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足立区の団地に引っ越して来て

八ヶ月たちました。

あいかわらず、お金も仕事も

ありませんが、生まれつき貧乏

なので、とくに辛さは感じません。

ただひとつ、もしも願いが叶うなら、

隣の家のご飯のおかずがくさいので、

神さまなんとかしてください。

隣に住んでいるおばあさんは、

品のある愛想の良い人で、ちっとも

嫌いじゃないんですが、

週に二回ほどのペースで、

ねずみの肉と深海魚のはらわたを

甘酸っぱく煮込んだ猫の餌のような

スープを作る習性があり、悪臭が

窓から入って来るので困ります。

とうちゃんも、まだ実物は見た事が

無くて、漂ってくる臭いから判断してる

だけなので、材料とかあてずっぽ

なんですけど、アマゾン川流域の少数

部族から伝わった秘伝のタレに、

靴下の匂いを混ぜ合わせたような

ねばりつく臭いが、とにかくもう

臭くて臭くて……。

夕方匂ってくることが多いんですが、

油断してると、突然お昼過ぎに煮込み

始める日もあって、そうするとベランダ

づたいに流れ込んで来るその匂いが、

うちの洗濯物にこびりついちゃうので

あわてて引っ込めなくちゃならないん

ですよ。

でも洗濯物の生乾きの臭いの方が、

何億万倍もはるかにましなので、

思いっきり吸い込んでも、すがすがしい

と感じるほどなのです。

こういう記事を書くと、またとうちゃんが

ウケを狙って大げさなはなしをしているな、

と思うかもしれませんが、誓ってそうでは

ありません。

その証拠に、今日は上の部屋の人が、朝から

家具を運び出すため、ガラガラと大きな音を

響かせていて、いったいどうしたのですかと

聞いてみれば、おかずの匂いにガマンが

できないから田舎に帰ることにしたのです

と言うに違いないのです。

とうちゃんは恥ずかしがり屋さんなので、

いったいどうしたのですかとは聞いて

ないから、ガラガラという音から判断して

いるだけなので、あてずっぽなんですけどね。

でもほんとに臭いんですよ。

八ヶ月間も嗅いでたら、頭がおかしく

なりそうな臭いなんです。

この文章が少しおかしいのがなによりの証拠です。