萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

残暑雑談:晩夏の夜咄×今昔物語集

2014-08-22 23:00:00 | 文学閑話散文系
宵に涼んで、



残暑雑談:晩夏の夜咄×今昔物語集

八月葉月、残暑お見舞い申し上げます。

って聴き慣れた言い回しだと思いますけど、
目上の人に宛てる時は「お見舞い」→「お伺い」が正しいそうです。
元より「見舞う」は同等or目下に対して使う言葉、なので敬語「伺う」を使う方が正しいんだとか。

夏と言えば残暑見舞いの他にも海とか西瓜とか、
呑兵衛なら冷酒にビール、甘いモン好きなら寒天菓子・かき氷とかアレコレあると思うんですけど、
夏場の和菓子屋では水まんじゅう見かけますが、アレは冷水浮べて水ごと食べるそうですけど元来は冬が旬だと聴いたことがあります。

なんて書くと夏って意外なモンが多いなとも思いますが、
夏になるとテレビも怪談モノ大概やりますけど、怖いと涼しくなるカンジする所為なんですかね?
大学のとき家庭教師+塾講師のバイト掛持ちしてたんですけど、生徒全員が怪談話好きで休憩時間にナンカしら話しました。
ああいう怪談話ネタで小説書こうとかは思わないんですけども、ネタという意味ではカナリ持っています、笑
で、怪談話でいちばん怖いかなって思ったのは、

『今昔物語集』巻第二十七 本朝付霊鬼 

この第27巻は怪奇譚集なんですけど、ソコラのホラー映画とは違う怖さがあります。
いわゆる「得体が知れない」恐怖、心理の底にあるモン揺するカンジでじわじわくる怖さです。
短編集なんですけど物語の舞台は京都市中全般、粟田口とか一条戻橋とか宇治橋とか地名リアルに出てきます。
で、コレ読んじゃってから京都を歩くとドコ歩いていても怪奇ツアーになっちゃうんですよね、笑
そんなカンジなので修学旅行とかで京都に行くならガイドブックとしておススメです、

ついでに、京都怪奇譚ツアーな話ですけど、
自分が行ってみてうわーと思ったのは東山安井あたりの六道珍皇寺。
六道=地獄・餓鬼・畜生・修羅・人間・天界 といった仏教にある六つの世界の総称ですけど、
ソンナ名前を関するだけあって地獄の役人だった小野篁が地獄への通勤に使っていた井戸があるらしい寺なんですが、
ここに小さな祠みたいなお堂があるんですけど、ソレが×の板を打ちつけられて封印みたいのがされているのがリアル妖しい雰囲気でした。

この東山界隈は夜に歩くと空間ちょっと変わるカンジで、
京都の大学に在学+就職も京都な友達がいるので学生時代から何度も遊び行ってるんですけど、
友達と二人で飲んだ帰り道、近道しようか思った小道や寺社がヤタラ真っ暗な時があって止めたこともありました。
まあ、千年も都やってた所なんで色んなモンがいても不思議じゃないのかなーとか思います、笑

なんとなく怪談系の話になっちゃいましたけど、苦手な方いらしたらすみません、笑

読んで楽しいブログトーナメント

にほんブログ村 小説ブログ 純文学小説へにほんブログ村

心象風景写真ランキング

blogramランキング参加中!

