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とりわけいただけないのが、そこかしこにあるアフォリズムめいた言説の数々です。<中略> そうした同人誌調ナルシスト言説には、正直言って辟易してしまったんですの。
<中略>
そのぎくしゃくとした語りを、「だからこそ等身大で、だからこそ胸に訴えかける」と賞賛するか、「小説の体をなしていない」と否定するかで、評価は二分されるんでありましょう。
「TVブロス」2005年19号 P.111より
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うん、その通り。うまいこと言うなぁ。実際、マジな部分と教訓めいた部分のバランスが中途半端で、どうにも居心地が悪いのだ。
そもそも、この本を小説だと思って読み始めると、大きな違和感を覚えることになる。最初の数十ページは、いわゆるタレント本みたいなノリなのだ。リリー・フランキーがテレビにもよく出ている有名人であることは知っているが、僕自身はあまり見たことがないし、実は著作を読むのも始めてだ。ずっと前にナンシー関との対談集を読んだり、雑誌に載っているコラムを斜め読みしたことはあったものの、さほど強い印象は残っていなかった。なので、『東京タワー』の最初の数十ページでの「ボクの部屋にようこそ」的な雰囲気に、どうも居心地の悪さを感じてしまったのだ。これは、常連客ばっかりの喫茶店に入ってしまった時の気まずさに似ている。
とはいえ、さすがに人気コラムニストだけあって、中盤はグイグイ読ませる。面白い。自堕落であることを自覚しながらもそこから抜け出せない姿には共感を抱くし、母親を真っ直ぐに慕う気持ちにも好感が持てる。そうだ、これは小説じゃなくて自叙伝、もしくはエッセイなんだ。先に言ってくれよ。そう思いつつ、一気に残りを読み進めようとした。しかし。
う~ん、母親への思慕の情は充分すぎるほど伝わってくるんだけど、如何せん長すぎる。豊田さんの言葉を借りると「アフォリズムめいた言説」が多すぎる。あ、アフォリズムってのは「金言」とか「警句」とかって意味ね。つまり、筋を語るのではなく自己主張を述べる部分がいささかクドいのだ。相田みつをの詩をそのまま引用する辺りなんて、思わず赤面してしまったもん。いや、世間でダサいとかクサいとか思われているものを真っ直ぐに評価する姿勢は悪くないんだけどさ、ひねりも照れも微塵も感じられないのには少々たじろいでしまうのよ。それがリリー・フランキーの誠実さである、と言われれば返す言葉はないんだけどね。
引き合いに出すのはナンだが、このあとに読んだ姫野カオルコの『ハルカ・エイティ』は、アフォリズムと物語のバランスが絶妙な傑作だった。そちらの感想は、また改めて。
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