父ちゃんがまだ子供だった大昔、
隣のおばあちゃんが亡くなった時の事です。
亡くなったおばあちゃんの親戚にあたる
小太りのおばさんが声をひそめ、
私は、おばあさんが死にそうだということは
知らされていなかったんだけれど、
昨夜、ご飯をよそっていたら、
木のおしゃもじが突然ぴしぃっと割れた。
だからきっと何かあったんだと気がついた。
そうしたらすぐに電話が鳴って……。
という話しを始めたんですよ。
……?
小太りおばさんは、おばあちゃんが
死んだことを知らせに来たんだって
言い張って、聞いてる人も
「ふんふん、きっとそーにちがいない」
と言うんですけども、
死にかけてる時に連絡入れずにおいても
差し支えないような遠い親戚の家の台所の
しゃもじを、死んでからわざわざ
(しかも、そのあとすぐ電話で伝えるというのに)
突然ぴしぃっと割って知らせる必要が
何処にあるというのか。
この大人たちは馬鹿じゃないだろうか。
と、子供父ちゃんは考えました。
知らせ方もちゅーとはんぱだから、
何かあったとしか伝わってないしなあ……。
考えれば考えるほど馬鹿です。
台所なんてしょっちゅうガチャンガチャンて
何かしら壊れるトコだし、年取った人はよく
死ぬでしょ。
よくあることどうしだから同時に起こるのも
無理ないですよ。
なのに「ふんふん、きっとそーだ!」
そんなふうな大人たちが、みんなで集まって
馬鹿な力を合わせて作ってるのが
この世の中だと気づくと、これはかなり怖いです。