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米IBMが東証から撤退、「会社法施行で外資による買収が増える」はカラ騒ぎか

2005-04-22 17:21:25 | ITビジネス
 4月19日付の日本経済新聞19面の『IBMよ おまえもか』と題した囲み記事は、とても参考になった。この前、ブログに書いた『会社法施行でITサービス会社も外資の買収ターゲットに』の記事での認識が、少し安直だったことが分かったからだ。

 日経の囲み記事は、米IBMと米ペプシコが5月に東京証券取引所への株式上場を取りやめることを題材にしたものだ。今、巷では「会社法施行によって外国株などが企業買収の対価として使えるようになるので、外資による日本企業の買収が増える。大変だ!」と騒ぎになっている。ライブドアvsフジテレビ騒動の余波だが、企業は防衛策に頭を痛め、自民党は騒ぎ出し、外国株などを対価にできるという条項は1年先送りされ2007年からとなった。この前に記事に書いたように、ITサービス業界の中でも買収攻勢を警戒する声が出ている。

 しかし、この『IBMよ おまえもか』では、肝心の外資には自社株(外国株)を使って買収に乗り出す意思がないことを明らかにしている。

 自社株を使った株式交換による買収を行うためには、日本の株式市場への上場が不可欠。なぜなら、日本の株式市場に上場していない外資が株式交換で日本企業を買収しようとした場合、被買収企業の株主は外国の株式市場に上場する外国通貨建ての株式を受け取らざるをえず、様々な不利益を被るため買収に同意するとは考えにくい。つまり、IBMが東証への上場をやめるということは、将来的に日本企業を株式交換で買収する意思がないことを表明したに等しい――これが記事の骨子である。

 IBMとペプシコが撤退することで、東証に上場する外国企業はわずか28社になる。1991年には127社が上場していたというから、往時の2割強にすぎない。28社の中にIT関連企業は、と探してみたが皆無。わずかに関連する企業として、モトローラやアルカテルが上場している程度だ。最も手軽な自社株を使った外資による買収は当面ないと、ITサービス会社は“安心”してよい。もちろん買収手段は他にもある。業界再編の胎動が聞こえる今、企業価値向上への取り組みを休むわけにはいかないのは確かだ。