さて、映画の感想。周知の通り、品川庄司の品川ヒロシの初監督作だ(過去に短編を撮ったことはあるらしい)。しかし、それを知らずに観たら、きっと普通の職業監督の作品だと思ったろう。つまり、かなりソツがない出来映えなのだ。ケンカの場面は迫力があるし、笑わせてくれる箇所も多い。少なくとも、最後まで退屈はさせない。娯楽映画としての及第点はクリアしていると言っていいだろう。って、偉そうな書き方ですが。
しかし、どうも落ち着かない気分になる映画でもある。最初から最後まで、ずっと「それでいいのか?」と思えてしまうのだ。簡潔に言えば、暴力を安易に使い過ぎじゃないか、ってことである。
※お気に入り度→★★☆☆☆(5点満点で2点)
※公式サイト→http://www.drop-movie.jp
映画の中では「人はそう簡単に死なない」という言葉が何度も繰り返される。そして、準主役である水嶋ヒロは、金属バットで人を思いっきり殴る。クルマで不良集団の群れに突っ込む場面もある。確かに誰も死なないのだが、それって運が良かっただけのことじゃない? 打ち所が悪ければ死ぬって。
野暮を承知で言わせてもらうと、「これ観たガキが真似したらどうする」と思っちまった。ほら、「最近の若いヤツはケンカの経験が少ないから手加減を知らない」って、よく言われるでしょ? それが本当だったら、ケンカ慣れしてない若者は「あの程度なら死なないんだ」とマジで思っちゃうかもよ。「人はそう簡単に死なない」ってのは事実ではあるが、「人は呆気なく死んでしまう」というのも、また事実なのだ。
この映画でも、「人は呆気なく死んでしまう」というエピソードは盛り込まれている。しかし、それに関しては、はっきり言ってお粗末。監督の品川ヒロシは、おそらくアクションシーンには嬉々として臨み、気合いを入れて撮ったのだろう。その成果は画面に現れている。しかし、悲劇的な場面に関しては、面倒くさかったのか照れくさかったのか、あまりにも安直で、ありふれた演出に終始しているのだ。というか、このエピソード自体に無理がありすぎ。懸命に蘇生処置を行う医師を父親が止めるとこなんて、思わず失笑しそうになっちまった。何年も病で臥せっているならともかく、ほんの半日ぐらいでしょ? 諦めるのが早すぎ。ついでに書くと、建築現場で落下するシーンの撮り方もヘン。
そもそも、「人はそう簡単に死なないが、時として呆気なく死んでしまう」ということを描きたかったのなら(そうじゃないなら話は別だけど)、事故死ではなく、何らかの暴力によって死ぬ、という展開にすべきだった。暴力の魅力を描いた映画は古今東西無数にあるが、その多くは同時に暴力の恐ろしさも描いている(よね?)。この『ドロップ』での暴力は、ただ単に「カッコいい」だけだ。それが悪いとは言わないが、結果的に薄っぺらな作品になった感は否めない。
品川ヒロシ本人も少しだけ出演している。面白かったのは、そのシーンで客席に何の反応も起こらなかったことである。たとえば、ドランクドラゴン塚地が主演した『間宮兄弟』や『ハンサムスーツ』で相方の鈴木がチラッと姿を見せると、あちこちから笑い声が聞こえた。チュートリアル徳井主演の『天国はまだ遠く』で福田が登場するシーンでも、同じような反応が起きた。しかし、この『ドロップ』で品川と相方の庄司が出てきても、ざわめきも笑いも一切なし。あまりの無反応ぶりに思わず大笑いしそうになっちまった。
考えてみれば、この映画を観に来た客は、別に品川ヒロシを好きなわけじゃないもんね。女性客に関しては大多数が水嶋ヒロ目当てで、残りの2割ぐらいが成宮寛貴目当てだろう。もしかしたら、客の大半は品川本人に好意を持ってないかも。って考えると、ちょっと気の毒にも思えてきたぞ。えっと、「小賢しくてウザいヤツ」というキャラが定着している品川ヒロシだけど、僕は決して嫌いじゃないです。実際のところ、才人であることは間違いないし。
ビックリしたのは、レイザーラモンHGが素顔で出ていたこと。というか、エンドクレジットで名前が出るまで全然気付かなかった。なかなかの好演じゃないだろうか。
女優では、主人公のお姉さん役の中越典子が良かった。ヒロインの本仮屋ユイカも悪くはないけど、あまりにも見せ場がなさすぎて気の毒。完全に添え物扱いだもんね。
楽しかったのは、遠藤憲一と哀川翔の掛け合い。一方、次長課長の河本は少々スベり気味。でも、客席からは笑い声が聞こえた。いまどきの若者にもコテコテのギャグはウケるわけだね。
それにしても、これが中学生たちの話だってのがスゴいよね。実を言うと、途中までは高校生の話だと思っていたのよ。冒頭で「公立中」って言葉が出てきた気がするけど、どう見てもみんな中学生に見えないもんね。いや、高校生にも見えないんだけどさ。
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