萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

第69話 煙幕act.1―another,side story「陽はまた昇る」

2013-09-23 13:43:52 | 陽はまた昇るanother,side story
And often is his gold complexion dimm'd



第69話 煙幕act.1―another,side story「陽はまた昇る」

灯りを消して?そう告げたのは今、自分の姿を見られたくなかったから。

あなたに今は自分を見てもらえる自信なんて無い。
あの夜に初めて抱かれて晒した肌、貌、そして心は今もう変わってしまった。
そう解っているから最後なら今、あの幸せだった夜たちのまま自分を憶えていてほしい。
そんな願いは今あの扉を潜ってしまう瞬間にも傷むまま優しくて、マスクの影で周太は微笑んだ。

―さよなら英二、この扉から帰ってこられないかもしれないから…ね?

人は居る、けれど粛清の静寂に人々はただ歩いてゆく。
機動隊員と同じ装備、けれどマスクした顔は誰なのか互いに解らない。
こんな姿は銃器レンジャーの時と変わらないだろう、それでも緊迫感が違い過ぎる。
そんな今に想ってしまう、父が亡くなった春から自分はどれだけ遠い場所に来てしまったのだろう?

―同じ術科センターなのに違うところみたい、こんなのは…お父さんもそうだったの?

この廊下は卒業配置された昨秋から幾度も歩き、毎日のよう射撃練習に励んだ。
一般採用枠から特練になど卒配すぐは選ばれない、そんな慣例と異なる選抜を自分は課された。
そして大会を2つとも優勝して今、こうして銃火の毎日へ歩みよるまま記憶ごと、あの扉が開かれる。

小さな金属音が立つ、ほら担当官が開錠した。

そのまま目線だけの指示に沈黙の列は扉を入ってゆく。
同じよう従って歩いてゆく視界、ふっと小さな痕が視線を惹きこんだ。

―あの痕は光一の、

心ひとり息を呑む、その真中で一発の弾丸は扉の把手ちかく煌めいている。



電動音、水音、それから自分の吐息ひとつ聞いてベッドに倒れこむ。

「…つかれた、ね…」

そっと呟いた部屋、誰も返事などしてくれない。
ただ洗濯機が回る音だけが響いて隣室の物音ひとつ聞えない、そんな静寂は孤独に変る。
誰も待っていないワンルーム、そして誰も待てない空間は自分以外の気配は欠片も無くて、独り周太は微笑んだ。

―本当に誰もいないって初めてなんだ、ね…良かったのかな、

警察学校、新宿署、第七機動隊、どこも付属寮は食堂や浴室たち共同スペースで繋がっていた。
けれどワンルームタイプになるこの寮は完全独立型でマンション内の付き合いも何も無い。
むしろ隔絶されたプライベートに隠される、この秘匿と孤独に溜息こぼれた。

「…あいたいな、」

会いたい、逢いたい、大切なひと誰か今この傍にいてほしい。

こんなふう人恋しくなる本音は今日、入隊テストに削られた心が泣きたい。
まだ初日、たった8時間のテスト、それでも集中力から心身まで全て疲れ切っている。
ただ疲労感が瞳を瞑らせてしまう、動けないまま横たわる頬へ洗い髪から雫ゆるやか伝いだす。
そっと伝い落ちる水は唇ふれてベッドカバーに融けてゆく、その軌跡に温かい雫が追いかけ落ちた。

「怖い、よね、」

零れたのは本音、けれど誰も聴いてなどくれない涙また一つ墜ちる。
今日初日、入隊テストに課された狙撃実技は受験者自身も標的だった。

―銃口を向けられるって怖い、ね、

硝煙の蒼い翳、標的の出現、狙撃、そして自分も狙撃されて躱す。
こうした課題はあると予想はしていた、けれど初日から課されるとは思わなかった。
今までも銃器対策レンジャーで狙撃訓練は行っている、けれど「狙撃される」ことは全く違う。
こんなふうに警視庁特殊急襲部隊、SAT入隊テストでは恐怖すらも試験課題なのかもしれない。