人気ブログランキングへ


PVアクセスランキング にほんブログ村
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

閑話書覧:孟夏のDNA

2014-08-06 23:54:01 | 文学閑話散文系
一刻の継承



閑話書覧:孟夏のDNA

真夏を孟夏とも言いますけど、

『孟夏の太陽』

っていう短篇小説集があります、作者は宮城谷昌光です。
元は純文学を目指していた作家さんですが元から中国史に詳しかった方で、
それをベースに描いた作品から面白くなっています、で、直木賞もとられています。

この『孟夏の太陽』は中国の春秋時代にあった「晋」という国の宰相を務めた趙家の物語。
全4話ごと趙家各代の物語を綴った短編集です、この4代それぞれの個性と先代に対する想いが克明です。
いわゆる歴史小説ですが読みやすい簡潔な文章+この短編集は純文学出身らしい心理描写もされています。

1.孟夏の太陽
2.月下の彦士
3.老桃残記
4.隼の城

ってカンジに各話のタイトルも簡潔だけど綺麗で物語をよく表しています。
どれも一貫しているテーマは「高潔」その人生はどれも真夏の太陽みたいにストレート。
裏切り、族滅、策謀、雌伏の時ってカンジに困難も多彩、帰結も全て異なる個性でありながら一本の糸に織られる物語です。

忘れられない本 (4) ブログトーナメント

にほんブログ村 小説ブログ 純文学小説へにほんブログ村

心象風景写真ランキング

blogramランキング参加中!

人気ブログランキングへ
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

閑話書覧:鉄塔の空

2014-07-24 23:08:09 | 文学閑話散文系
無機物の夢



閑話書覧:鉄塔の空

鉄塔が準主役の物語を知っていますか?

ある少年の冒険譚、その冒険はすぐ傍で起きるのに深い。
家の庭先に作った小屋、家から見える山、そして山にそびえる高圧線鉄塔。
その鉄塔にまつわる物語と少年の過去と現実、夢と日常が織りなす冒険小説です。

佐藤さとる『ジュンとひみつの友だち』

日本の児童文学作家ではこの方がいちばん好きです、笑
代表作と言われるコロボックル物語シリーズは『古事記』の少名彦命伝説+北海道のコロボックル伝承から描かれています。
どちらも講談社から発刊されているんですけど、小学生の夏休み読書感想文ではおススメかなと思います。
もちろん大人が読んでも面白いです、笑

で、この鉄塔物語のテーマは「生きて遺すもの」ってカンジです、
って書くとちょっと深い感じですけど、深いことを穏やかな不思議の視点で描くのが佐藤さんの得手。
だから子供が読んでも大人が読んでも面白い、子供時代に読んで大人になってまた読むと良い作品をかなって思います。
親子で一緒に読んで感想を話し合うのも楽しいかもしれませんね、ソウイウの夏休みならではの読書なカンジで、笑

夏の読書 2 ブログトーナメント

にほんブログ村 小説ブログ 純文学小説へにほんブログ村

心象風景写真ランキング

blogramランキング参加中!

人気ブログランキングへ
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

閑話書覧:東方綺譚

2014-06-17 15:18:14 | 文学閑話散文系
異国の風韻



閑話書覧:東方綺譚

休憩合間ですが気分転換に一冊、笑

Marguerite Yourcenar『Nouvelles orientales』

フランスの作家マルグリット・ユルスナールが1938年に発表した東洋の伝承をベースに描く短編小説集です。
邦題『東方綺譚』と言いますが白水Uブックス版の多田智満子翻訳バージョンがおススメ、
この方の翻訳は翻訳と思えないです、流麗×理知が文章に風韻を残させます。

読者年齢は中学生でも読めます、表現や言葉は易しいものが多いので、笑
易しい美しい文体、が、どの物語も描かれる世界は記憶をなぞらせるように深遠です。
昨日掲載した『時の旅人』はファンタジーですが、より人間の等身大を穿ったファンタジーが『東方綺譚』にあります。

この短編集を読むなら夕方以降が自分は好みです。
全話どれも理知的で淡々と語りながらも、どこか端整な淫靡の空気感があるので夜向きかなと。
どの物語もR18ってほどのシーンはありませんけど笑、ただ流麗で率直な語り口に感情ごと感覚もストレートに描かれています。
短篇小説集のなかでは今まで読んだ色々のなかで自分としては一番好きです、笑

