しまった、少し前に『空気人形』の感想を書いてたのに、ここにアップしてなかった……。
名古屋では名演小劇場で公開中ですが、今週金曜で終わってしまいます。超オススメってわけじゃないけど、女性の美しい裸体を拝みたい方は必見!
※以下、ネタバレ少しあり
風船や浮き輪に空気を吹き込むのが苦手だ。肺活量が乏しいってこともあるけど、それだけじゃない。うまくコツを掴めないので、賢明に息を吹き込んでも風船や浮き輪は全然ふくらんでくれないのだ。要は不器用なのである。
ついでに書くと、口笛も吹けないし、人差し指と親指でパチンと音を鳴らすこともできない。一輪車にも乗れないし、バック転もできない。フラフープもうまく回せないし、どんな楽器もまったく弾けない。呆れるほどに有用性が低い存在なのである、オレってヤツは。
しかしまあ、口笛や指鳴らしや一輪車やバック転やフラフープや楽器ならば、それができなくても命にかかわる問題ではない。だが、息を吹き込むことが下手だと、助けられるはずの命を助けられない、という事態も生じてしまう。
『空気人形』の主人公はダッチワイフだ。ある日突然「心」を持ってしまったダッチワイフは、人間と一緒に働くようになる。恋心を抱き、好奇心を持ち、悲しみも味わう。だが、もちろん人間になることはできない。
ゴム製の皮膚に生じた裂け目から空気が漏れ、彼女の身体がしぼんでいく場面がある。彼女の初恋の相手でもある青年は、もちろん驚くものの、すぐに彼女を助けようと処置をほどこす。へその部分にある空気穴から息を吹き込むのだ。そして、彼女の身体は元通りになり、二人は抱き合う。最高に素敵なシーンだ。
この美しい光景を見ながら思ったのは、「オレもうまく空気を吹き込めるようにならねば!」ってことである。でなきゃ、ダッチワイフの恋人ができた時に困るじゃん。……そういう問題か?
この映画で惜しいのは、終盤の展開に説得力がないこと。「あれほど社会生活に馴染んだなら、そんな勘違いするはずないじゃん」と思えてしまうのだ。作り手は、想定していた結末(もしくは原作通りの結末?)にこだわりすぎたんじゃないだろうか。
もうひとつ、群像劇としての完成度が低いことも残念。心に傷を抱えた人々がたくさん登場するわけだが、別に主人公に絡むわけでもなく、何らかの関係性が生じるわけでもないのだ(生じる者もいるが)。しかも、半分以上は存在にリアリティを感じられない。作り手が頭の中で作り上げただけの薄っぺらな人物像でしかないように思えてしまう。
とはいえ、そうした欠点を補って余りあるほど、空気人形を演じるぺ・ドゥナが素晴らしい。これほど美しい裸体を見られる機会もめったにないだろう。特に、空気入れを使って自分で自分に空気を吹き込むシーン! いやはや、目の保養になりましたです。ごちそうさま。
というわけで、一首。
僕ならばうまく空気を吹き込めず しぼむ彼女をただ見てるだけ
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