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シン・ゴジラについて。

2016-07-31 23:40:07 | キスオカントクのつぶやき

 

こんちゃっす。キスオカントクです。


こないだ「シン・ゴジラ」を見てきたのですが、
あまりに良かったので紹介します。

(ネタバレが多少含まれますのでそれがヤダ、
と思われる方はごらんになった後で当記事を
ごらんください。
また、映画の内容についてもっともっと知りたい!
と思われる方は事前情報をあまり知ることのない状態で
映画館にて鑑賞されることをおすすめいたします。)

●私は常々、いい映画とわるい映画の見分け方は
冒頭の5分間で判断するのです。

その5分間で
「この映画はどういう映画なのか?」
「どういう人間が出てきて何がおこるのか?」が
提示できてない映画は大抵ダメ映画です。

この「シン・ゴジラ」はその冒頭が非常に簡潔且つ
テンポ良くつくられており、そしてこの部分は
作品全体の素晴らしさを見事に保証するものでした。

●作品の内容はいわゆる「怪獣映画」です。
ものすごくザックリ言うと
「怪獣が出てきて人間が右往左往するお話」です。

映画という表現形式での「物語」が
「登場人物の葛藤」である以上、
そこに出てくるキャラクター同士は何らかの
意思の疎通をしなければいけませんが、
「怪獣映画」の場合、もっとも重要な登場人物である
「怪獣」がやはり重要な登場人物である
「人間」とほぼ、あるいはまったく意思の疎通が
できないという構造的な矛盾を孕んでいます。

(意思の疎通ができる「人間」が「怪獣」そのものに
なったり「人間」に戻ったりする便利な存在・新基軸の怪獣
として「ウルトラマン」は円谷プロ制作チームの
素晴らしい発明だと思います☆)

そこでもう一方の「人間」同士の葛藤を描くしかない
のですが、この「シン・ゴジラ」では特定の避難民の
グループや科学者のもっさりとした葛藤は描かず、
「擬人化された災害そのもの」であるゴジラが出現した
場合に日本政府の政治家・役人と自衛隊がいかに対応して
ゆくのか?という一点をキリで射抜くような
「状況」の描写で押し切ったところが、非常に好感がもてました。

プロの集団が何かの危機・プロジェクトに立ち向かい
切り抜ける展開の庵野監督・樋口監督の関わってきた
「王立宇宙軍」「新世紀エヴァンゲリオン」を想起し、
あるいは押井監督の「機動警察パトレイバー2」
の影響を感じさせます。

この日本政府の各方面のプロたちは専門用語をかなり
早口で喋るのですが、
(その元となった実際の人たちの話ぶりを取材の時に
録音して俳優さんたちに聞かせて演じてもらったそうです。)
その情報量の高さに今作の映像ソフト購入の渇望を
感じさせられてしまうのはやはりエヴァンゲリオン的であり、
庵野・樋口監督の経験が良い形で生かされたの
だと思いました。

●そんなチームとしての人間の描写の上に、
そしてゴジラの出現という「巨大災害」の
臨場感も素晴らしかったです。

臨場感といえば私は何と言っても
「機動警察パトレイバー2」を挙げるのですが、
東京の街の丁寧なロケハンと超一級のスタッフのレイアウトが
この作品の臨場感を支えています。

「シン・ゴジラ」の臨場感も政府関係者や自衛隊への取材と
CG制作や俳優の撮影時のレイアウトの緻密さが作り出して
いるように思います。

市街地にいるゴジラへの発砲許可に逡巡している
総理大臣のいる部屋、
ゴジラに対峙する攻撃ヘリコプターや戦車兵のいる
コクピット、
破壊されていく街から逃げ惑う避難民の走る
道路は、

「臨場感」とは何だろう?と考えた時まさに
「その場に居合わせている」ような感覚だと言えますが、
この映画はそれが達成されていました。

●最後になりましたが「ゴジラ」そのもののデザイン・造形も
「商売」がまず前面に出ていない禍々しいもので、
この映画、いや昭和29年の初代「ゴジラ」が持っていた
荒ぶる神のような迫力がありました。

●恐ろしい映画ではありますが、これらの要素で私は
鑑賞中非常な多幸感に包まれラスト近くの東京駅での
スペクタクルシーンで涙にむせんでしまいました…

庵野・樋口監督の作品群や御二方にこれまで影響を与えていた
作品、そしてその作品を制作した方たちが影響を受けた作品の
その果てにこの「シン・ゴジラ」という抽出液はあるよう
に思います。

この抽出液はゴジラがキャラクター化する前の初代「ゴジラ」
に対しての新たな解答であると同時に「正解」が出たように思え、
とてもうれしい気持ちでいっぱいです。

この「シン・ゴジラ」を制作した庵野監督・樋口監督・
全てのスタッフ・全てのキャスト・関係者の方々に感謝と
これからのお仕事がさらに良いものになることを
心からお祈りいたします。