきに停電なので、電気がある日は一日パソコン作業、電気の無い日はなるべく外に出る用事を作るか一日読書。
家からシャイベットまでは歩いて五分。
家を出ると向かいのスック（商店）一家が優しく出迎えてくれ、子供とたわむれたりする。
更に歩いていくともうひとつスックがあり、照れ屋の店番少年ゼディックがはにかんで手を振ってくれる。
気付かないで通り過ぎそうになると立ち消えそうな口笛で気付かせようとし、そのくせ「おはよう！」と声を掛けると聞こえない声で（おはよう）と言う。
日によってはその店の前で名前も知らない子が握手を求めてどこからともなくテテテテテ、と走ってくる。
話しかけてくるので笑いながらからかう。
彼と別れて更に進むと見知らぬ女の子達におはよう、と声を掛けられる。それも彼女たちを追い越してからしばらくしてから。照れ屋なのである＾＾
砂利道が終わり、大通りを渡るとシャイベットに着く。帰りはその逆だ。

いいことばかりではない。
意味もなくチャイナと呼ばれたり、「チンチュンチャンチュン」と大勢にからかわれたり、「チャイナどけ！」とか。
こっちが現地語のアムハラ語が分からないと思って「なんでチャイナがここに居るんだ？」とか「最近なんだかチャイナが増えてきたな」とか。あとは意味は分からないがすれ違う人の何人かは好奇の視線を寄せながら「チャイナ○×○×」と言っている。
ネガティブなことを言われているとは限らないのだが、気になってしまう。こちらはただ歩いているだけなのに。

最近こっちに来てから一年が経った。一年がたつまではこういうことにやられて道を歩くたびに落ち込んだりしていた。
でも他の国を見たこと、一年経って整理がついてきたことなどなどで、かなり考えが変わってきた。
落ち込むことはあるけれども、同時に笑顔で人が走ってきてくれたり手を振ってくれたり、ただ歩いているだけでとても嬉しくなるような瞬間にも出会っているのだ。
そして気がつかなかったけれども１０嫌なことがあっても、１つのいいことがあると実は気持ちの上では帳消しにされていた。
だからこれからはその１が２とか３になるようにして行こう、と。
「１０嫌なことがあっても１つのいいことで帳消しになる！」
自分でも書いてて楽天的なバカの掲げるスローガンみたいで嫌なのだが、そういう言葉ほど体験してみると妙に納得が行くものなのである。

しかし思ったのが、この国の人にとってはどちらも関係のない出来事で僕は一喜一憂しているんだな、ということ。
見知らぬエチオピア人に対してエチオピア人は罵声を浴びせないが、同時に見知らぬエチオピア人にエチオピアの子供は笑顔で走っていかないし、お店で特別扱いもしてもらえない。
自分の見ているエチオピアの姿というのはなんなのであろうか？
一年とちょっとが経ち、エチオピアの「中」で生活している自負がいつの間にかあったが、実はエチオピアの「上」、表層を生きているのではないかと。
僕に見せているみんなの顔は他のエチオピア人に見せている普通の表情とは違うだろうし、好奇の視線や笑顔に溢れた子供たちの顔もそうであろう。
普通のエチオピア人たちの生活は僕の感じているような抑揚に富んだものではなく、もっと地味なものなのかもしれない。そしてまたその逆も有り得る。
とにかくこの国の、僕らの歩く周りだけは彼らにとっていつもと違う空気が流れ、僕らはそれしか見ることが出来ない。そして僕らはそれをこの国だと思っている。
話には聞くかもしれないが、絶対に僕らが体験できない顔をエチオピアは持っているんだ。
そう思うとなんとも言えない気分になるのである。
そして遠山の金さんを思い出した。