東葛人的視点

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結局、“買いやすいけど買いにくい”ITサービス会社を目指すしかないか

2005-03-22 21:28:08 | ITビジネス
 「ITサービス会社に対する会計監査の厳格化」の話と「会社法施行でITサービス会社も外資の買収ターゲットに」の話を別々に書いたが、考えてみれば同じ文脈で語れる話だった。というのも、会計監査の厳格化は経営の透明性を確保しようということ、つまり株主や投資家、マーケットに評価されるようになろうということで、その目指すところは“売りやすい会社”“買いやすい会社”ということになるからだ。

 なんせITサービス会社の会計処理は、上場企業でも各社各様。それに、失敗プロジェクトの仕掛品が優良な資産として計上されてあったり、スルー取引など「異常な商社的取引」が横行したりするから、第三者には会社の値段を付けるのが極めて難しい。ITサービス会社には対しては「人が資産なので企業価値の算出が難しい」とよく言われるが、実際にはITサービス会社の多くが会計処理などがずさんで経営実態がよく見えないから価値算出が困難なのだ。

 皮肉な物言いだが、ITサービス会社にとっては、透明性のない会計処理が今のところ最も効果的な買収防止策なのだ。最近、ITサービス会社を買収することを決めた企業が、相手の企業価値の評価に四苦八苦しているという話も耳に入ってきている。こんなことでは、あの堀江さんでもITサービス会社を買収することは困難だろう(もっとも彼がトラディショナルなITサービス会社を買収したいと思うなどとは想定できないが)。

 さて、ITサービス会社としてはどうするか。ITサービス産業の構造変化、会社法や会計基準の策定などの制度改革、そして外国企業の本格登場に、マーケットからの圧力など、すべての経営環境が変革を求めているようだ。つまり、ITサービス会社の方向性は“買収されやすいけど買収されにくい会社”を目指すしかないのだ。経営の透明性を高めることで会社の値付けを容易にするが、規模の拡大などを通じて企業価値を高め敵対的買収を困難にする。結局、そうした王道しかないだろう。