科学者の卵だった友人は、物理学者になった。
私は彼のことが大好きで、とても仲良しだった。
彼は卵だった当時から、優秀な科学者としてのアティテュードがあった。
強靭とは何かの、西部邁翁の言葉から、彼のことを想い出した。
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西部:考えるってことは なにか疑うっていうことでしょう でも考えるためにはある種の前提が必要なわけですよね 前提っていうのは論理的に言うと山ほどあるわけですよね そうするとどれか選ぶでしょ 選ぶってことは信じるって程じゃないけど 少なくとも信じたいと思うっていうね 考えることを言うとね、疑うためには何かを信じないといけない でも果たして信じられることあるかどうか(口述ママ)を今度考える 考える為には 今言った循環の中に身を置くというね 精神論的に言えば恐るべき危機的作業なわけ 考えるっていうことは 〈対話は続く〉
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彼は面倒くさがりの反対だった。
綻びは彼にとってワクワクだと言った。例えば、何か機械が壊れて正常に動かなくなった時、
イライラではなくワクワクすると言った。その原因を突き止め、正常に動かすことへの探究心だ。
キッチュであることの反対だった。(関連:自己欺瞞はネガティブ・ケイパビリティの反対)
「こうだ。以上!はい解決!!これ以上の問答は受け付けません!!はい終了!!」と、
さっさと落着して自分が安心(まやかしの安心)したいだけの怠慢な
解決ーSOLUTIONー脳とは真逆の態度。
COMPLETED!
彼は 綻び 不具合 異音 ウエルカムだった。
疑いながら、仮説も立てる 立てながら、それに全力で向かってもいけない
「もしかして、こうなのではないか?」「ねぇ、そうじゃない?」と独り言を言いながら
ワクワクしながら仮説を立てる でも信じ過ぎることもしない制御
そうじゃないよと示す出来事に直面したら「ああそうか、そうじゃなかったか では何?」
と考え続ける 常に深淵な森の中にいる感じ
それはまさに、科学者の態度。
人に対してもそうだった。私に対してもそうだった。
どういう条件下でそうなって、どういう時にそうならないか その条件付けの修飾語こそが
肝要であり、その極めて微細かつ大きな法則を見つけるのが科学者の仕事。
要約することは、危険をはらんでいる。
神は細部に宿る God is in the details と昔から言うように、
大事じゃないと切り捨てられる部分が大事なことだったりする。
人参は皮に栄養が凝縮している。
要約しないことも能力である。なんの躊躇もなく要約できる人は
ネガティブ・ケイパビリティが欠如している。
ピンクの所も捨てちゃダメ