中国、トルコ、エジプト、ギリシア、そして日本。
オリエンタルと呼ばれる国々の物語をそれぞれの風土と思想観が語られます。
各話ベースの伝説や古典が各国ごとあるので、既知なら著者の深さに感嘆&未知なら典拠を調べても面白いです。

大学生なら講義課題で仏文学や比較文学などの論文課題のネタにも良い作品だと思います。
日本文学でも中古文学or中世文学のネタには使えます、日本の物語は邦題『源氏の君の最後の恋』だからです。




『Le dernier amour du prince Genghi』

源氏の皇子の最期の愛、直訳するとソンナ感じですが、
紫式部『源氏物語』の二次作品で「雲隠」という章を描いた物語です。

この「雲隠」は原典も本文がありません、
もしかして消失したのかもしれませんが、敢えて無文だと言われています。
無文で無言である、その理由は物語の主人公・光源氏がこの章で薨去=亡くなるからです。

「雲隠」

という言葉は月が雲に隠れるイメージです、
それは出逢いの終焉から生命の終わりを意味しています。
この言葉を紫式部は好きだったのか、百人一首にも選歌された歌に詠んでいます。

めぐり逢ひて 見しやそれともわかぬ間に 雲隠れにし 夜半の月かな

久しぶりに幼馴染と再会して話は尽きないのに途中で帰ってしまった。
その寂しさを詠んだと詞書がある歌ですが、歌意をもっと大きく採ると、

 長い時の後やっと廻り逢った大切な君、
 けれど長い年月にお互い姿が変わってしまって君だと解かることも直ぐになんか出来ない、
 まだ君だって確かめてもいないのに月が雲隠れてしまうよう君は往ってしまった、まだ夜中の月に朝は遠いのに

こんなカンジに意味を採ると「めぐり逢ひて」の歌は一期一会を詠んだ出会いと別離の歌です。
月と雲の悠久に出逢いを掛けて、友人とひと時の再会から一期一会、そして生生流転も謳います。



こういう意味の「雲隠」なんですけど、
主人公の死へと黙祷を捧げる、そんな意図から『源氏物語』では無文なんだろうと。
この無文の章をフランス人のユルスナールが二次作品として書上げたのが『Le dernier amour du prince Genghi』です。

物語のトーンは能楽の謡曲と似ています、
自分は翻訳バージョンしか読んだこと無いので訳者の多田智満子さんの筆力かもしれませんが、笑
でも物語自体が謡曲ではスタンダードなパターンで、山深い草庵に住む僧侶を美女が訪れるってストーリーです。

謡曲でいうなら、主人公シテ=光源氏、相手役ワキ=花散里
このシテとワキは立ち位置が自在に入れ替わり二人主人公ってカンジです。

登場人物はこの二人だけで物語は進みます、それは能舞台にそのまま上演出来る形式です。
ワキの花散里も光源氏の為に幾度も姿を変えて現れます、ソノヘンも舞台映えする変幻美と幽玄が端正です。
上にも『東方綺譚』を読むなら夕方以降って書きましたが、特に『源氏の君の最後の恋』は霧の中や夜の物語です。

ストーリーは『anothe, side story』の第33話「雪灯」など作中で登場させましたがハッピーエンドではありません。
いま連載中の話で言うなら源氏=英二×周太=花散里ってカンジで自分勝手ロマンチスト美男と健気な賢女の物語です。
悲恋モノって意味ではコレがいちばん自分的には悲恋です、純愛モノというには片方が自分勝手極まりないヤツなので、笑

この物語は『源氏物語』の世界観+謡曲の空気がよく描かれて原作を超えた二次作品になっています。
なので『源氏物語』原典を読む前にコッチから読むこともおススメです、源氏と女性たちの姿が解りやすいので。
コレ読んで光源氏ってコンナヤツなんだなー花散里カワイイ佳い女だなーとか把握すると、人物をヨリ知りたいって好奇心になります、
それから原作『源氏物語』を読み始めると「古典ってメンドクサイ」みたいな固定観念に囚われ難くて良いかなと、笑




第76話「総設7」校了しました、伊達と周太の対峙と父の証拠です。
Favonius「少年時譚16」とAesculapius「Saturnus11」加筆校正また随時していきます、

休憩合間に取り急ぎ、




にほんブログ村 小説ブログ 純文学小説へにほんブログ村

心象風景写真ランキング

blogramランキング参加中!

