Nasebanaru

アメリカで趣味と生活を綴る

旅の途中で (銃社会)

2009-02-12 02:56:24 | 旅行
アメリカが銃社会であることはご承知のことと思います。

先日私がいつも利用している銀行が二人組みの強盗に襲われ、警察に追い詰められた挙句撃ち合いとなり、2人組の強盗のうち1人は撃たれて逮捕されたのち病院に運ばれその後死亡しました。


強盗事件を報じるローカルの新聞


私の店からも車で5分位のところにその銀行はあります。容疑者は他にも2件の銀行強盗をやっていて指名手配されていたそうです。

最近は景気が悪いこともあって、こう言う暗い話をこの田舎町でもよく聞くようになりました。この前も警察官が店にやってきて「もし強盗に銃を向けられたときどうすべきか」と言う話をしてくれました。こうやって地域の商店にも犯罪に対応するための心構えを植えつける事もこちらの警察の仕事のようです。ちなみに答えは「抵抗せずレジのお金を全部渡し、強盗が去ってから警察に通報する」が正解です。結局お金は失うのね。

16年前の旅の途中。

その日もただ黙々とペダルをこぎ続けていました。小さな町を通り過ぎ、また次の町まで延々と続く道を走っていました。右も左も牧場で、町から少し離れたところまで来ると自転車に乗った人間がこの道を通ることを見ること自体かなり稀なようで、何十頭もかたまって草を食んでいた牛たちがすべて振り向いて私のほうを見ていたり、フェンス脇で私と併走する馬がいたりでなかなか面白いところでした。

そんな田舎道ですから車も何分かに一回見るくらいでした。

また車が一台後ろから近づきます。この車は他の車が私を追い越して行くときとは違い、かなりゆっくり走って私を追い越してゆきました。

私を追い越したその時です。

後部座席に座っていた人間が開けた窓から腕を外に伸ばします。その先には銃が握られていました。

そして空に向け一発発射。

一瞬の出来事で私はわけが分からず、ただものすごい轟音で体が飛び上がり、もう少しで自転車のハンドルを切り損ねるところでした。

実際に銃を撃つ所を見たのはこれが初めてでした。彼らは一発撃ったあとは猛スピードで走り去ってゆきましたのでただ私をからかうつもりだったようです。

「でもあれがもし麻薬常習者でたまたま今日はいらいらしていて、その人がたまたまアジア人を殺したいなんて思っている瞬間に出くわしていたらどうしよう」などとその後考えながらまたペダルを踏んでいました。

以前も書きましたがある田舎町のスーパーに立ち寄ったとき、山盛りのりんごの横にあるショーケースに銃が並べられて売られていたのを見たときショックを受けました。拳銃からなんと自動小銃まで売られているのです。

旅の途中に出会った友人のリンカーンも私に旅行中の銃の所持を熱心に勧めてくれました。

「ここはアメリカなんだ、あなたのような旅行者は特に狙われやすいから銃は持っておいたほうがいい。俺が店で購入してお前に持たせてやってもいいがどうする?」

と真剣に言うのです。ちなみに彼は以前も書いたとおりごく普通の、いやそれどころか平均的なアメリカ人以上の親切心を持つ青年でした。その彼が真剣な顔をして言うものですから困ってしまいます。

「でも私が護身用に銃を持ち歩いたとしても私が帰国する時はどうするんだい。日本に銃は持ち込めないよ。」と言うと、

「ああ、それは帰る前に川にでも銃を捨てればいい」

とあくまで銃の所持を薦められました。親切な彼だったからなおさら遠い外国からアメリカまでやってきた私の身の安全のことが気になったのでしょう。気持ちはありがたかったのですが、このときはやはり断りました。

商売をしている今でも銃は持ち合わせていません。ただ身近で冒頭に書いたような事件が起こるたびにリンカーンの言葉が私の胸によみがえります。

この国民の銃の所持を支持する立場の人は

「銃が人を殺すのではない、人が人を殺すのだ」といいます。

もっともな理屈ですが自分の大事な人が誰かの気まぐれで銃により殺されたとしたら…それでも銃はあったほうがいいと思うのでしょうか。





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