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来春施行の電子文書法はIT業界の商機となるか

2004-12-14 12:36:48 | ITビジネス
 来年4月に施行される電子文書法(e-文書法)に関して、IT業界では関連商談の誘発を期待する声が多いようだ。電子文書法は、最初からデータとしてやり取りされている文書に加え、紙からスキャナーで読みとった文書データについても、一定の要件を満たせば原本として認めようというものだ。企業は原則として、商法や税法で義務付けられている文書を、データとして保管できるようになる。いわゆるコンテンツ管理システムなどを導入すれば、コスト削減が可能になりそうだ。IT業界が商機と思うのも無理はない。

 最近の新たな商機は、レギュレーションの変更に伴うものが多い。その代表例が個人情報保護法だ。そういえば個人情報保護法の本格施行も来年4月。「個人情報保護法に続き、電子文書法でも」と意気込むITベンダーやシステム・インテグレータは多いが、電子文書法は果たして個人情報保護法ほどのインパクトはあるのだろうか。というのも、個人情報保護法は規制強化であり、企業は対応せざるを得ないのに対して、電子文書法は規制緩和である。つまり、企業は対応しなくてもよいのだ。

 そうなると問題は、電子文書法に対応して文書管理をIT化してときのROIだ。どうもITベンダーやシステム・インテグレータは、システム投資に見合うだけのコスト削減効果を見込めると、ユーザー企業に断言できるまで確信が持てないようだ。そこで、紙文書を電子化することで実現できるビジネス・プロセスの改善などをセットで提案することになる。「取引先から送られてきた請求書などをイメージ化することで情報システムのワークフローに乗せ、素早く、そして効率よく処理しましょう」いった類の提案だ。つまり、電子文書法を取っ掛かりに、業務改革の提案というITベンダーなどがお得意の領域に提案を拡張するわけだ。

 これは一見、筋がよさそうである。しかし、こうしたシステムは「イメージ・ワークフロー」などの名称で10年以上前から提案されてきた。実際、クレジットカード会社が入会審査業務に活用するなど事例がもある。ところが、そうした事例は限られた分野のみで、一般的には導入は進んでいない。いろんな理由が考えられるが、やはりROIに確信が持てないというのが大きな理由だろう。

 電子文書法に引っ掛けてこうしたシステムを提案した場合、ユーザー企業はどう判断するだろうか。一般化して言えば、「電子文書法対応によるコスト削減効果 + イメージ・ワークフロー導入による効果 > IT投資コスト」という不等式が成り立つか否かが、判断の基準になる。この判断はやはり難しい。つまり、電子文書法はIT業界にとって“漢方薬”になるかもしれないが、“特効薬”になるとは思えないのだ。やはりよく言われることだが、個人情報保護法への対応とセットにしたソリューション提案や、文書の電子化作業などを含むBPO提案など、地道な取り組みしかマーケットを広げる道はないだろう。