人気ブログランキングへ
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

閑話書覧:時の旅人

2014-06-16 13:00:00 | 文学閑話散文系
想いのDNA



閑話書覧:時の旅人

夏休みっぽい空になってきましたけど、
夏季休暇=読書感想文とかミニ論文とか小学校から大学生はあるかな思いますが、
世代年齢問わずな本を昼の気分転換がてら挙げてみます↓イギリス児童文学ですが、

Alison Uttley『A traveler in time』

アリソン・アトリー『時の旅人』って邦題で岩波他から出ています。
大人でも子供でも面白い本はって訊かれるとコレ挙げますが、シビアなファンタジー小説です。

著者はケンブリッジ大学で物理学を学んだ人で生活のため小説を書き始めたっていうちょっと変わった経歴、
イギリスの田園風景を描くことが彼女の個性で、たしか100以上の作品を遺しています。
そんな中で後のファンタジー文学の基礎になったと言われるのが『時の旅人』です。

農場にある屋敷で静養中の少女が、その土地の過去と往来するようになる。
そこに住んでいた人々に彼女は出逢い、憧憬や家族的な想い、そして恋愛感情も見つめます。
いわゆるタイムスリップと言うよりも過去の記憶に受容れられ歩く、そんな温かさがあります。

でも行先は16世紀、イギリス王室の動乱が起きた時代です。
その動乱が過去の住人たちを呑みこんでゆく姿を彼女は目撃し、けれど何も出来ない。
そんな無力感と、それでも出逢った意味を問いかけ反芻しようとする彼女の目線は静かで逞しくて清明です。



Though nothing can bring back the hour
Of splendor in the grass, of glory in the flower,
We will grieve not, rather find
Strength in what remains behind;
In the primal sympathy
Which having been must ever be;
In the soothing thoughts that spring
Out of human suffering;
In the faith that looks through death,
In years that bring the philosophic mind.

時ひとつ戻せない、
草の光一滴も、花の誇らかな輝きも、
でも哀しみ沈まなくていい、見つけられる
後に残れるものは逞しくあり、
芽生えさせる共鳴にあり
どこにも永久に在り続けるべきもの、
春あふれだす柔らかな眼差しは
人の苦しみの時からこそ顕われる、
運命の涯を見つめる約束に、
理知の精神を歳月たちが連れてくる。

William Wordsworth「Intimations of Immortality from Recollections of Early Childhood」の一節です、

この詩文と『時の旅人』は描かれる主題が似ています。
もう終わってしまった事件、死んでしまった人々、消えた想い、けれど彼女の中に生きている。
過去でめぐり逢った人々と彼女は先祖と末裔として血縁に繋がれています、その遺されたDNAが屋敷の記憶を謳い読みあげて想いすら繋げた。
そんな不思議な物語は上述の詩題「幼少期の永遠の記憶の予知」そのまんまってくらい嵌まる「永遠の記憶の予知」過去から明日への永続性です。

ワーズワスもアトリーもいわゆる田園文学が個性ですが、
自然をベースに世界を組み上げ創作していた二人の共通項は、韻文と散文のジャンル違いでも似ています。
花や草、森や草原から詩情ゆたかでも理知的な視点、そういう理詰めを透明な空気できれいに描くカンジです。

海外小説 (5) ブログトーナメント



第76話「総設act.7」&Favonius「少年時譚16」まだ加筆校正します、
それ終わったらAesculapiusの続き予定です、

昼休憩に取り急ぎ、




にほんブログ村 小説ブログ 純文学小説へにほんブログ村

心象風景写真ランキング

blogramランキング参加中!

