飲み物に関してもういくつか思い出がある。
ひとつは謎の自販機。
アメリカでは自販機の存在自体が珍しい。自販機ごと持っていかれることが多いからだと聞いた。だからなおのことあの自販機のことを思い出すのだ。
あれはどこかの山あいのお店だった。日本でも峠茶屋というのがあるが、あれに似たような雰囲気の店があった。あった、と書いたが、すでに長いこと営業はしていないらしく、店にはいるとそこはもうお化け屋敷 . . . 本文を読む
数ヶ月に及んだ旅行で、正確には分からないが、かなり体重が落ちた。もともと贅肉は余りつけていなかったが、特に顔の頬がスリムになっていることは鏡を見ても分かった。毎日激しい運動をしているのだから無理もないが、もうひとつ、重要な理由があった。
食事をとることが困難だったことである。
米と味噌は日本から持ってきた、と書いたが、毎日炊けるものではない。森の中で野営をするときは、コンロを暖めるために使うガ . . . 本文を読む
旅行中、いったい何回パンクを修理したことだろう。修理に必要なパッドは十分持って行ったが、旅の半ばですべてなくなり、現地調達しなければいけない羽目になった。
現地調達と一言で言ったが、町の中は基本的に走らない、それに町の中の正確な地図がない、英語が読めない、ときては、修理道具を売っている店を探すこと自体が至難だった。店のつくりや、ショーウインドウを見てみてここにはあるかも、と思ったところは片っ端か . . . 本文を読む
アメリカはメキシコと地続きなこともあって、多くの不法移民が現在でも流れ込んでいる。中には越境時に麻薬を運んでくる不届きな輩もいて、国境に接する州は特に不法移民に目を光らせている。
ジョージア州を走っている時の出来事。
ところで私は一日どれくらいの距離を走っていただろうか。その日に走れる距離はその日の天候、地形に特に大きく左右される。雨の日はよほどのことがない限り、テントの中でじっとしていたし、 . . . 本文を読む
グランドキャニオンで出会った人、その2。今度は日本人女性。
昨日書いたドイツ人の彼の名前は忘れてしまっているのに、この女性の名前はまだ覚えている。女性に飢えていた若さゆえか。でも実名は出せないのでMさんとしておく。
アメリカで生活していてもよく、どうしてアメリカに来たんだ?という質問をアメリカ人からされる。自転車旅行に来たのが最初だ、と言うとみんな一様に驚く。だが私は旅の途中で昨日のドイツ人の . . . 本文を読む
グランドキャニオンで出会った人。
グランドキャニオンの景観が素晴らしかったことは前にも書いた。結局3泊だけの滞在だったが、ずっと居たくなるような、そんなところだった。そしてここでも何人か面白い人に出会った。
一人はドイツ人の青年。
彼とはたまたまキャンプサイトが隣同士だったことで知り合えた。彼との会話した内容を書くが、それはたまたま近くで同じようにテントを張っていた日本人が居て、彼が通訳して . . . 本文を読む
昨日の文を読み返して見て、高速道路を自転車で走ってはいけないことが分かっていてどうして敢えて使っていたかの説明がなかったことに気づいた。答えは簡単、それが一番の近道だったからだ。町と町をつなぐ高速道路は最短距離で結ばれている。ほかにもローカルの道があったが、それでは時間がかかると思い、警察に注意されるのを覚悟で高速道路を使っていたのだった。
昨日の続き。
泣く泣く自転車を放棄して徒歩で高速の出 . . . 本文を読む
自転車の旅を続けているといろいろな人に出会う。車で走れば絶対会うことはない人々に出会えることが、自転車旅行の魅力なのかもしれない。
ジョージア州アトランタ近郊を走っているときの出来事。
あの時はメーコンという町にある航空博物館を目指して走っていた。
ここまで来ると、法律上、自転車で高速道路は走ってはいけないことは知っていた。ここまで一度も高速上で警察に注意されていないことが奇跡的だった位だ。 . . . 本文を読む
グランドキャニオンにやってきた。あの景色は言葉では形容しがたい。視界全体に広がる空と谷。眼下に鳥が飛んでいる不思議。旅の最初の目的地、グランドキャニオンは私が想像していたよりはるかに素晴らしい場所だった。
自転車はリンカーンの実の母親の家に預け、私はアメリカで初めてバスに乗り、ここまでやってきた。もともと自転車だけの旅をするつもりだったのだが、そうすると私のアメリカでぜひ行きたい場所リストを全て . . . 本文を読む
私が道路脇でうなだれているとき、数台の車が私のそばで停車した。まずは大型のタンクローリー。大きな車だから、運転席から降りて私のところに歩いてくるまで少し時間がかかる。
「乗ってくか」(私は勝手にそう理解した)
「自転車がある」
「自転車は乗せられないなあ、お前だけでも来るか?」
「それはできない」
「そうか、じゃあ気をつけてな」
そう言ってタンクローリーは行ってしまった。こっちから頼んでもいな . . . 本文を読む