YOUTH

青春とは人生のある期間ではなく 心の持ちかたを言う
by Samuel Ullman

額賀澪「競歩王」

2020年01月26日 | Weblog

近藤史恵のロードバイク小説や佐藤多佳子の「一瞬の風になれ」や三浦しをんの「風が強く吹いている」、桂望実の「Run! Run! Run!」、増田明美の「カゼヲキル」などのように競技そのものを描いた作品ではありません。

大学生作家の主人公は高校生の時に作家デビューしそこそこ売れているが、作品がマスコミを賑わせることが少なくなりややスランプ気味である。エゴサーチしてもデビュー作が一番だったなどの発言を目にし、同時デビューした作家が文藝賞にノミネートされたなどのニュースに落ち込むことが多くなってきている。

編集部の担当に新作へのアイデアとして競歩を取材してみないかと助言され、同じ大学の陸上部唯一の競技者を紹介された。長距離走では1年生にも歯が立たないタイムの持ち主の2年生八千代である。八千代は箱根を目指して大学陸上部に入ってきたが、長距離走を諦め競歩に転向したばかりであった。

NHKの情報によると、日本のほとんどの競歩競技者は長距離走の脱落組(言葉が悪くてごめんなさい)のようです。

この二人の出会いから、箱根駅伝に出られない陸上部員ウォーカーと、世の中には面白い本がごまんとあるのに小説を書いていたいのかと自問する作家とが、ともに葛藤や困難を乗り越えていくストーリーが展開される。

競歩に無知な作家が少しずつ競歩に興味をいだき理解していく構成の中で、我々読者に競歩がどれだけ孤独な競技であるのかを印象づけている。確かに私にランニングで知り合った友人は多いが、歩いているのはただ独りです。

ロス・オブ・コンタクトやベント・ニーという歩形を逸脱した場合の警告を少なく、いかに速く長い距離を歩くかという困難が色々と説明される。この辺からいっそ走ったほうが楽なんだろうなぁと思わせる。

片足は絶えず地面についていて、前脚は接地の瞬間から地面と垂直になるまで膝を曲げずに20Kmや50Kmを歩き続ける。いまや世界最高水準にある日本競歩陣なのに、人気のある競技とは言えない。東京オリンピックを機会に興味を持つ人が増えるのか楽しみな気もする。

参考:
NHK「おはよう日本」  
NHK SPORTS STORY 


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1 コメント

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Unknown (NAOJI)
2020-01-27 20:52:12
感想ありがとうございます。
競歩って日本ではマイナーな種目ですもんね。私も自分が始める前はマスターズで競歩があるんだなぁとぼんやり見ていたものです。

それから私も膝の怪我がきっかけなのでネガティブな理由ですけど、やってみると面白い競技なんですよ。(性格による適性があるとは思うけど)
マスターズではウォーキングの延長で競歩を始める人が多いので学生よりはネガティブじゃないと思います。ヨーロッパやオーストラリアでは人気競技らしいです。

それと実際のレース中は走った方が楽とは思わないですね。急に走れと言われても頭の中が競歩モードになってるので一瞬考えないと走れなくなったりしてます(笑)
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