人気ブログランキングへ
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

文学閑話:ある物語×Language of the providence

2014-06-06 17:30:04 | 文学閑話散文系
言語、文学×数学



文学閑話:ある物語×Language of the providence

1,2,3,5,8,13,21,34

この数列は法則があるんですけど解りますか?
フィボナッチ数列って言うんですけど、この数列の数字は自然の色んなトコにあります。

植物の葉は重ならず少しずつ位置をずらして生えています。
なぜか?っていうと、

効率よく光合成させる=全ての葉に光を当らせる

で、螺旋状で葉をつけているワケです。
この葉をつける角度も植物によって決まっています、
その角度は全ての植物どれもフィボナッチ数列の数字に因んでいます。

葉が5枚出て茎の周りを2周=360度の五分の二=144度
葉が8枚出て茎の周りを3周=360度の八分の三=135度

この2パターンが多いそうです、で、

1/2,1/3,2/5,3/8

分母と分子がフィボナッチ数列に並びます。
このフィボナッチ数列に従がった葉のつき方を=シンパーブラウンの法則と言います。
花びらの枚数、ヒマワリの種が螺旋になる配列も全てフィボナッチ数列にある数です。

こんなふうに自然界の法則は数学がキーワード、言語になってるってワケです。
理系職の友人は「数字は言語」って言うんですけどその通りだなと。

「植物は偉大な数学者」

この言葉はホントだなって思います、
これと上述した内容は稲垣栄洋著『植物の不思議な生き方』って本で読みました。
2013年に書かれたばかりですが数学や色彩・形状、動物、病原菌など色んな観点から謎解きされています。

紅葉や冬枯れはなぜ起きる?蘭の花が育てにくい理由は?スイカの縞にある目的って?

そういう謎の解答が解りやすく読めます。
ココンとこ読んだ科学系の本ではイチバン自分好みです、
自然界のアレコレが数学で解けるなっていう納得が面白かったので。



なんて雑談を休憩合間、気分転換に書いてみました、笑
いま梅雨時で芽吹き時、で、植物関連の本だし良いかなと。

第76話「総設4」加筆ほぼ終わりです、校正終わったら短編連載かなと。

金曜定時に取り急ぎ、




にほんブログ村 小説ブログ 純文学小説へにほんブログ村

心象風景写真ランキング

blogramランキング参加中!

人気ブログランキングへ
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

文学閑話:ある小説譚×織布の戀

2014-05-29 23:40:00 | 文学閑話散文系
時の交錯



文学閑話:ある小説譚×織布の戀

あんまり恋愛テーマの小説って読んでいないんですけど、
高橋治が書いたものは好みなのが多いです、これも友達に勧められた一冊から入ったんですが。
たまに書評で不倫文学とか書かれちゃってる高橋治ですけど、アアイウ評価は浅い読み方してるな思います。

『風の盆恋歌』

文庫本だと厚み1cmくらい、でも分厚い物語です。
純愛小説を一つ挙げろって言われたらコレが自分にとって最高だよって言います、笑
なぜかって言うと本人たちの想いはもちろん、周囲の人々が感情の体温を持って描かれてるからです。

越中八尾の町並から自然の美、精霊踊り「風の盆」に繋がれる人の心、それから現実を生きた時間の鎖と自由。
そういうカンジのもんが描かれているんですけど、内面から情景の描写までリアルで綺麗です。
ホンモノの純文学でありながら物語文学でもある、そんな佳品です。

酔芙蓉

時の経過ごと色が変わる花です、
この花が舞台になる家の庭に植えられています、物語の象徴的です。
こういう花の描写から全てが細やか、だけど男性作者らしい潔さが綺麗です。

で、もし読まれるのなら一人の時がおススメです。
個人差はありますが号泣しちゃう率が割と高めなので、笑

忘れられない本 (3) ブログトーナメント

にほんブログ村 小説ブログ 純文学小説へにほんブログ村

にほんブログ村 写真ブログ 心象風景写真へにほんブログ村

blogramランキング参加中!

