ある『物語』の断片

『物語たち』は語り始める。

忘れていたもの

2007-11-06 16:04:37 | ある『物語』の断片
「いつからか
やさしさを
失ってしまったんだ」
と彼は話していた

「協力も庇護も
合理的な名の下に
全て還元される

それは
仕方の無いことだけど」

「やさしさを、
その感情を
忘れ去ってしまう前に

ささやかな抵抗を
試みることにしたんだ」

そうして
一枚の絵が
完成する直前に

男は動かなくなってしまった

「でも、構わない」
「もう絵は出来上がっているから」

「あとは、君が仕上げてくれないか」

そう言い残して
彼は

やさしさを
思い出せる世界に
還っていった

コメントを投稿