―毎年こんなふうに試験してるのかな、明日も、その先も、

今日の現実に吐息こぼした胸が、ふっと迫り上げだす。
その感覚に周太は腕だけ延ばしてベッドサイドの床、近くに置いた鞄を開いた。
薬袋から取出してテルモスの水で飲下す、そんな仕草も慣れてしまった想いごと胸を押えた。

「起きないで、お願い…、」

両掌でシャツごと抑えこんだ胸に願い、寝転んだまま呼吸を整える。
いま自分の気管支はどんな状態か解らない、けれど喘息発作は未だ発現していない。
それでも今日のテスト内容は負担になっているだろう、そんな不安ごと周太は微笑んだ。

―だけど生きられた、今日は、

今日を生きられた、そう感謝する想いが昨日より深い。
今日を立った場所はまだ初端でも死線だった、そんな現実に未知も父の想いも気づける。
こんなテストが訓練という名に変わり日常になるだろう、それは今居る空間に解っている。

きっと自分はテスト結果に関係なく入隊するだろう。
だからテストを始める初日から直ぐ入寮して、このまま第七機動隊には戻れない。
もしテスト結果次第で入隊合否を決めるのならば、こんなふうに転居まで先に命令されないだろう。

そう解っているからこそ今日も必死でテストに集中した、どうせ結果が同じなら自分から受けて立ちたい。

―ね、お父さん?こういうのも、お父さんも同じ気持ちだった?

心そっと微笑んで29年前に遡る。
いま自分がいる場所は父にも現実だったなら同じ想いかもしれない。
そう想えるままワンルームの孤独は和らいで、ひとり静謐は安らぎに変わってゆく。

「お揃いだね、お父さん…もう独りじゃないよ?」

静かな部屋に微笑んで、廊下の向こうで洗濯機の音が変る。
もう乾燥モードに切り替わったのだろう、そんな機械音に家との違いは大きい。

―家ならベランダや庭に干して、お日様の匂いが気持ちいいよね、

ひとりベッドに臥した部屋、懐かしい庭と家に心が帰ってゆく。

あの門を開いて木が軋む、陽の照る飛石を踏んでゆく芝生へ木洩陽きらめかす。
今なら白百合、紅や黄色の鶏頭、秋桜、それから早い竜胆が紫紺に咲いたかもしれない。
初秋に咲く花々へ洗濯物ひるがえる風、その狭間には古い東屋が佇んで山茶花のもとベンチがある。

―あのベンチで本を読みたいな、お父さんが好きな、

あのベンチは父が造ってくれた居場所、そこで父は木洩陽に微笑んで本を読んでくれた。
父が亡くなっても本を読むのが好きな場所は母も好きで、そして、大切な笑顔も座ってくれる。

『周太、』

ほら、記憶からベンチで綺麗な低い声が呼んでくれる。
こんなふう想いだすことは幸せで、けれど今はもう逢えない現実が傷む。
今は逢えない、そんな今が続く時間の涯すら解からなくて、だから想い出すしか幸せが解らない。

―逢いたい、英二、

心が名前を呼んで泣きたくなる、けれど瞑った瞳から涙は零れない。
こんなふう自分が想うだろうと幾度も考えて、幾度も哀しくなる練習をしてきた。
だから今はもう泣かないでいられる、そして決めた覚悟のまま周太は手を伸ばして鞄から取出した。

『あいつからの頼まれモンだよ、』

そう笑って光一がくれた小さなオーディオ、そのイヤホン着けてスイッチを押す。
微かな機械音、それから旋律やわらかに流れはじめて優しいアルトヴォイスが歌いだした。

I'll be your dream I'll be your wish I'll be your fantasy 
I'll be your hope I'll be your love Be everything that you need. 
I'll love you more with every breath Truly, madly, deeply, do
I will be strong I will be faithful ‘cause I am counting on
A new beginning A reason for living A deeper meaning
I want to stand with you on a mountain…I want to lay like this forever…

Then make you want to cry The tears of joy for all the pleasure in the certainty
That we're surrounded by the comfort and protection of The highest powers
In lonely hours The tears devour you
I want to stand with you on a mountain…

やわらかな声と言葉は、懐かしい時間と想いを呼んでくれる。
ただ記憶だけ、それでも疲れ切った心に音楽は響いて紡ぐ記憶が温かい。

 That we're surrounded by the comfort and protection of The highest powers
 In lonely hours The tears devour you
 僕らは孤独を壊されて護りに抱えこまれてる 最上の力によって
 孤独な時にある時も 涙が君を呑みこむ時も

そんなふう謳ってくれる詞は綺麗な低い声を想い出す。
あの大好きな声、あの笑顔が贈ってくれた約束は独りの今すら温める。

『俺と一緒に幸せになろう?俺の幸せは、周太の隣でしか見つからないから、』

ほら、また記憶の声が幸せに笑ってくれる。
こんなふう想い出せるだけで嬉しい、この約束は現実にあったと微笑める。
たとえ今はもう約束は消えてしまったのだとしても、約束を贈られた時間の存在が温かい。

―俺にも約束をくれた人が居たんだ、その時ほんとうに心から想って願ってくれて…それだけで嬉しい、

周太、約束だよ?
俺は何があっても君から離れない、ずっと、永遠にだ、

あの約束は自分にとって永遠の幸福の時、それが叶わなくても変らない。
約束を贈られた七月の海は今も黄昏ふる光のまま、ずっと自分のなかで輝き続ける。
この歌を贈ってくれた去年の秋も、錦秋の雲取山も落葉松も、あのブナの大樹も色褪せない。

―大好き、こんな所に来ても好き、こんな時まで最初に想い出すのは唯ひとり、

本音こぼれる心のまま瞳を閉じて、ただ歌と旋律に呼吸する。
本当は唯ひとり声を聴きたい、声だけでも現実に聴いて繋がりたい、けれど出来ない。
きっと今ここで声だけでも聴いてしまったら崩れてしまう、そんな想い微笑んだ枕元で携帯電話が鳴った。

「…ん、」

着信音だけで誰か解かる、だから安心して周太は手を伸ばした。
瞳を披いて通話を繋げる、そして電話の向こうに微笑んだ。

「こんばんわ美代さん、演習林からだね?」
「うん、秩父演習林からよ?こんばんわ、湯原くん、」

いつもどおり優しい声は普段より弾んで、楽しそうに呼んでくれる。
きっと今、同じ時間に友達の居場所は幸せが笑っている、それが嬉しくて周太は微笑んだ。

「楽しそうだね、今日はどんなことやったの?」
「道の整備がメインよ、夏草が茂っちゃったトコとかあるでしょう?おかげで蚊に食われちゃった、」

可笑しそうに笑ってくれるトーンは明るく温かい。
この空気ふれるだけで楽しくて周太は笑いかけた。

「美代さんと賢弥、どっちの方がたくさん刺されたの?」
「あ、どっちかな?あとで見せっこしてみるね、青木先生は殆ど刺されなかったそうだけど、」

他愛ない会話に美代も応えて笑ってくれる。
いま大学の世界で森に居る大切な人、その笑顔が嬉しい向こう可愛い声は教えてくれた。

「イヌブナが素敵なの、きっと秋は綺麗よ?それでね、11月に自由見学日があるのだけど一緒にどう?」

友達が今居る世界を自分も見に行けるかもしれない?
そう告げられた言葉に嬉しいまま素直に笑いかけた。

「ん、行きたいな、シフトが大丈夫ならだけど、」
「11月最初の金曜と土曜なの、その日は講義も休みだけど湯原くん、仏文の都合とかある?あ、横から手塚くんが絶対に行こって言ってる、」

弾んだ声のまま笑って心配そうに訊いてくれる。
出来るなら一緒に行きたいから頷いて?そう伝えてくれるトーンが嬉しい。

―俺にも、一緒に行こうって言ってくれる友達が居てくれるね…美代さんも、賢弥も、

いま独りの部屋、唯ひとりの俤ばかり追いかけていた。
けれど今こうして笑顔をくれる友達は温かい、その感謝に今も約束したい。
本当は明日すら解からない現実にもう立っている、それでも未来を信じて周太は笑った。

「ん、その土曜日なら大丈夫かもしれない、またシフト決ったら言うね?」







(to be continued)

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朝寝と木洩陽

2013-09-23 08:57:44 | お知らせ他


おはようございます、連休3日目も曇&晴な神奈川です。

昨日は山行ったから朝寝しよっかなと思ったのに、いつも通り起きられました、笑
だから今から近場の森にでも行こうかなと考えています、風も涼しくて気持ちいいし太陽が良い感じなので。
昨夜の分をちょっと加筆校正してからですが、笑

で、今から「初衣の花、睦月act.5」加筆校正します、
そのあと第69話「山塊3」と文学閑話をなにかしらって予定です。

取り急ぎ、

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杜燈火―morceau by Lucifer

2013-09-22 23:45:39 | morceau
To me the meanest flower that blows can give
Another sky of E



杜燈火―morceau by Lucifer

震える手、けれど扉を開いて外に出る。

運転席の影から広がった世界は森、そして古く清らかな家。
大きすぎない擬洋館建築はシンプルに美しい、その廻らす森は広かった。

「…奥多摩の森、」

見あげる梢は豊穣の葉擦れ、高く遥かに木洩陽ゆらす。
ふわり頬の撫でる風も山懐そっくりなまま樹木の馥郁が深い。

―こんな庭が個人宅にあるなんて、珍しいよな、

深い森、けれど一般住宅の庭。
そんなアンバランスは、けれど馴染んでいる森と家はしっくりと美しい。
こういう家と庭を護っている人、そう想うだけで溜息こぼれて微笑んだ。

「…やっぱり無理だ、俺には、」

無理だ、自分には勿体無さすぎる相手だ。

そう解っていた、だから雨のベンチで独りきり諦めた。
もう諦めたから、だから約束に頷いて門を潜って今ここにいる。
そんな判断は今ここに立ち、見て、正しかったのだと想えてしまう。

こんな美しい家と庭を護るひと、その隣に自分なんか相応しくない。

―これで諦められる、もう…このまま黙っていればいい、

心そっと想い微笑んでガレージから一歩、芝生の飛石に踏みこむ。
かたん、石とレザーソールが響きあいながら風はシャツを透かして涼ませる。
ふっとコットンを貫けた空気は肌を冷やして寛がす、その心地よさ微笑んだ向こう穏やかな声が笑った。

「おはよう…明日の約束、今日にしてくれたの?」

ほら、こんな抜打ちの来訪だって優しく笑ってくれる。

まだ早朝、けれど端正な浴衣姿は凛と佇んで歓迎の笑顔ほころばす。
こんな笑顔も言葉もすべてが本心なのだと自分には解って、解かるから募ってしまう。
それでも沈黙を決めこんだ想いのままに今、ここで決めたばかりの予定と笑いかけた。

「おはよう、朝早くごめんな?急だけど俺、明後日まで奥多摩の訓練に行くことになったんだ。それで今、ここから庭見させて貰おうと思って、」

本当は明日、庭を見せてもらいに来る約束だった。
けれど来られない理由を作って笑いかけて、その真中で黒目がちの瞳が自分を映す。
そっと睫伏せて、けれどすぐ見あげてくれた瞳は寂しい翳と優しく微笑んでくれた。

「まだ朝ご飯すませてないよね?よかったら一緒していって、コーヒーだけでも…どうぞ?」

どうぞ?

そう勧めてくれる笑顔は素直なまま信じて、疑ってくれない。
そんな笑顔に想いは沈黙のまま身じろぐ、その未練が鼓動を正直に軋ませる。
ただ痛くて、断って逃げたようとして、けれど森の片隅に緋色一輪ゆらいだとき声が出た。

「ありがとう、じゃあ庭だけお邪魔させてもらうな?」

ほら、あの花が自分を手招いた?そんなふう惹きこまれて一歩、また革靴は飛石を踏みだす。






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初秋初染

2013-09-22 20:56:17 | お知らせ他


こんばんわ、今日は三頭山@奥多摩に行ってきました。
コンナ↑感じに紅葉が始まってたんですけど、少雨&高温のため枯れ気味も多かったです。
それでも期待できそうなポイントが幾つかありました、来月半ば過ぎあたり行ってみたいとこです、笑

そんなワケで今朝UP「初衣の花、睦月act.4」今から加筆校正します。
終ったら第69話の続きとか掲載したいなってトコですが、寝落ちするかもしれません、

取り急ぎ、



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華燈火―morceau by Dryad

2013-09-22 00:39:11 | morceau
dites-le-lui pour moi ―導きの燈



華燈火―morceau by Dryad

庭の森に一輪、緋色の真紅が揺れて咲く。

木洩陽きらめく古樹の許に赤く一つ花ひらく、その場所は去年と同じ。
すぐ咲こうと蕾すっくり傍に並んで、あわい萌黄のラインは陽だまりの光の柱。
その先にはもう真紅が覗いている、きっともう明日には咲いて花の緋色あふれだす。

「…明日は一緒に観てもらえる、ね?」

独りそっと庭に呟いて、梢の風ゆるやかに鳴って風駈ける。
やわらかい木蔭の深緑に光ゆれて風は頬を撫でる、そんな朝は涼しくなった。
こんなふう風に季の移ろいを見上げた枝はもう、黄色あざやかに葉を染め変えていた。

今は秋、あの秋から時はどれだけ経たのだろう?

―あの秋が無かったら今、僕はどこに居たのかな、

独り心に廻らす秋の記憶、その数だけ時間と想いは降り募る。
あの秋も無く、あの夜も無く、この出逢いが無かったら今頃の自分は幸せだったろうか?

「ううん、…逢えたから今が幸せだね、ほんとうに…」

本当に今、幸せだと鼓動も深くから温かい。
この秋まで時は喜びだけじゃない、哀しみの方が多かったのかもしれない。
それでも、哀しみすら幸せの種に変えられたのは多分、あのひとに出逢ったからだろう。

「…早く逢いたい、ね、」

そっと零れた本音にほら、もう首すじ熱が逆上せだす。
きっともう紅くなってしまった、けれど朝早い庭は独り誰も見ていない。
そんな安心感に微笑んで素足の下駄を歩みだして袂に衿に、ふわり綿織の透らす風が涼ませる。
もう浴衣一枚で朝は寒くなってきた、この風の変化に微笑んで芝生の露をゆく背で門扉の音が軋んだ。

―こんな朝早く、誰?

まだ6時前、こんな刻限に誰が来るのだろう?
その不思議に見つめた樹林の向こう、知っている四駆がガレージに入った。

「…ほんと?」

予想外のこと、けれど信じたい、そんな祈る想いの真中でほら、運転席の扉が開かれる。








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秋、就眠?

2013-09-21 23:58:53 | お知らせ他
こんばんわ、眠いです、笑

いま第69話と「初逢の花、睦月act.8」加筆ほぼ終わりました。
あと校正ちょっとしたらドチラも校了です。

取り急ぎ、今日の風景とお知らせまで。




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知らない土地@近場

2013-09-21 21:48:55 | お知らせ他


こんばんわ、今日は↑コンナ場所を通りました。
テレビ神奈川の「キンシオ」っていう番組が結構好きなんですけど、地名で選んだ場所を散策するわけです。
それで↑ここが出てきて@神奈川県だったので、景色も良いアタリなんで今日ちょっと行ってきました、笑

このアタリは曼珠沙華、彼岸花の名所が多くてこの時期は田圃の畔で緋色が鮮やかです。
わりと穴場なトコなんですけど登山客や犬の散歩がてらな人を見かけました。
夕刻の光線を狙って行った所為もあるしね、花の道は静かでした。



というわけで今から加筆校正します、遅くなりましたが。
第69話ならびに「初逢の花」日付変わるまでにはって考えています。
そのあと短編一本UPしたいなって予定です。

取り急ぎ、







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第69話 山塊act.2-side story「陽はまた昇る」

2013-09-20 22:01:39 | 陽はまた昇るside story
And let the misty mountain-winds be free



第69話 山塊act.2-side story「陽はまた昇る」

空ふる雫が制帽の鍔を滴って、視界を時折きらめかす。

登山道の入口、森は雨に呼吸して深く息吹を醸し出す。
梢に濃やかな緑、幹くゆらす芳香、それから草と土のほろ苦い香。
レインウェアの肩を敲く雨は佇んだ登山靴を浸して波紋ゆるく描き出す。
雨ふる山の音と香、そして籠めだす霧の白く染めてゆく山嶺は薄蒼い闇に鎖される。

「定時には無線連絡すること、コノ雨ですから無理は絶対にしないで下さいね、ビバークのポイントが決ったら連絡をお願いします、」

指示を告げるテノールの声は朗々と雨と霧を透す。
前に並んだ第2小隊員たちの視線は真直ぐ向く、その中心で底抜けに明るい目が笑った。

「明日の午前9時、ココに全員きっちり無事に集合すること。予定変更は連絡お願いします、では各パートナーごと入山して下さい、」

全員、無事に帰還。
そう告げる笑顔は大らかなまま温かい。
この温もりに敬愛する山ヤを想い、そっと英二はため息吐いた。

―この雨に後藤さん巡回なんか出ないでほしいな、遭難救助も、

青梅署山岳救助隊副隊長、後藤は肺気腫を罹患した。
それを確定させる検査結果は出ている、あとは後藤の軽い風邪が治れば手術と決った。
その事実を知るのは警察内部でも極近い関係者だけ、それくらい山ヤの警察官にとって肺気腫はリスクが高い。
だからこそ今日の荒天に自分と光一が奥多摩に来れたことは幸運かもしれない、そんな思案の頬を小突かれた。

「ほら、み・や・た、ボケッとしてないで俺たちも行くよ?」
「…あ、はい、」

戻した意識に返事した視界、もう自分たち以外はルートに向かってゆく。
その一組ずつを見送る雨ふる視界、擦違いざま鋭利な瞳が振向いた。

「集中を欠くな、状況を考えろ、」

低い声、視線、ふたつ真直ぐ刺して歩き去る。
その言葉にプライドが引っ叩かれて平手一発、自分の頬を打った。

ばんっ、

頬鳴る音は雨のなか消されて自分しか聞こえない。
けれど隣の上官は大らかに笑って霧の山頂を指さした。

「一発キメたトコで行くよ?反論は口より脚でしちゃってね、」

口よりも脚、そんな言い回しが山の男っぽくて嬉しくなる。
それは今の指摘された事も同じで、そう気が付いた心解けて英二は笑った。

「国村さんも黒木さんも山の男ですね、」
「オマエもだろ?」

さらり笑って答えてくれる笑顔は雨にも明るい。
いつもの大らかな怜悧は落着いている、そんな上官に正直なまま笑いかけた。

「俺はこの1年で山の経験を積ませてもらって少し自信もついていました、でも今、黒木さんに言われた通り集中を欠いてたんです。
本当の山岳レスキューなら今みたいな状況でボケッとしてたら駄目です、どんな事情があってもプロとして冷静に集中して当り前です。
それが出来なかったら補佐官っていう立場も、国村さんの名前まで貶めることに今更だけど肚で気づけました、黒木さんの一言が効いてくれて、」

集中を欠くな、状況を考えろ。

それだけを言ってくれた黒木の声は鋭く厳しかった。
けれど厳しさの奥には経験と公平な優しい配慮がある、そんな男の言葉に英二は微笑んだ。

「黒木さんは言葉数が少ない分、一言が効きます。そういうの俺には未だ無いなって悔しいけど、正直ちょっと尊敬しそうです、」

これは今の自分の本音、認める事は悔しいけれど本心だから仕方ない。
そんな仕方ないは何か潔いまま愉しくて笑った前、底抜けに明るい瞳も笑ってくれた。

「黒木はそういうのがイイとこだよ、俺とはナカナカ馴染んでくれないけどね、アア言ってくれるなんて宮田はちょっと好かれてるね、」
「それなら嬉しいです、」

素直に笑って雨ふる梢を見上げた彼方、薄墨の雲は厚いまま流れゆく。
まだ雨は止まない、そんな観天望気に今日の登山計画ともう一つが気になって英二は提案した。

「国村さん、現時点の登山計画書提出についてもう一度、奥多摩交番に問い合わせても良いですか?」
「うん?ああ、よろしく頼むよ、」

すこし考え、すぐ即答して笑ってくれる隣で英二は無線機を取出した。
慣れた相手へと発信してすぐ受信に切り替わる、その向こうから懐かしい声が笑った。

「はい、青梅警察署奥多摩交番です、」

いつも通り明るく深い声は曇りが無い。
きっと今日は調子が良い、そんなトーンに安堵と笑いかけた。

「こちら第七機動隊山岳救助レンジャー、第二小隊所属の宮田です。後藤副隊長ですか?」
「おう、俺だよ、雨の中ご苦労さんだなあ、」

伸びやかな声が電話の向こう笑ってくれる、その元気そうな雰囲気に微笑んでしまう。
それでも聴きたいこと伝えたいことに英二は断固として笑いかけた。

「ありがとうございます。後藤さん、今日の登山計画書は現時点で変更があれば教えてください、遭難の可能性に警戒の対応をします。
あと、今日は後藤さんは極力外を歩き回らないで下さいね?この天候だと気温が下がりそうです、冷たい雨に打たれたりしないで下さい、」

きっと1つ目の回答はすぐにくれるだろう、けれど2つ目は「No」を返すかもしれない?
そんな予想の向こう紙の音が立って大らかに深い声が笑ってくれた。

「計画書は今朝の連絡と変らんよ、あれからは今日分の提出はゼロ件で取下げも無い。俺については朝一で吉村からもストップ掛けられたぞ?」

やっぱり吉村医師からもドクターストップが掛かっている。
その判断に信頼から微笑んで英二は問いかけた。

「了解です、どうか吉村先生のご意見は取り入れて下さいね?」
「ああ、極力言いつけに従うよ?俺も未だやりたいことがあるからなあ、」

可笑しそうに笑ってくれる言葉に少しだけ安堵が出来る。
それでも安心しきれないのだと理解に笑って歩きながら無線を切った。
ぬかるみ深くなる道を踏んでゆく隣、テノールの声は楽しげに笑ってくれた。

「さて、皆もう行っちゃって俺たち二人きりだね、だからプライベートモードに戻って密談しよ、え・い・じ?」

密談、

そんな言葉に今日の目的一つと透明な眼差しが笑いかける。
その目的と願いと想いごと見返して英二は微笑んだ。

「ああ、良いプランを考えてくれな、光一、」









(to be continued)

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宵、中秋の花

2013-09-20 20:39:37 | お知らせ他


こんばんわ、涼しい夜になってます。

今日また森に寄ってみたんですけど、曼珠沙華の花数が増えていました。
もう散ってしまった群落もあります、けど中秋前には何も無かった場所に沢山咲いていました。
こんなふうに森は日々姿を変えて花を次々を纏うのは、ホントの意味で百花繚乱かなってカンジです、笑

いま第69話「山塊1」「初逢の花7」とも加筆校正が終わりました。
このあと第69話・初逢とも続きをUPする予定です、寝ちゃわなければ、笑

取り急ぎ、








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真昼の秋風

2013-09-20 13:11:26 | お知らせ他


こんにちは、青空に風のある昼になってます。
日曜は雨予報、だけど明日土曜は期待できそうなカンジの神奈川です。

写真は近所の森に咲いていた一輪、釣舟草っていう名前だったと思います。
コレは黄色ですけど赤紫色もあるそうで、花の形が特徴的で解かりやすいと思います。
この森では夏から初秋の今までずっと咲いているんですけど、緑のなか黄色ゆれる様子は燈火のよう明るみます。

さっき「初逢の花、睦月act.7」の加筆が終わりました。
第69話と合せて校正ちょっとする予定です、で、夜は第69話の続きをUPすると思います。

昼休みに取り急ぎ、




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