人気ブログランキングへ
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

文学閑話:ある小説譚×恋愛咀嚼

2014-05-28 23:00:00 | 文学閑話散文系
ベッドランプの読書



文学閑話:ある小説譚×恋愛咀嚼

雑談寓話に登場した『チューイングガム』って文庫本、
あれは山田詠美さんが書いた自伝っぽい小説なんですけど、題名が主題になってる感じです。

「毛布のような相手」

との出逢いと日常を綴った恋愛が描かれて、
そのなかでチューイングガムが二人の関係を象徴するモンとして出てきます。
静かなトーンのジャズ旋律みたいな空気感の物語で、たぶん自分が初めて読んだ恋愛小説です、笑

で、そういう初心者には割と良いかもしれないって思います。
自分は高校の恩師から卒業式にもらいましたけど、なるほどなあと。

靴下が落っこちている、寝息が聴こえる、
火事騒ぎにダッシュで帰って来てくれる、体温が優しいと思える、
始まりはナントナクで行きずりだった、けれど日常に幸福を見つけっこ出来る相手。

そんな二人の物語なんですけど、いわゆる運命的出逢いとか理想の王子サマとは程遠い、笑
少年少女マンガやラノベが描く純愛とは正反対です、だけど日常生活から恋していくリアルの純情があります。
この作者サンらしいXXX表現もあるんで中学生以下にはおススメし難いんですけど、日常の時間を積める幸せを優しいトーンで描く純愛ってカンジです。

なんとなくだらっと書きましたけど、笑


にほんブログ村 小説ブログ 純文学小説へにほんブログ村

にほんブログ村 写真ブログ 心象風景写真へにほんブログ村

blogramランキング参加中!

人気ブログランキングへ
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

文学閑話:万里風光×『太陽と戦場のシルクロード』

2014-01-14 23:44:25 | 文学閑話散文系
生命、沙漠の水に 



文学閑話:万里風光×『太陽と戦場のシルクロード』

 葡萄美酒夜光杯  葡萄の美酒 夜光の杯  
 欲飲琵琶馬上催  飲まんと欲すれば 琵琶馬上に催す
 酔臥沙場君莫笑  酔うて沙場に臥すとも 君笑うこと莫かれ
 古来征戦幾人回  古来征戦 幾人回る

 美味いぶどう酒を 夜闇にも光る玉杯へ満たす
 飲もうと唇つけかけて 馬に乗ったまま奏者が琵琶を弾きだす
 酔っぱらって沙漠に寝転んでしまっても 君、笑わないでいてくれよ?
 昔からずっと戦争に出掛けたら 何人も帰って来られないのが現実なんだ。
 僕だって帰られるか解らないんだからさ、今ひと時この酔いを楽しませてくれ。

王翰『涼州詩』です。
高校の教科書で初めて読んだとき憶えました。
で、最近かった本を読んでいて思いだしたんですけど、

並河萬里『太陽と戦場のシルクロード』

古本屋で見つけて買ったんですけど昭和54年発行、三十年以上前の本です。
カメラマンによるシルクロードの撮影記なんですが文章がかなり綺麗で驚きます。
風景描写や章名のセンスに文章の組み方、どれも正直に言って最近の作家さんよりプロです。
作者は1931年生まれで戦前教育を受けている方ですが、昔の国語教育が佳かった事を想わせます。
で、シルクロードに行ってみたくなります、笑

いちばん最初に読んだのは122ページ「赤い砂漠」からなんですけど。
タイトルの「砂漠」は正確には「沙漠」と表記する方が正しいんですよね。
砂=石が小さい、沙=水が少ない、なので水が枯渇している場所=沙漠が正しいそうです。
この「赤い砂漠」に描かれる一つが「乾き」水の国である日本の尺度では量れない沙漠の世界でした。

指という指が罅割れ切れて血が滲む、

そんな表現が出てくるんですけど、山野の湧水+海風で湿度の濃い日本では無い現象です。
それを鮮やかに描かれている沙漠の光景は炎天と静寂の繰り返しで惹かれます。




で、これから『Savant』の加筆校正またします、
それ終わったら『Aesculapius』か『Eventually Comes True』の続きを掲載予定です。

取り急ぎ、





今年読む本ブログトーナメント

にほんブログ村 小説ブログ 純文学小説へにほんブログ村

blogramランキング参加中!

人気ブログランキングへ   
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

紅葉ふる黄金、秋原野×『立華時勢粧』

2013-10-06 21:50:00 | 文学閑話散文系
色彩、季と流れて 



紅葉ふる黄金、秋原野×『立華時勢粧』

こんばんわ、今日はコンナ↑とこに行ってきました。
北関東にある原野なんですけど、そこを流れる沢川は碧く綺麗です。
よく修学旅行の記念撮影場所にもなる原野、の、隣の原野なんですけど解かりますか?笑



橋を渡った向こうは起伏ゆるやかな黄葉の林間コース。
登山というほどキツイことは無いです、が、木の根道も多いので登山靴がおススメ。
根っこや段差もあるので膝が弱い方は特に気を付けて下さい、またエコバスも舗装路にあります。

広く深い森は下草に笹が多く繁っています。
ということは野生獣が隠れてしまうポイントが多いってコトです。
なので熊鈴つけて行く方が無難になります、現に7~9月はツキノワグマ遭遇件数=多数だとか。
そんな裏付けするよう植生は楢や椎の実が多く落ちて、彼らの豊富な食料庫なんだと納得でした、笑

今は黄葉と緑の交わす色相がきれいです、で、時おり紅葉×黄葉の楓に出会えます。



黄色主体の樹林帯で紅葉は目立ちます。
ちょうど今は黄緑から黄色、橙、朱色に真紅と色相は豊かでした。
華道で楓の紅葉は「真の一色」とも言われますが、そんな言葉通りの梢が見られます。

一色物と定て外の木草をまぜずして、楓ばかりを以て一瓶を成就す。名付て真の一色と云ふ。

貞享5年1968年『立華時勢粧』にて富春軒仙渓が記した言葉です。
この一文の前には「楓をもちて紅葉の長とす。是立花の賞翫極極の秘伝也」と書かれているんですけど要するに、
紅変する葉っぱのなかじゃカエデが一番綺麗だ、生け花の美的感覚にとっちゃ最高なんだよね、って話をしています。

この書籍タイトル『立華時勢粧』=りっかまようすがた、と読みます。
立華=立花・花の生け方、時勢・まよう=時の経過ごと変化する・移ろう、粧=飾る姿、って感じの意味です。
なので「季節ごと飾ってみる花の生け方」という意味の本です、いわゆる『華道テキストブック』ってタイトル、笑

日本の美ブログトーナメント



ずっと森を歩いて行くとアスファルトの道に出ます。
そのアタリから視界は拓けて、某原野の広やかな秋の色彩が現われます。



ココに行ったのは今日が初めてなんですけどコンナ↑色模様に驚いた、笑
原生の野原=原野、だから成行きの結果がコレだけども自然って凄いなーと。
昨日に決めて今日ちょっと行ってみたら、こんな光景に出くわす幸運でした、笑



昨夜UP「Lost article 天津風 act.16」加筆校正も終っています。
このあと第69話「煙幕5」を掲載予定、周太@SAT入隊テストの顛末です。

日曜夜に取り急ぎ、笑




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする